Jill Furmanovsky/PRESS

Photo: Jill Furmanovsky/PRESS

「俺たちが魚屋だったとしても、たまにお互いを鮭の切り身で殴り合ってるはずだぜ」とリアム・ギャラガーは映画『オアシス:スーパーソニック』の終盤で説明している。壮大でアグレッシヴな新作ドキュメンタリー映画は、ブリットポップの頂点に立った彼らの栄光の日々を鮮烈に見せていくと共に、バンドの核を成す強烈な関係性――愛し合い、いがみ合うノエルとリアムのギャラガー兄弟――をそっと解き明かしている。「ノエルにはボタンがたくさんあって、リアムには指がたくさんあるの。そういう単純なことよ」と、当時バンドのマネジメントを担当していたイグニション・マネジメントのクリスティン・メアリー・ビラーは結論づける。

マット・ホワイトクロス(イアン・デューリーの自伝映画『セックス&ドラッグ&ロックンロール』でも知られる)が監督を務めた本作は、オアシスの人気を象徴する出来事となった1996年のネブワース公演で幕を開け、同公演で幕を閉じる。1993年にクリエイション・レコードのボス、アラン・マッギーがグラスゴー公演の現場でオアシスと契約したことからすべては始まり、その後、キャリアを決定づける2枚のアルバム(1994年の『ディフィニトリー・メイビー』、1995年の『モーニング・グローリー』)をもって、オアシスはイギリス最大のバンドとなった。彼らはクリエイション・レコードとの契約からわずか3年後のネブワース公演で、25万人を動員するという離れ業をやってのけたのだ。

バンドがネブワースのステージに大股で向かい、熱狂的な観客に向かって巨大なサッカーボールを蹴り出す映像に胸が高鳴る。 そして我々の心は、その後2時間にわたって揺さぶられ続けることになるのだ。音楽に心を動かされるのみならず、全編を通してインタヴュー音声で出演している愉快なギャラガー兄弟のおかげで、アーカイヴ映像や輝かしい場面の舞台裏に、現在の彼らの反応を重ねて見ることができるのである。

ニヤついたティーンエイジャーのリアムと、カーディガンを着た中年のおばさんに見えるノエルのスナップ写真は素晴らしく愉快で、それはロサンゼルスでの1週間を「ニンジャ・スピード」、別名「クリスタル・メス」と振り返る時も同じだった。それでも、バンド初期のリハーサル映像で演奏する“All Around The World”は鳥肌ものであり、キング・タッツ・ワー・ワー・ハットでの彼らの悪名高い演奏は焼けつくようなものだ。

そして、この映画を決定づけているのはギャラガー兄弟の横柄さだ。「テレビに出て、いい女をゲットするためにバンドを始めるんだ」とノエル・ギャラガーは語る。『オアシス:スーパーソニック』のあらゆる場面で横柄に振る舞う彼らも、その完璧な才能なしにはそんな風に振る舞うことができなかっただろう。あなたがこれまでオアシスの再結成を熱望したことがないとしても、この映画を観たあなたは再結成を望まずにはいられないはずだ。

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