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現地時間2020年1月26日、黄金に輝く蓄音機のトロフィーを手にするため、音楽業界におけるビッグ・ネームたちがロサンゼルスにあるステイプルズ・センターに押し寄せてくる。発表されたばかりのノミネーション・リストには物議を醸すような点がほとんど見当たらないとはいえ、議論すべき点はいくつか残っている。それらの論点をここで掘り下げてみよう。

1. ビリー・アイリッシュは授賞式の主役になる可能性がある

2019年は完全にビリー・アイリッシュの年だった。彼女がリリースした『ホエン・ ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー?』は、今年のベスト・アルバムの1枚である。ビリー・アイリッシュは全米シングル・チャートの1位の最長記録を更新していたリル・ナズ・Xの記録を“bad guy”で止め、自身が終わりの見えなかった“Old Town Road”の支配を止める力を持つ唯一の新人アーティストであることを証明してみせた。3月の段階ではシェパーズ・ブッシュ・エンパイアのような2000人規模の会場で公演を行っていた彼女だが、瞬く間にO2アリーナでの4日連続となる公演を発表するまでになり、世界各国の名だたるフェスティバルでそれぞれの最も大きなステージにも出演してきた。

これらすべてを踏まえれば、もしもビリー・アイリッシュがグラミー賞で複数の賞にノミネートされていなかったとしたら、それこそ大きな間違いだったと言えるだろう。彼女は最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞、最優秀アルバム賞、最優秀新人賞の主要4部門を含む6部門にノミネートされているが、そのすべてをかっさらっていったとしても何ら驚きではない。きっと彼女は授賞式におけるすべてのパフォーマンスの水準を上げるために、パフォーマーとしての出演も依頼されているはずだ。

2. 無難だが、退屈でないことには違いないリスト

年間を通じて誰がポップの世界を支配してきたかを考えれば、2020年のグラミー賞のノミネーション・リストにそれほどショックを受けることはないだろう。ビリー・アイリッシュやリゾ、リル・ナズ・Xは最もノミネーションを獲得したアーティストの筆頭となっているし、ラナ・デル・レイやアリアナ・グランデテイラー・スウィフト、ショーン・メンデス、カミラ・カベロ、ルイス・キャパルディらも主要なカテゴリーにノミネートされている。ロザリアやボン・イヴェールのようなクールなアーティストやグラミー賞のお気に入りであるH.E.R.もノミネートされているが、意外な気鋭のアクトが選出されるというサプライズはなかった。

3. グラミー賞が依然、多様性に課題を抱えていることを示した最大の冷遇

(BTSのファンの愛称である)ARMY(アーミー)たちはこの1週間の間、BTSが初めてグラミー賞のノミネーションを獲得するのではないかと心待ちにしていた。2019年のグラミー賞では『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』で最優秀レコーディング・パッケージ賞にノミネートされていたBTSだが、果たして絶頂期を過ごしたとも言えるその後の1年の活躍は評価されることになったのだろうか?

しかし、BTSの名前はノミネーション・リストのどこにも見当たらないし(筆者個人の意見として、ホールジーとの“Boy With Luv”が今年を代表する1曲だったことを考えれば、これは罪深き事態だ)、84部門あるリストの中にアジア出身のアーティストやソングライターは数えられる程度しか見当たらない。近年、グラミー賞は白人や男性たちに偏りすぎていると批判され、その多様性を押し広げてきたはずだった。ノミネーションのリストを見ても、(最終的な投票結果でそれが無駄にならない限り)そうした過去の問題が2020年に再び顕在化したようには見えないが、アジアのアーティストについてはどうだろうか?

もしもグラミー賞が多様性を押し広げ、それを体現させることを目指しているのであれば、2017年の国勢調査によればアメリカにおよそ1820万人いるというアジア系アメリカ人のことも考慮したほうがいいはずだ。

4. マイナーなアーティストへのビッグ・サプライズ

最優秀ロック・パフォーマンス賞にノミネートされるアクトとなれば、このジャンルにおける重量級のアクトたちを想像するだろうし、実際、ほとんどがそうなっている。まさかノミネーションのリストにカムデン出身のデュオであるボーンズUKの名前を見ることになるなど、想像していなかっただろう。しかし、彼らはノミネーションを果たしたのだ! 彼らはアラバマ・シェイクスのブリタニー・ハワード、カレンO&デンジャー・マウス、そしてテキサス州オースティンのレジェンドであるゲイリー・クラーク・ジュニアらと共に同賞を争うこととなっている。シンガーでギタリストのロージー・ボーンズがBBCの番組で知られるバードウォッチャーのビル・オディの娘であることもここに付け加えておこう。

5. 最後は有名アーティストの不思議なノミネーションについて

リゾは2013年以来、3枚のアルバムをリリースしてきたにもかかわらず、マギー・ロジャースやロザリア、リル・ナズ・Xといったニューカマーたちと共に最優秀新人賞にノミネートされている。グラミー賞はこのカテゴリーの基準をめぐって度々批判されてきた。アレッシア・カーラは2015年にデビュー・アルバムをリリースしたにもかかわらず、2018年に最優秀新人賞を受賞したし、デュア・リパは今年、ファースト・アルバムのキャンペーンの締めくくりとも言える形で同賞を受賞したわけだが、そんな中でも、リゾはこれまでで最もキャリアの長いアーティストとなっている。

とはいえ、彼女は紛れもなくノミネーションの資格を有している。このカテゴリーの選出基準は極めて緩いのだ。新人賞にノミネートされるには、少なくとも5曲入りのアルバムをリリースしている必要があり、それまでにリリースしてきたシングルが30曲以下であるか、もしくはアルバムが3枚以下でなければならない。そして、新人賞の候補に入れるのは3度までとなっており、ノミネートの対象となる期間の間に「一般的なブレイク」を果たしていなければならないという基準がある。相手がビリー・アイリッシュであることを考えれば、リゾが同賞を獲得する可能性は低いかもしれないが、もしも彼女が最優秀新人賞に輝いた暁には、その受賞をめぐってあらゆる不満が寄せられることになるだろう。

2020年の第62回グラミー賞のノミネーション一覧はこちらから。

https://www.grammy.com/grammys/news/2020-grammy-awards-complete-nominees-list

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