All pics by Yoshika Horita

Photo: All pics by Yoshika Horita

オールブラックスのハカの迫力に震えた今年の秋の日本列島だが、その裏側でこんなバンドが初来日公演を行っていたのを御存知だろうか? 母国ニュージーランドでは同国出身のアーティストとして初となる5万人規模のスタジアム公演を完売させるほどの国民的バンドであるシックス・シックスティがわずか700人キャパシティのライヴハウスで公演を行ったのだ。緊急開催となったショウケースの会場はこの日、海外からと見られる多くのオーディエンスでごった返していた。その客層はまさにW杯さながら、会場にはオールブラックスのユニフォームを着た人々を初め、貴重な小規模な会場で彼らのパフォーマンスを観ようと、グローバルなオーディエンスが集結していた。

ラグビーの試合会場で流れるアンセムの一つとして知られるニール・ダイアモンドの“Sweet Caroline”のSEを会場が一体となって大合唱した後で客電が落ち、バンドがステージに登場する。ヴォーカルのマティウ・ウォルターズを中心に、ベーシストのクリス・マックとジャイ・フレイザーがその横を固める形で3人が前に並び、ドラマーのイーライ・パーウェイとキーボーディストのマーロン・ジャーブスが後ろを固めるという布陣だ。

オールブラックスことラグビー・ニュージーランド代表の「マブダチ」として、代表選手のセブ・リースが新曲“Raining”を歌う動画も話題になった彼らだが、この日の1曲目を飾ったのがニュー・アルバムからの“Never Enough”だった。オールブラックスとの関わりもそうだが、マティウを筆頭にその筋骨隆々とした肉体からはどうしても力に漲ったイメージが先行してしまいがちであるものの、見た目からは想像しがたい彼の優しい包み込むような歌声を含め、シックス・シックスティは実にポップで耳馴染みのいい楽曲を書くことで知られている。大衆の心を一瞬にして掴んでしまうようなソングライティングは当然、新曲でも健在である。

同じく新作より“Please Don’t Go”を披露した後で、続く2017年発表の“Vibes”で会場のヴォルテージをもう一段階上げ、唯一習得できた日本語だという「アリガトウゴザイマス」を披露してオーディエンスに感謝を告げる。続く“Only To Be”でこの日最初のピークを迎え、続けて披露された“Don’t Give It Up”はウォーミング・アップの済んだオーディエンスによっていきなり大合唱で迎えられることになる。そのメッセージやサポーターとも形容すべきオーディエンスの野太いシンガロングも相まり、会場がラグビーの試合会場と見間違うほどの熱気に包まれた後で、4人のメンバーがステージを降り、ヴォーカルのマティウによるソロ・パフォーマンスに突入する。ここでも来たる新作より新曲“Ghosts”が披露され、11月1日にリリースされることが約束されると、続く“Up There”で再びバンドが合流し、“Rivers”ではギタリストのクリス・マックがドラム・スティックでギターを叩くというパフォーマンスも披露される。

IMG_9841

続けて披露された新作からのアコースティックな未発表曲“Long Gone”では、マティウによってシンガロングの練習も行われ、観客たちも全力でそれに応えていく。この新曲を含め、セットリストのどこを切り取ってもアンセミナックな楽曲が揃っているところに、彼らのスタジアム・バンドとしての在り方を感じる。なかでも圧巻だったのは、オーディエンスに出自を尋ねた後で披露された“Don’t Forget Your Roots”のパフォーマンスで、現地の言葉の歌詞や、フロアで巻き起こったオールブラックスの代名詞と言うべき民族舞踊のハカで自らの出自を打ち出しながら、その力強い喊声で集まったあらゆるルーツの人々を歓迎することを宣言してみせる。

間髪を入れずに披露した“Raining”と“Closer”で観客との近距離のインタラクションを楽しんだ後で、“White Lines”では観客に肩車をするように求め、オーディエンスは1人また1人とその要望に答えていく。文字通りいくつもの山を作った後でも勢いが落ちることがないのが彼らのショウの特徴で、続けて新作より披露された“Sundown”でも、本編の締めくくりとなった“The Greatest”でも、ハンドクラップやシンガロングが止むことはない。

_MG_0659

熱気に満ちたアンコールに応えて再びステージに登場したシックス・シックスティは、2008年にリリースした初期の名曲“Finest Wine”をアンコールとして披露し、「アリガトウゴザイマス」とここで改めてオーディエンスに感謝を告げる。パフォーマンスの最後に用意されていたのはまたしてもハカで、観客席で披露されるハカをメンバーがステージの上から仁王立ちのような状態で受け止めながら、民族舞踊をもって自らのアイデンティティを改めて示し、日本での初パフォーマンスを締めくくってみせた。

IMG_9878

彼らの楽曲の持つ抗えないポップネスや会場の熱気に圧倒されっぱなしの1時間20分弱だったが、11月8日にリリースされるニュー・アルバム『シックス・シックスティ (3)』が俄然楽しみとなるようライヴだった。

シックス・シックスティが分かるプレイリストはこちらから。

リリース情報

シックス・シックスティ
『シックス・シックスティ (3)』
11月8日発売
Never Enough
Please Dont Go
Long Gone
Ghosts
Breathe
Tomorrow
The Greatest
Raining
Sundown
Bitter End

Copyright © 2020 BandLab UK Limited. NME is a registered trademark of BandLab UK Limited being used under licence.

関連タグ