TaylorSwift

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テイラー・スウィフトがアップル社を相手取り、同社のストリーミング・サービス、アップル・ミュージックの90日間無料トライアルの期間中、レーベルからアーティスト等に使用料が支払われないことに公開書簡で抗議した件について、アップルが支払いをする方向で決着がついた。

アップル社の上級副社長エディ・キュー氏が、米『ビルボード』誌へ語ったところによると、テイラーの抗議はもっともであるため方針を変更したとのことだ。両者の間にはわだかまり(Bad Blood)はないという。

方針変更についてはどのくらいの時間をかけて検討したのか? アップルは無料トライアル期間のコストについては「自腹を切る」のか? その他、いくつかの質問に対し、キュー氏が以下のように回答している。

Q:テイラーからのレターが、方針変更のきっかけとなったのですか?

キュー氏:今回の件では何組かのインディーズのアーティストからも抗議がありましたが、アーティストに支払いをしないというつもりはありませんでした。元々は、この無料期間の埋め合わせとして、継続的により高いロイヤリティ・レートを支払うという条件で交渉していました。しかし、テイラーの公開レターの内容を見て、ともかく条件を変更しなければならないと決心したのです。結論として、無料期間中に使用料を支払い、当初のロイヤリティ・レートの引き上げも行うことにしました。

Q:テイラーとは話ができましたか?

キュー氏:今日話ができ、彼女の気持ちを理解し、方針を変更することを伝えました。今、彼女はUKツアー中ですが、私と話をした時にはアムステルダムにいたようです。私としてはともかく、直接話がしたかったです。テイラーとは長い付き合いですから。

Q:彼女の反応はどうでしたか?

キュー氏:我々の決断に感謝してくれました。公開書簡にも書いてあったように、彼女はアップルに好意を持ってくれているし、これまで一緒に仕事をしてきた仲ですから。我々の迅速な対応に感激したと言ってくれました。

Q:では、期間中はアップルから使用料が支払われるのですね?

キュー氏:そういうことになります。「音楽はアップルのDNAの一部だ」ということをよく我々は話しています。我々は音楽が好きですし、いつも音楽業界とは良い関係でいようと努めており、アーティストを尊敬しています。音楽業界との関係を我々は長い目で見ています。

Q:90日間無料トライアルの意図は何なのですか?

キュー氏:とにかく、我々は良い音楽をどんどん広めていきたいという思いがあります。誰もがまずは試聴する機会を持ち、アップル・ミュージックを体験して欲しいと思い、トライアルの期間を設けました。期間が終了してから、課金方式に切り替えるかやめてしまうかはユーザーの自由ですが、選択するための時間を提供しようと思ったわけです。無料期間中には、我々のストリーミング・サービスや世界初のワールドワイド・ライヴ・インターナショナル・ラジオ・ステーション、またアーティストとのつながりを体験することができます。

Q:テイラーのレターを読んでからはどのような行動をされたのですか? 方針の変更はどのようにして決定されたのですか?

キュー氏:幸いなことに、アップル社のCEOであるティム(・クック)と私は、すぐに結論を出すことができたのです。すでに先週からずっと話し合っていた内容だったから、話も早かったのです。

Q:ジミー・イオバイン氏(アップルが買収した定額音楽配信サービスBeatsの創業者。現在はアップルの幹部)の反応はどうでしたか?

キュー氏:ジミーは我々の決断に賛成してくれました。バンドやユーザーのためになることをするとともに、アーティストもサポートしていきたいというのが、我々の意図ですから。

Q:今回のPR合戦は予期せぬことだったと?

キュー氏:今回のことを通じて、我々が正しい方向に進み、ファンによいサービスを提供することが一番大切です。

Q:テイラーはすべてのアーティストを代表していると?

キュー氏:別のインディーズ・アーティストからも今回の件で意見をもらっていますが、テイラーは自分の立場をちゃんと理解して発言しているところは、さすが偉大なアーティストですね。

 

6月20日土曜日にテイラー・スウィフトの広報担当は彼女の最新作『1989』が6月30日からスタートするサービスに登場しないことを認めていた。テイラー・スウィフトはアップルへの公開書簡を発表し、新たなストリーミング・サービスを批判し、「不公平」であり「失望した」と語っていた。

テイラー・スウィフトは自身のタンブラーに投稿した「To Apple, Love Taylor」と題した公開書簡の中でその理由を説明している。「なんで私のアルバム『1989』が新たなストリーミング・サービス、アップル・ミュージックで配信されないのか、それを説明するためにこれを書いているの」とテイラー・スウィフトは書き出している。「アップル・ミュージックで契約した人には最初の3ヶ月間、無料のトライアルができるのは知ってると思う。でも、アップル・ミュージックが作曲者やプロデューサーやアーティストにその3ヶ月間、何も支払わないのを知ってるとは思えないの。私もショックだったし、失望したし、ほんとに歴史的に見ても進歩的で寛容な企業に似つかわしくないと思ってる」

テイラー・スウィフトは、自分はこの3ヶ月間で生計を立てるのに困ることはないとしつつも、アーティストに支払いをしない決定は新しいアーティストやこれからのアーティストには信じられないほどの被害になると説明している。「これはファースト・シングルをリリースしたばかりのアーティストやバンドにとっての問題なの。その成功に対して報酬は支払われないのよ。これは初めて曲がリリースされた若いソングライターの問題なの。彼らはそのロイヤリティで借金を返済するつもりだったの。これは疲れを知らずに働いて、音楽を生み出し刷新するプロデューサーの問題でもあるわ。まさにその分野を切り開いてきたアップルのクリエイターや革新者のようなね。でも、1年の4分の1については彼や彼女たちの曲が再生されても報酬は支払われないのよ」

自分の考えは、アップルに対する好意や敬意から「公言することを恐れている」自分の仲間のアーティストや作曲者やプロデューサーからの声であることを説明した上で、彼女はこう続けている。
「3ヶ月というのは支払わない期間として長いし、何も支払わないのに働けなんていうのは不公平だと思う」

「これまでアップルが成し遂げてきたことへの愛と敬意と賞賛を込めていっておきたいの。音楽を作っている人に対してフェアなストリーミング・サービスへと進展して、自分もすぐに参加できるようになるのを願っているわ。きちんと納得したプラットフォームは作れると思うの」とした上で、このように締めくくっている。「方針を変えるのに遅すぎることはないわ。私たちはiPhoneをタダで欲しいなんて言ってないわけで、私たちの音楽を報酬なしに提供しろなんて言わないで」

テイラー・スウィフトは昨年すべての音源をスポティファイから引き上げている。

テイラー・スウィフトは6月27日にロンドンのハイドパークでライヴを行うことが決定している。これは「British Summer Time Festival」の枠で行われるもので、エリー・ゴールディングやジョン・ニューマンも出演し、テイラー・スウィフトはヘッドライナーを務めることになっている。

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