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先週、モスクワで重篤状態に陥ったことが報じられていたプッシー・ライオットの活動家であるピョートル・ベルズィロフだが、、ベルリンで彼の治療に当たっている医師が現地時間9月18日に明かしたところによれば、彼は毒を盛られた可能性が極めて高く、「抗コリン薬を使うエージェント」の標的となった可能性があるという。

医師によれば、健忘症や失明、歩く能力や話す能力の喪失といったピョートル・ベルズィロフの劇的な症状は、外的な要因によってもたらされた可能性が「極めて高い」という。

ピョートル・ベルズィロフはプッシー・ライオットのメンバーで、今年のワールドカップ決勝でピッチに乱入して逮捕された4人のメンバーのうちの1人となっている。彼らはロシアの警察の行き過ぎた権力に抗議していた。

ピョートル・ベルズィロフは現地時間9月11日に、同じくプッシー・ライオットのメンバーであるヴェロニカ・ニクルシナのための法廷審問に出席した後でこの状態に陥ったという。ピョートル・ベルズィロフは、これまでにロシア国内や国外で不可解に毒を盛られた多くの政権反対派や反政府活動家の中で、最も最近の事例となっている。

ピョートル・ベルズィロフは最初にモスクワで治療を受けた後で、現地時間9月15日の夜にベルリンに移送されている。同じくプッシー・ライオットのメンバーであるナジェージダ・トロコンニコワは、プライベート・ジェットから運び出される、虚ろで弱々しい姿のピョートル・ベルズィロフの映像を投稿している。

「彼は毒を盛られた可能性が極めて高いと思われます」とベルリンのシャリテー病院で彼を治療しているカイ=ウヴェ・エッカルト医師は記者会見で明かしている。カイ=ウヴェ・エッカルト医師は、ピョートル・ベルズィロフの親族や、当初治療を受けていたモスクワの病院からの情報、見当識障害や散大瞳孔などの症状を鑑みてこの結論に至ったという。

ピョートル・ベルズィロフは、内臓の働きを抑制する神経の麻痺という、抗コリン性の症状が出ていると見られている。これらの症状を引き起こした毒については、「現在までに特定できておらず、特定することも難しい可能性がある」と同じシャリテー病院のカール・マックス・アインホイプル医師は述べている。

2012年にプーチン大統領への抗議としてモスクワのロシア正教会救世主ハリストス大聖堂で騒乱を起こした罪で2年の刑を課されたナジェージダ・トロコンニコワは、ピョートル・ベルズィロフについて、自分が毒を盛られたことを話すこともできなかったと語っている。医師たちは彼の回復を急いでいるという。

ナジェージダ・トロコンニコワによれば、彼は方向感覚を失い、目眩の症状があり、頭が混乱しているほか、「私たちが知っているようなピョートルではない」という。

「彼は自分の友達や親族のことは覚えていますが、自分がドイツにいるということ、そして刑務所の監獄ではなく、自分が病院にいて医者に囲まれているということを理解できていないのです」とナジェージダ・トロコンニコワは語っている。

ナジェージダ・トロコンニコワは彼の思考回路について、「一つの話題からすぐ別の話題へと移る」と語っており、紛れもなく健忘症の症状だと考えているという。「当初から、彼は自分の母親のことも分からなくなってしまっています」

彼は辛い試練と闘っている一方で、「彼らしいユーモアのセンス」は失われていないという。彼は共にベルリンに移ってきたガールフレンドのニカ・ニクルシナとナジェージダ・トロコンニコワに、次のように語りかけたという。「手錠なしの君たちに会えて嬉しいよ」

プッシー・ライオットのメンバーはピョートル・ベルズィロフについて、脅迫や殺害の目的で毒を盛られたことを確信しているという。プッシー・ライオットによれば、毒の症状から鑑みて抗コリン薬を使う「4〜50人のエージェント」のグループによる犯行だと見ているという。抗コリン薬は、血液や脳からすぐになくなり、体内に侵入した化合物が特定しづらくなるために、毒を盛るには理想的な薬だと考えられているという。

「ピョートルの生命が危険に晒されたことを認識することが重要なのです……多量の抗コリン薬は呼吸困難や死に至らしめることもあります」とプッシー・ライオットは述べている。

ピョートル・ベルズィロフがモスクワに戻る時期については現時点で明らかになっていない。ナジェージダ・トロコンニコワは現地時間9月18日に次のように述べている。「ロシアでは依然として彼は命が狙われた状態にあります」

今年8月、スコットランドで著書のプロモーションを行う予定だったプッシー・ライオットのマリア・アリョーヒナはロシア当局から出国を禁じられている。

マリア・アリョーヒナは2012年にナジェージダ・トロコンニコワと共に服役していた。

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