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YouTubeはロンドン警視庁によって選別されたUKのドリル・ミュージックを含む「暴力的」と見なされたミュージック・ビデオの半分を削除したことが明らかになっている。

ロンドン警視庁の警視総監であるクレシダ・ディックは暴力を美化していると思われるミュージック・ビデオの削除を求めており、なかでも危険なジャンルとしてUKのドリル・ミュージックを筆頭に挙げている。ドリル・ミュージックはシカゴで誕生したトラップ・ミュージックに類似したヒップホップのジャンルの1つで、ロンドンのヒップホップ・シーンを筆頭にUKでもこの10年間で人気が高まっている。

現在までに30を超えるミュージック・ビデオが削除されており、そのうちの一部についてはロンドンにおける暴力事件の増加を引き起こした原因とされている。

「ギャングたちは映像やコンテンツなどで互いに競い合っており、ミュージック・ビデオにはギャングたちが互いを脅迫していると思われる露骨な言語も含まれています」とロンドン警視庁のマイク・ウェストはBBCに語っている。「ミュージック・ビデオでは暴力的なジェスチャーも映し出されており、銃を撃つような手の動きや、お互いを脅迫する生々しい描写も含まれています」

昨年8月に友人3人と共にトッテナム出身の15歳の少年、ジャーメイン・グーポールを刺殺した罪で、17歳のラッパーであるジュニア・シンプソンは今年2月に終身刑を言い渡されている。

「リリックは見せかけものだとあなたは示唆していますが、私はそうは思いません」と判事のアンソニー・レオナルドは判決を言い渡す際にジュニア・シンプソンに語っている。「そして、あなたは犯行を犯すのに最適な機会をうかがっていたのではないかと私は考えています」

刑事局長のマイク・ウェストは『インデペンデント』紙に対して、対象となったのは「暴力のリスクを助長するような」ミュージック・ビデオであり、UKドリル・ミュージックのシーン全体ではないと語っている。「我々は(YouTubeを所有する)グーグルと一部のミュージック・ビデオの削除に向けて共に取り組んできており、我々の提案によってそれらは削除されることとなりました」とマイク・ウェストは述べている。「YouTubeやグーグルのような組織と連携することは、この問題を前に進める上で重要な役割を果たすこととなり、我々は今後も協力してこの問題の根絶に向けて取り組んでいきます」

ドリル・ミュージックのグループである1011はYouTubeに対してジャンルを標的にしないよう求める請願書への署名を集めており、現在までに5,000を超える署名が集まっているという。

「1011は、ディガ・Dやサヴォ、ルース1、ホリド1という才能ある若手ミュージシャンからなる急成長中のグループですが、彼らは今、警察によって標的にされ、プロモーションとしてYouTubeを利用することを差し止められているのです」と請願書には綴られている。

請願書に署名した1人であるブラッドリー・フェンは次のように綴っている。「チャンスを取り上げるのではなく、彼らにメディアに出るチャンスを与えてください。彼らは情熱を持って音楽を制作しており、彼らは音楽を作る時に誰も傷つけてなどいません。従って、彼らが楽曲制作することを禁止するのはまったくもって理に適っていないのです」

同じく署名したレベッカ・リーチは次のように綴っている。「50年代や60年代はロック・ミュージックが同じ目に遭いました。そして今はこの音楽なのです。現実を見て下さい」

音楽メディア『ダミー』の編集者であるイェミ・アビアデは『インデペンデント』紙に次のように語っている。「これらの問題を無視することは憤りを呼ぶこととなり、より多くの暴力を生み出すことになると思います。ロンドンの殺人事件の数にかかわらず、ドリル・ミュージックは声を上げられない人たちのために声を上げ続けることでしょう。彼らの多くにとって、それが生きるための唯一の手段なのですから」

今回の処置について、YouTubeのスポークスマンはYouTubeのガイドラインに反しているミュージック・ビデオを対象にしたに過ぎないと説明している。

「私たちは、UKにおける殺傷犯罪と結びつくビデオを削除するために規約を新たにし、今後も専門家の方々と共にこの問題について積極的に取り組んでいきます」とYouTubeは述べている。「我々はロンドン警視庁や市長執務室と共にこの問題の取り締まりや刑事的な部分に取り組み、内務省やコミュニティのグループと共にこの問題への理解に務めており、我々のコミュニティのガイドラインを犯したり、法律に違反するようなギャング関連のコンテンツに対して行動を起こすべく取り組んできました」

「命の危機に関わるものなのかを判断するにあたっては法的機関の専門家の情報を必要とすることがあるため、我々のチームに直接そのビデオを伝える専用の方法を警察に提供しています」

「UKの他の方々と同様、私たちはこの問題について強い懸念を持っており、我々のプラットフォームが暴力の助長には使われたくないのです」

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