ジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダーのドラマーであるスティーヴン・モリスはイアン・カーティスが亡くなってからの数十年でメンタル・ヘルスについての会話がより多く持たれるようになったことについて語っている。
イアン・カーティスは鬱病やてんかんとの闘病の末に1980年に自殺で亡くなっている。スティーヴン・モリスは『NME』とのインタヴューに応じて、イアン・カーティスが病気に苦しんでいた1970年代の状況と比べて病気への偏見がなくなってきていることについて語っている。
「人々が話題にできるようになって、理解してもらえるようになったという意味で、メンタル・ヘルスに対する態度はここ数十年で劇的に向上したよね」とスティーヴン・モリスは『NME』に語っている。「当時はてんかんという病気が理解されていなくて、どうにかできるものだと思われていたわけでさ。それに、ある種の汚名が着せられていて、どう対処すればいいのかが分からなかったんだ。イアンが鬱に苦しんでいた時に、『気をしっかりな。大丈夫だから』なんてことを言ってしまっていたわけでね。悪いことが起きている可能性を認めたくなかったんだ」
「今は遥かにマシにはなっているけど、今の若者たちは当時の僕らよりも遥かに多くの重圧を抱えていると思う。悪い場所へ導いてしまいかねないものが、あまりにも多いんだ。自分に何か悪いことが起きていることを認めるのは、今でも難しいことだよね。認めたくなんてないのだからね。けど、認めたほうがいいんだ。他の人たちだって経験してきたのだからね」
「助けを求めたところで、死ぬわけじゃない。今は治療もより受けやすいものになっているしね。イアンに処方された薬は最悪だった。なかには彼の症状以上にキツいものもあって、それが彼に影響を与えてしまっていたんだ」
スティーヴン・モリスの今回の発言は、ニュー・オーダーのフロントマンであるバーナード・サムナーが昨年、メンタルヘルスの問題を抱えている多くの若者への支援が足らないことに「憤りを感じている」と語ったことに続くものとなっている。
「てんかんの問題のみならず、メンタルヘルスを抱えている若者、とりわけ学生の人たちを支援するための資金が違法とも言えるほどに不足しているんだ」とバーナード・サムナーは語っている。「2008年頃の世界的な金融危機の後で、当時の連立政権が国民保健サービスに充てる予算を減額して、メンタルヘルスの問題を抱える若者たちを支援するための資金が減らされることになったんだ」
バーナード・サムナーは次のように続けている「その状況は今でも変わっていなくて、幼い子供たちは助けを求めている。彼らは見捨てられてしまっているんだ。現政権やこの国にとっての時限爆弾のようなものさ。注意を向けるべきなんだ。憤りを感じているよ」
また、元ニュー・オーダーのピーター・フックも昨年『NME』とのインタヴューでイアン・カーティスが抱えていた重圧について語っており、積極的に助けを求めるよう人々に促している。
「治療法も変化したし、社会そのものも変化した」とピーター・フックは語っている。「人々は昔よりも共感の気持ちを持っていると思うし、そういう問題を学ぶことにもオープンになっている」とピーター・フックは『NME』に語っている。「僕は(自身のバンドである)ザ・ライトと共に2010年から2つのチャリティに取り組んでいてね。エピレプシー(てんかん)・ソサエティと、(イアン・カーティスに捧げられたチャリティ団体である)CALMという団体だよ。40歳以下の男性においては、自殺が死因の1位になってしまっているんだ」
「イアンが経験したことを他の人が経験しなくて済むようにするためにも、今はメンタル・ヘルスをポジティヴに見ているよ。僕らのような無知の人々はもっと学ぶ必要がある。当時はイアンに何が起きていたのかが分からなかったんだ。歳を取ってみて、今一番ショックなのはそのことだね。彼の友人として、僕らがいかに十分な備えもせず、知識も持ち合わせていなかったのかということでね。イアンに起きたことを防ぐためには、どんなものであれ教育を受けることやコミュニケーションを取ることが一番大切なんだ」
ピーター・フックは次のように続けている。「この世で最も難しいのは、他の人たちに起きていることを知ることなんだ。自分はアルコール中毒で薬物中毒なんだけど、そうしたものと向き合ったことで、(彼のような状況を)より理解することに繋がったんだ。自分自身で経験しない限り、多くの人々にとってイアンが経験したことを理解するのは難しいと思う。だけど、できる限り早く周囲の人たちと話をするように促すことだったり、躊躇いや恥ずかしさを感じないようにすることこそ、全員に通ずる最も大切なメッセージなんだ。助けを求めるんだよ」
スティーヴン・モリスは5月16日に新たな書籍『レコード・プレイ・ポーズ:コンフェッションズ・オブ・ア・ポスト・パンク・パーカッショニスト VOL.1(原題)』を刊行する。
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