ユニバーサル・ミュージック・グループのCEOであるルシアン・グレンジは2008年にユニバーサル・スタジオ・ハリウッドで起きた火災で多くの音源が焼失してしまったことについて、従業員やアーティストに宛てて記した手紙が公開されている。
火災は2008年の6月1日に発生したもので、およそ24時間後に消し止められたこの火災によって映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のセットを含む多くのセットが損害を受けている。この火災ではユニバーサル・ミュージック・グループがマスター音源を保管していた倉庫「ビルディング6197」にも火の手がおよんでいる。
『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、ユニバーサル・ミュージック・グループは当時「紛れもない音楽の偉大なる遺産」の多くを失ったといい、その中にはニルヴァーナやR.E.M.、サウンドガーデン、ベック、ジャネット・ジャクソン、エミネム、ナイン・インチ・ネイルズら多くのアーティストの未公開音源も含まれていたとされている。
2011年にユニバーサル・ミュージックのCEOに就任したルシアン・グレンジは従業員に宛てた手紙の中で、「報道の内容やそれに起因する推測の多くについて誤りであるとする我々のチームからの当初の報告に少なからず安堵しました」と述べている。
しかしながら、彼は火災による損失が膨大であったことも示唆している。
「既にリリースされている音源はこれからも永遠に生き続けますが、多くのアーカイヴ音源を失ったことはあまりに痛ましいことです」とルシアン・グレンジは述べている。
ルシアン・グレンジはアーティストのリクエストに応えるための特別チームを編成したことを明かした上で、「我々の産業が拠って立つ豊かな文化的遺産を保存していくという点でリーダーになっていく努力を倍加させていきます」と述べている。
彼は次のように手紙を締めくくっている。「繰り返しになりますが、この手紙はアーカイヴの音源やビデオを焼失した痛みを取り除くことにはなりません。しかし、私たちがどれほどこのことを重大に捉えているのかということを皆さんに知っていただきたかったのです」
ルシアン・グレンジがユニバーサル・ミュージック・グループの従業員に宛てて記した手紙の全文は以下の通り。
「同僚の皆様へ
これまでに、ほとんどの皆さんが2008年にNBCのユニバーサル・スタジオ・ハリウッドで起きた火災によってレコーディング音源や映像、関連のマテリアルが焼失してしまったという記事をお読みになったと思います。
火災は10年以上前のものではありますが、報道の内容やそれに起因する推測の多くについて誤りであるとする我々のチームからの当初の報告に少なからず安堵はしました。しかし、失われたアーカイヴ音源がたとえたった一つだったとしても、胸が張り裂ける思いであることには間違いありません。
17歳の頃、ウェールズにあるロックフィールド・スタジオまで、完成させた直後の2インチのマルチトラック音源と、4分の1インチのブームタウン・ラッツのマスター音源を取りに行ったことがあります。音源が磁気エネルギーで壊れてしまわないよう、マスタリングするスタジオまでは地下鉄で移動しないように何度も注意されたことを今でも覚えています。私はその時に初めてこういったものの重要性を理解し、注意して取り扱う必要があることを学びました。
上記はちょっとした逸話です。みなさんの1人1人におかれても、ここで働くことになった経緯や理由にまつわる物語がおありでしょう。しかしながら、私たちがこのビジネスで働いているのは、音楽への愛というただ一つの理由に尽きます。アーティストやソングライターの方々は、私たちを彼らの今日や将来的な芸術作品のための執事として頼りにしているのです。
それこそが、2008年の火災で多くのマテリアルが焼失してしまったという事実が私たち全員の心に響いている唯一の理由です。既にリリースされている音源はこれからも永遠に生き続けますが、多くのアーカイヴ音源を失ったことはあまりに痛ましいことです。今回の報道によって推測が生まれることになりましたが、アーティストやソングライターの方々が、自分たちの推測が合っているのか分からないという状況はあってはならないものです。
ここで明白にさせてください。私たちはアーティストにすべてを明かす義務があります。アーティストに返答する義務があるのです。
そして、私を初めとしたこの会社の執行役員にその責任があると思っています。
もしもアーティストからアーカイヴ音源に関する質問がきた場合には、レコーディング・スタジオ&アーカイヴ・マネージメント部門でシニア・バイス・プレジデントを務めるパット・クラウスに連絡を取ってもらうよう早急に伝えてください。パット・クラウスはこの数日の間に、アーティストに対して可能な限りの早急な返答ができるよう、そのようなリクエストに応じる特別チームを編成しています。
最後に:
ユニバーサル・ミュージック・グループでは1800年代の後期のものに始まる、合計で何百万にものぼる世界で最も偉大な音源や映像、アートワークのコレクションを有しています。当社は世界各国にあるこれらの宝を保存・保護するために、そのためのテクノロジーやインフラの整備、専門家の確保に膨大な投資をしています。我々のアーカイヴやカタログの担当者たちはこれらのアーカイヴを保護して次の世代に繋げるために、必死の努力をしています。『所有している』という事実は、我々の産業が拠って立つ豊かな文化的遺産を保存していくという点でリーダーになっていく努力を倍加させていきます。
繰り返しになりますが、この手紙はアーカイヴの音源やビデオを焼失した痛みを取り除くことにはなりません。しかし、私たちがどれほど重大に捉えているのかということを皆さんに知っていただきたかったのです。
ルシアン」
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