レディオヘッドは現地時間3月29日にブルックリンのバークレイズ・センターで開催された式典でロックの殿堂入りを果たしている。
レディオヘッドは今年、ジャネット・ジャクソン、ザ・キュアー、スティーヴィー・ニックス、ロキシー・ミュージック、デフ・レパード、ザ・ゾンビーズと共にロックの殿堂入りを果たすことが発表されていた。
紹介役はデヴィッド・バーンが務め、バンドからはギタリストのエド・オブライエンとドラマーのフィリップ・セルウェイが式典に出席している。
デヴィッド・バーンによる紹介スピーチの全文訳は以下の通り。
「ありがとう。レディオヘッドが僕が書いた曲にちなんでバンド名をつけたと言った時は驚いたし、嬉しかったよ。でも、こうも自問したよね。『なんであの曲なんだ?』ってね。いまだにそれは分かってないし、ある意味知りたいわけではないけどね。その曲は僕が書いたおどけたテックスメックスの曲なんだ。多分、今後分かるのかな。どうなんだろうね」
「おかげさまで僕はあのバンドの大ファンでね。2つの理由で彼らはこの栄誉にまさしく値するよ。一つはその音楽で、音楽においてクオリティもコンスタントにイノヴェーションも達成してきた。でも、そのイノヴェーションと同様に、彼らはどう作品をリリースして、マーケティングし、公のものにしていくかという点で、彼らはすべてのミュージック・ビジネスを変えたんだ。今夜、この会場には音楽業界の人がたくさんいるよね。彼らはどちらの領域でもクリエイティヴでスマートだった。これはアーティストにとって珍しいことで、それは最近だけじゃなくて、いつだってそうなんだ」
「じゃあ、ちょっとした話をしよう。UKのラジオ1は“Creep”をかけようとしなかったんだ。あまりに暗いというのが理由でね。そうしたら、世界各地の他の場所ではあの曲はすごくかけられるようになって、その後はみんなも知っている通りだよ。もう一つの話でいくとーーこの件に直接関わった人がいたら申し訳ないけどーーキャピトル・レコードは多くの人が傑作と見なしている『OKコンピューター』をキャリアの自殺と見なし、それに応じてリリースとマーケティング・プランを変更したんだ。最終的にUKで1位を獲得したんだけどさ。あのアルバムに収録されている“Paranoid Android”は、それがどういう意味にせよ、新たな“Bohemian Rhapsody”なんて言われているわけでね。映画を観るのが楽しみだよ。誰がトムを演じるのかってね」
「僕にとって彼らのその次のアルバム『キッド A』は変革の瞬間だった。曲のフォームとエレクトロニクスを組み合わせたアルバムに度肝を抜かれたよ。あんなものはそれまで聴いたことがなかった。カンやマイルス・デイヴィスのエレクトリック期の要素や影響がありつつも、まったく違ったものだったんだ」
「本当に妙だったし、すごく勇気づけられたのは、それが売れたことだよね。ヒット作になったんだよ。それは僕にとってアーティスティックなリスクが成果を挙げ、時に音楽ファンもバカではないということの証明だった。そうしたことは今夜、この会場にいる音楽業界の人によって今後も証明されていくんだろうね。あれだけ実験的なのにアメリカで1位になったんだ。ビジネス面でも彼らは革新的だったんだ。あれは2000年のことで、アプリで音楽をかけたり、アクセスしたりでき始めた頃だった」
「その後も何枚かアルバムを出しているけど、『イン・レインボウズ』はある時はラジカルでエッジのきいたサウンドだと思ったけど、今は完全にナチュラルに感じるね。そして彼らはあの時、アルバムの価格について『希望の金額を払え』という形で売るラジカルな飛躍を実現してみせたんだ。ゼロでも1セントでもいい。その当時のアルバムの価格でもいい。そして分かったのはほとんどの人が当時のアルバムの価格で購入して、それ以上に払う人もいたことだ。それって僕はすごいことだと思う。彼らはオーディエンスを信じ、大衆を信じたんだよ。音楽に価値を見出すと信じて、みんながいくらだと思っているか教えてほしいと言ったんだ。オーディエンスはそれに応えて、これぐらいの価値があるんだと言ったわけだからね。これって素晴らしい社会的な実験だよ。音楽業界における実験にとどまらずね」
「さらにリリース面での革新で言うと、彼らは使われなかったジェームズ・ボンドのテーマ曲“Spectre”をサウンドクラウドでリリースした。そして、音楽的にも変化し続けている。最新作である『ア・ムーン・シェイプト・プール』はすごくシネマティックな作品で、頭の中に映画が広がるようなサウンドだった。彼らはポップ・ミュージックがどんなものであり得るか、そして、それをどうリリースして届けていくか、その両方で我々の考えを変えたんだ。それだからこそ、レディオヘッドをロックの殿堂に迎えることができて光栄だよ」
フィリップ・セルウェイはロックの殿堂入りにあたって次のように述べている。「レディオヘッドというのは中にいると不器用で、しんどいバンドなんだ。僕らは決して最高のミュージシャンではないかもしれない。そして、最もメディアにフレンドリーなバンドでもない。でも、僕らはレディオヘッドであることには非常にうまくなってね、それで人と繋がれた時は素晴らしいんだ」彼は次のように続けている。「それぞれの新しい曲が恵みのようなものだったし、アルバムは僕らの学習プロセスの順路のようなものだった」
エド・オブライエンはバンドの他のメンバーに向けて次のように語っている。「34年間やってきて、まだやっている。その誠実さと信頼感、そしてその関わり合いに感謝したいよ。そうしたものを当たり前と考えちゃいけないわけでね。そして、ミュージシャンとしても感謝したい。一緒に演奏した時、集合的なサウンドが生まれるわけでね。時々リハーサル・スタジオでやっていると、超越的な瞬間があるんだ。そのことに感謝するよ。けど、僕が最も感謝したいのはその深い、深い友情についてなんだ」
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