3月17日に開かれたサウス・バイ・サウス・ウェストの基調講演で、長年デヴィッド・ボウイのプロデューサーと共同制作者を務めたトニー・ヴィスコンティが近年の音楽業界を批判している。
トニー・ヴィスコンティは、デヴィッド・ボウイのシンガーとしてのキャリアの最晩年まで共にしており、1969年のセカンド・アルバムから最後のアルバム『★(ブラックスター)』までを手掛けている。
「これ以上ないほどひどい状態だ」。『ガーディアン』紙によると、彼は講演の冒頭でこう切り出したという。そしてメインストリームのポップ・ミュージックを「コンピューターと、どれほど加工されたか誰にも分からないほどのヴォーカルの産物」だと表現し、タレント発掘のテレビ番組については「ただ運頼りで大スターになっている。彼らはヘアメイクをばっちり施せば、それですべてが上手くいくと思っているんだ。翌週まではね」と印象を述べている。
才能のあるミュージシャンは今も存在するものの、レコード・レーベルがリスクを取ろうとしない、と彼は考えている。「素晴らしい人材は我々の周りにいるんだ。次のデヴィッド・ボウイは世界のどこかに住んでいる。次のザ・ビートルズも、次のスプリングスティーンも。しかし、彼らはチャンスを得られない。投資されないんだ」
「1970年代を振り返ると、フリートウッド・マックの『噂』は1,400万から1,600万枚売れた。当時と比べると全世界の人口はおよそ2倍の80億人近くになったのに、昨年のテイラー・スウィフトの売り上げは1,200万枚だ。人口が2倍になったのに、なぜレコードは売れない? それは、今ではレコード・レーベルが上質の音楽を提供していないからで、そのせいで人々は幻滅して、レコードを買わなくなったんだ」
デヴィッド・ボウイが亡くなった直後には、トニー・ヴィスコンティは彼の最後のアルバム『★(ブラックスター)』はファンへの「別れの贈り物」だと述べている。
トニー・ヴィスコンティは次のメッセージを発表している。「彼はいつだってやりたいことをする人でした。そして、自分のやり方で、ベストな方法でやろうとする人でした。彼の死も彼の人生と変わりません。アートとしての作品だったのです。わたしたちのために彼は別れの贈り物として『★(ブラックスター)』を作ってくれました。こうなるであろうことは1年間のほど知っていました。しかし、わたしは準備ができていなかったのです。彼は桁外れの人物でしたし、愛と生活に溢れていました。彼はいつもわたしたちと共にいてくれるでしょう。ただ、今は泣くときなのです」
また、死後にデヴィッド・ボウイが全米1位を獲得したのを受けて、トニー・ヴィスコンティはフェイスブックに次の声明を発表している。「僕の親愛なる友人の業績を誇りに思うよ。1位は数字でしかない。でも、今回の場合は、真のアーティスト性と本物のクオリティがアルバム・チャートで1位を獲得できることの見本になったわけだよね」
そして、こう続けている。「最近のアーティストにも働きかけているんだ。商業主義の幻想に迎合しないでくれってね。現在のヒット曲のセールスが過去10年と較べて低くなってるとしてもね。やらなきゃいけないことをやるんじゃなくて、やりたいことをやるんだ」
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