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- ★★★★★★★☆☆☆
いくつもの市街地をまるごと吹き飛ばす勢いで炸裂するギター・リフによってロックの成層圏を飛翔するミューズは、さらにレーダーの圏外へと逃れていく。地上では、彼らが2009年のアルバム『ザ・レジスタンス』で予見した反乱の準備が整いつつある――今後さらに5年間続く保守政権へ反対する抗議デモの行進が、すでにホワイトホール(ロンドン官庁街)へと集結しているのだ。しかし、マット・ベラミーのまなざしは天空へと向かい、次なる構想、そうドローン戦争を見据えている。
36歳のベラミーの心を占めている新たなテーマは、「遠隔操作で殺戮を行う」秘密裏の兵士たちだ。身の回りで起きている現実問題からドローン戦争への方向転換は不満が残るかもしれない。しかし、ミューズ自身のストーリーの方向性からすれば、これは必然的な流れといえる。『ザ・レジスタンス』と、それに続く2012年の『ザ・セカンド・ロウ~熱力学第二法則』でグローバル支配と枯渇する天然資源問題に立ち向かったミューズが、徹底したコンセプト・アルバムに取り組むのは必然の帰結なのだ。ちょうど、カニエ・ウェストのグラストンベリー・フェスティバルへの出演に対し、起こるべくして反発が起きたように。ミューズの7作目となる『ドローンズ』は、一人の兵士のストーリーだ。彼はものを考えない殺人マシンとなるべく訓練され、戦闘の闇雲な残忍性に幻滅し、反逆を試み、やがて自ら権力の座につく。
アルバムに先行してリリースされた2曲は、過去の作品と同じく、一見アルバムのコンセプトとは異なる趣きに見えた。“Dead Inside”は「君には魂がないのか?/ずいぶん前になくしてしまったかのよう」という震える叫びが、ベラミーのかつての恋人、ケイト・ハドソンへの非難という見解も生み、サウンド的には『ザ・セカンド・ロウ~熱力学第二法則』に収められたエレクトロポップの佳曲“Madness”や“Panic Station”を思わせる。主人公の兵士が鬼軍曹に怒鳴られ「スーパー・ドローン」へと訓練されていく“Psycho”は、テーム・インパラの“Elephant”からピンク・フロイドの“Money”、またミューズ自身の“Uprising”まで、あらゆるグラムロックの力強いナンバーの要素を取り入れている。しかし、ここから『ドローンズ』はナビゲーション・システムが故障したかのように、急降下を始めるのだ。“Mercy”は世界を牛耳る「外套に身を隠した男たち」や「黒幕」について歌った耳について離れないエレクトロ・ロックであり、“Reapers”はアンドロイドのバックコーラスに後押しされたマット・ベラミーがヘア・メタルに心酔してみせる。
“The Handler”で最高のドローンとなった主人公は――「僕は従うようにプログラムされている…あなたの命令を実行する」と“Radio Ga Ga”のパワフルなコードをなぞり――反撃に転じる。新作『ドローンズ』はやはり絶頂のミューズらしさへと到達するのだ。冷戦の闇の策略を非難するJFKのスピーチに包まれた“Defector”は鮮烈でしなやか、かつポップな金切り声を上げ、そして“Revolt”は圧巻のリフに乗って二段階のスピードで嵐を作り出してみせる、ミューズの最もクリエイティヴな曲の一つといえるだろう。
『ザ・レジスタンス』や『ザ・セカンド・ロウ~熱力学第二法則』で取り入れたマルチセクション・オーケストラを排除したことで、『ドローンズ』は2006年の『ブラック・ホールズ・アンド・レヴァレイションズ』以来最も照準が定まったミューズのアルバムとなった。ただし、一抹の奇妙なテイストも(間違いなく)残っている。戦いの後の“Aftermath”はサザーランド・ブラザーズ原曲の“Sailing”をロッド・スチュワートがカヴァーしたヴァージョン風、いや、むしろダイアー・ストレイツの“Brothers In Arms”風といったところか。主人公が核武装国を建設して地球を破壊する“The Globalist”は、エンニオ・モリコーネの葬儀シーンのメタル・ヴァージョンや、19世紀の作曲家エルガーの“エニグマ変奏曲”を取り入れた10分に及ぶ大作となっている。そして、いよいよお待ちかねのアルバム・タイトル曲の“Drones”だが、こちらは16世紀の賛美歌“サンクトュス/ベネディクトュス:感謝の賛歌”をベースにした合唱曲で、マット・ベラミーが「母、父、妹、弟、息子、娘は、すべてドローンたちに殺された」と詠唱する。
『ドローンズ』に込められたミューズの普遍的テーマである洗脳や戦争を挑発する超大国、真実の抑圧、人々を搾取する権力者との対決は2015年においてもなお共鳴を呼ぶものの、遠回しになっているのも事実だ。マット・ベラミーがすべきことは時代についてコメントするのと同じくらい、より深く社会的−政治的な面を切り開き、ミューズの音楽を今一度その大胆な構想にマッチさせることである。(マーク・ボーモント)
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