Yoshika Horita/PRESS

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最新作『パーパス』をひっさげて3年振りとなる来日公演を行ったジャスティン・ビーバーのライヴ・レポートをお送りします。

17時02分、最新作『パーパス』と同じくコンサートは“Mark My Words”で幕を開けた。ものすごい歓声。会場は前方のスタンディング・ゾーンを除いてパイプ椅子だったのだが、その後係員の指示で降りることになるものの、ほとんどの観客がパイプ椅子の上に立ってのぼる。観えないし、聴こえない。でも、今のジャスティン・ビーバーを迎える日本の温度とはそういうものだ。ステージのバックドロップにはジャスティンが落下していくような映像が映し出される。世界中が知っている物語。彼はそれをアルバムにし、しかも非常に優れたアルバムにし、こうしてツアーを行っている。

イントロダクション的な“Mark My Words”を終えて始まったのは、いきなりのジャック・Uとのコラボレーション曲である“Where Are Ü Now”。『パーパス』での復活劇を時系列で追っていくような形でコンサートはスタートする。ジャスティンの最初の服装はメタリカのTシャツにハーフパンツ。こうやって書いていても思うが、何を着てるか、それだけで話題になるのがジャスティン・ビーバーという人だったりする。そして、それこそが今の彼の本質のように思う。時折、手裏剣を撒くような動作を見せるジャスティンも嬉しい。“Where Are Ü Now”を終えて水を飲むジャスティン、そのペットボトルを客席に投げ入れてみせる。どこまでも彼は分かっている。

“Get Used to It”からの“I’ll Show You”。“I’ll Show Youではその曲名を受けて、あらためて『パーパス』のスタンスを説明するMCが挟み込まれる。ダンスの場面ではけだるそうな表情を見せることもあるが、変な言い方をすれば、それがビーバーとして成立する。むしろ笑顔で踊っていることのほうが、今の彼にとっては変だろう。そういう地平で彼はコンサートをやってみせる。“I’ll Show You”ではバックドロップの映像で赤い雨が降る。あまりにも明確なメッセージと共にライヴは進んでいく。

日本人ダンサーであるYUSUKE NAKAIによるソロ・パフォーマンスの後、ジャスティンは黄色のネルシャツとダメージド・ジーンズで登場。ホールジーがフィーチャリングで参加した“The Feeling”が披露される。アルバム『パーパス』と同じくシリアスなメッセージ性の高い楽曲のパフォーマンスが行われていくわけだが、会場の温度は下がることがない。DJのテイラー・ジェイムスが華麗なスクラッチを披露し、『ビリーヴ』からの“Boyfriend”へと雪崩れ込んでいく。自分のいた席の後ろの列の男の子がこの曲で大はしゃぎしていたのだが、こうした様を見ても『パーパス』以前と以後には大きな断絶がありながらも、それは地続きのものとなっている。今回の来日公演で一番強く印象を受けたのはそこだ。

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そして、ジャスティン・ビーバーがアコースティック・ギターを手にとって、一人による弾き語りでメジャー・レイザーとの最新楽曲“Cold Water”と大ヒット曲“Love Yourself”を披露する。時折、ギターを間違える場面などもあるが、会場は大歓声とシンガロング。まったく気にならない。そして、なにより自身のアイドルとしての立場を踏まえながら、ソングライティングに誇りを持っていることがそのパファーマンスからは透けて見える。『パーパス』というアルバムで楽曲がすべてを証明してみせたことを彼は誰よりも分かっている。「ニッポンダイスキ!」というMCには大歓声が湧く。

“Been You”を挟んでのアルバムからの最新シングル“Company”で再び会場はピークを迎えるが、しかしほぼアルバム1枚だけで、これだけのショウをできてしまうことに改めて感嘆する。配信だけでリリースされた『ジャーナルズ』からの“Hold Tight”、女性ダンサーが抱きつく演出で歓声が湧いた“No Pressure”、そして、ベースボールシャツに着替えた衣装替えを迎えた“Children”では再び会場が揺れて、ピークを迎える。そして、この曲では曲名にちなんで、キッズ・ダンサーも登場。一人ひとり名前を聞いて、観客からの拍手を求めるジャスティン・ビーバー。子供の時にエンタテインメントの分野に飛び込んだ立場を実感していることが伝わってくる。

感動的なバラードであり、この言葉を誰よりも体現できる“Life Is Worth Living”を経て、時計の音が鳴り出すと観客からは大歓声が起こる。その復帰を何よりも決定づけたシングル“What Do You Mean?”だ。そして、本編ラストとなった“Baby”。もちろん、ジャスティン・ビーバーのキャリアを語る上で欠かせない楽曲だが、会場は名曲“Sorry”をいつやるのという雰囲気になっている。彼が『パーパス』というアルバムで証明したことが実証された証だ。

そして、大きく脇の開いたノースリーヴのマリリン・マンソンのシャツを着て、アンコールで披露されたのが“Sorry”だった。ステージ上では雨が降り、ジャスティン・ビーバーはずぶ濡れになる。贖罪、彼はそれをエンタテインメントにして、毎晩披露する。けれど、誰もやってこなかった形で10代から始めたキャリアを、自身のライフスタイルを曲げることなく、新たなステージに持ち込んでみせた。最後にダンサーと円陣を組むジャスティン、その姿は最高にカッコよかった。

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