エレクトロニック・ミュージックの先駆者であるクラフトワークが、許可なくバンドの曲をサンプリング使用したドイツ人ラッパーに対する訴訟で敗訴している。
モーゼス・ペラムは、クラフトワークの1977年発表の楽曲“Metal On Metal”から2秒のドラム音をサンプリング使用した“Nur Mir”を1997年に制作し、ラッパーのサブリナ・セトラーに提供している。
クラフトワークのオリジナル・メンバーであるラルフ・ヒュッターは、“Only Me”と訳されたこの楽曲を巡り、モーゼス・ペラムを訴えている。ドイツの裁判所は2012年、“Nur Mir”を廃盤にする命令を下しており、繰り返しサンプリング使用することは著作権の侵害にあたるとするラルフ・ヒュッターの訴えを認めていた。
Sabrina Setlur – Nur Mir 投稿者 Stella78
これに対しモーゼス・ペラムは控訴しており、今回、当該曲のクラフトワークへの影響は、モーゼス・ペラムの「芸術的な(表現の)自由」を奪えるほど大きなものではないという判決が下されている。
ドイツの連邦憲法裁判所は、モーゼス・ペラムのケースのようなサンプリング使用を禁止することは「特定のスタイルにおける音楽の制作を、実質的に不可能にする可能性がある」と説明している。ラルフ・ヒュッターはミュージシャンとして、モーゼス・ペラムは“Metal On Metal”の音源をサンプリング使用する前に許可を求めるべきだったと訴えていた。
今回の判決は、ドイツの連邦憲法裁判所が2012年の判決を再考して覆したことを意味している。
判決が下される前に、ドイツの音楽業界団体であるGFUMIは、「芸術的な(表現の)自由がすべてに勝る」という傾向は、広く影響を及ぼす重大な結果をもたらすだろうと、警鐘を鳴らしていた。同団体のディレクターであるフローリアン・ドリュッケは、次のように述べている。「そのような判断がなされれば、インターネット上にあるすべてのものが無料であると主張する人々の利益になるだろう」
“Metal On Metal”はクラフトワークのアルバム『ヨーロッパ特急(トランス・ヨーロッパ・エクスプレス)』に収録されている。このアルバムが制作された当初から、4人いたメンバーのうち現在でもバンドに在籍しているのはラルフ・ヒュッターのみとなっている。
クラフトワークはこのアルバムに収録された8曲すべてを、8月4~7日にオスロにあるオペラハウスで演奏し、続いて9月からUSツアーを開始する予定になっている。
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