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ドイツ最大の鉄道会社であるドイツ鉄道は、ベルリンの地下鉄であるSバーンの沿線にホームレスや「薬物使用者」を近づけないために無調音楽を流すという、物議をかもしていた計画を中止することを発表している。

ヘルマンシュトラーセ駅で実施される予定だった「敵対的な音楽」によるこの作戦は、現代音楽集団であるイニシアティヴ・ノイエ・ムジークによるプロテスト・コンサートによって阻止されている。

イニシアティヴ・ノイエ・ムジークは、メンバーのリサ・ベンジェスが言うところの「脆弱な人々に攻撃するためのこうした芸術の搾取」を防ぐために、ヘルマンシュトラーセ駅の外で前衛的なコンサートを開催している。

即席で行われたコンサートにはホームレスの人々を含む300人もの人々が訪れており、彼らには食事も振る舞われている。コンサートにはSバーンでマネージャーを務めるフリーデマン・ケスラーも訪れ、彼は当初の計画を中止することを決めている。

リサ・ベンジェスは『ガーディアン』紙に次のように寄せている。「明らかな非人道的な行為であるということばかりではなく、この計画は無調音楽についての深刻で誤った解釈を与えかねないものでした。20世紀初頭に生み出されたこの音楽は、8つの音という音楽的な階級から解放されたもので、耳にとって複雑に聴こえるのはそれ故なのです」

「一つの芸術形式として、無調音楽は日々の社会の問題とも向き合ってきました。それなのに、快適に聴こえるものばかりが期待されるのでしょうか? 現代的なヴィジュアル・アートに単に心地よいものだけを望む人などいません」

リサ・ベンジェスは次のように続けている。「芸術が人への武器であってはなりません。無調音楽は以前、ナチスによって退廃音楽の一つに分類され、禁じられていました。第二次世界大戦が終戦して以降は、若い世代の作曲家たちが……ナチスの領域に繋がってしまわないような形で楽曲を書き始め、無調音楽へと変貌を遂げていったのです」

「その事実を踏まえれば、人々を公共から除外するためにこのような音楽を使用することがより問題に思えてしまうのです」

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