新たな統計によれば、UKにおける音楽ソフトの売り上げは過去最高を記録したが、UKのアーティストの収入は平均給与をはるかに下回ることが明らかになっている。
この統計はデジタル・エンタテインメント&リテール・アソシエーションがまとめたもので、ストリーミング配信の契約数とフィジカルの音源販売数が2024年も伸び続けていることを明らかにしている。過去12ヶ月間で消費者は音楽に総額24億ポンド(約4650億円)を費やしたという。
これまでの最高の売り上げはCDが最も売れていた2001年で、消費額は総額22億ポンドだった。
昨年の音楽消費の上昇はスポティファイ、アップル・ミュージック、アマゾン・ミュージックといったストリーミング・サービスの契約者数の増加によるもので、デジタルのリスニングが全体の85%近くを占めている。
最近はフィジカルの売り上げも着実に伸びており、昨年のアナログ盤市場は10.5%の伸びを見せている。全体で670万枚のセールスとなっており、売上高は1億9600万ポンドとなっている。CDの総枚数はおよそ1050万枚で、1億2620万ポンドの売上高となっている。
アルバムで最も多く売り上げたのはテイラー・スウィフトの『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント: ザ・アンソロジー』で、総計78万3820枚相当のセールスが計上されている。その後にはサブリナ・カーペンターの『ショート・アンド・スウィート』、チャペル・ローンの『ザ・ライズ・アンド・フォール・オブ・ア・ミッドウェスト・プリンセス』、チャーリーXCXの『ブラット』が続いている。
デジタル・エンタテインメント&リテール・アソシエーションのキム・ベイリーはUKでの音楽による売り上げが10億3000万ポンドまで記録的に落ち込んだ10年前と比較して、2024年は「飛躍の年」と評している。
しかし、2024年における音楽消費の増加にもかかわらず、多くのアーティストが直面している暗い現実もある。過去12ヶ月で24億ポンドが音源に費やされたにもかかわらず、ミュージシャン組合はUKで働くミュージシャンのほぼ半数が年収14000ポンド(約270万円)以下という驚くべき統計を明らかにしている。
ミュージシャン組合のナオミ・ポール書記長は才能あるミュージシャンが直面している厳しい状況について次のように語っている。「悲しいことにプロのミュージシャン、アーティスト、ソングライターはこの数字に象徴されるような好況を享受していません」
「ミュージシャンは高い生活費やツアー費用、公的芸術資金の停滞、EU離脱後のツアー問題、そして決定的なのはストリーミング収入の正当な分配を受けていないことなど、複数の問題に直面しています」
フィーチャード・アーティスト連合のCEOであるデヴィッド・マーティンも『NME』と共に声明を発表して、音楽ソフトの売り上げに見られる好況はミュージシャンの好況を意味するわけではないと述べている。
「10年連続の成長と、20年ぶりの高水準にある音楽ソフトの売り上げは業界の繁栄を示すものです。しかし、水面下では多くのUKアーティストの収入は平均給与をはるかに下回っており、世界最大のレコード会社と契約しているにもかかわらず、最低賃金を下回るアーティストもいます。変化が急務なのです」
「フィーチャード・アーティスト・コーリションは長い間、公正な最低デジタル印税率を求めており、最新の数字はインターネットによる変化が業界の収益を圧迫しているというレーベル側の言い訳を覆すものです。デジタル・文化・メディア・スポーツ省主導の交渉にもかかわらず、業界の抵抗が続くのであれば、政府は法制化を検討しなければなりません」
「2024年、UKのアーティストはスポティファイのトップ・アーティストから姿を消し、全英シングル・チャートの首位にもほとんど立っていません。これに加えてコストの上昇により、多くのアーティストにとってライブ・パフォーマンスはますます実現不可能なものとなっています。音源とライヴ・ミュージックという両セクターの記録的な売り上げが報じられる中で、富の公平な分配は利益を圧迫するものではなく、業界の未来に不可欠な投資であることは明らかです」
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