ガンズ・アンド・ローゼズのギタリストであるスラッシュはブルース・アルバム『オージィ・オブ・ザ・ダムド』の全曲解説が公開されている。
ブルース・アルバム『オージィ・オブ・ザ・ダムド』はスラッシュが自身のルーツとなる11曲をカヴァーした作品で、オリジナル・インストゥルメンタルも1曲収録される。本作の日本盤は本日5月22日にリリースされている。
レーベルから公開された全曲解説は以下の通り。
01. The Pusher feat. Chris Robinson
「“The Pusher”はステッペンウルフの古い曲なんだ。そう、俺は昔からステッペンウルフが大好きでね。この曲が特に好きで、90年代にはスラッシュズ・ブルース・ボールでやっていた。これは絶対にまた復活させてやりたいと思っていたよ。ブルースのスタンダードではない曲のいい例だからね。60年代のロックンロールみたいなドラッグ・ソングなんだ。ともあれ、俺はこれをやるというアイディアがあって、クリス・ロビンソンを最初にスタジオに連れてきた。あいつは完全にやる気だったね。スタジオにハーモニカを持って入ってきて、内容が違うテイクを3つやった。どれも完全に違うやつでさ、ハーモニカとヴォーカルを一発録音でやったんだ。俺たちはその中から一番気に入ったやつを採った。それで決まりさ」
02. Crossroads feat. Gary Clark Jr.
「元々はこの曲のロバート・ジョンソン・ヴァージョンをやろうなんて話をしていたんだ。それは多彩な内容だったけど、曲に入り込み始めると、もっとエレクトリックなヴァージョンをやりたいと思っていたことに気づいたんだ。それで、クリームがやったライヴ・ヴァージョンにより近い路線でいくような感じになった。クリームと彼らのサウンドにより影響されているね。ゲイリー・クラーク・Jr.には2、3年前に出会ったんだ。おそらく若手ブルース・ギタリストの中でも最高の部類に入るね。本当に久々に、ソウルフルで感情に訴えてくるギタリストでありヴォーカリストが出てきたよ。ゲイリーがスタジオに来てくれてね。俺らブルース・バンドと一緒に録ったライヴ・ヴァージョンをまる1曲分とっておいた。そこにあいつがとびきりのヴォーカルを入れてくれたんだ」
03. Hoochie Coochie Man feat. Billy F. Gibbons
「一番セクシーな曲のひとつだね。もっとも、マディ・ウォーターズの音源はみんなそうだけど。マディ・ウォーターズの素晴らしいところのひとつは、彼の声、トーン、そしてリズム感にいくらかの色気があったことだ。そこにとんでもなくイカしたリズム・セクションを加えてさ。それはまるで、何て言うか、ものすごく…(フランス語の卑語)…この曲以上にファックしたい気分にさせられる曲が思いつかないくらいなんだ。ともあれ、俺は他ならぬこの曲をカヴァーしたいと思った。ただしユニークな形で。…と言うのも、よくカヴァーされているリフだから、このものすごく、ものすごくシンプルな曲の独自のテイクを持っている人があまりに多いんだ。この曲はリズムと、ある種のとてもシンプルな3音のパターンでできている。俺たちがやったヴァージョンは、マディ・ウォーターズのオリジナルに近いヴァイブにしたんだ。このアルバムで叩いてくれた俺たちのドラマーはマイケル・ジェロームで、あのグルーヴを本当にとてもうまく出してくれた。この曲のまとめ役にふさわしいドラマーだ。音の基本的なところを作り終えて以来、俺はビリー・ギボンズにヴォーカルをやってもらうことをずっと考えていた。ビリーを追いかけて南に下りていったら、パームスプリングス(カリフォルニア州)のスタジオでヴォーカルとギターをいくらか加えてくれたよ。そんな感じに曲が出来上がっていったんだ。とてもライヴ感のある、ライヴ的な響きのあるトラックで、実にクールだ。まるでどこかの酒場にいるような音がする。ハーモニカはレス・ストラウドに吹いてもらった。俺の友人で、いつも自分のハープ・プレイの話をしていたんだ。実際、本当にとんでもないハープの名人だよ。そんな訳で、レスが俺たちのスタジオに来てハープを入れてくれたのさ」
04. Oh Well feat. Chris Stapleton
「さて、これの原曲は、ピーター・グリーンが結成した初代のフリートウッド・マックだ。偉大なシンガー・ソングライター・ギタリストのひとりで、一般にはあまり知られていないけど、俺たちギタリストの間ではとてもよく知られていた。60年代のブリティッシュ・ブルースの担い手として、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ニック・テイラーと同じ雲の上の存在だ。ドラッグでしくじったような感じでキャリアの序盤で姿を消してしまったけど、最高に素晴らしい曲をたくさん書いていて、“Oh Well”は俺のお気に入りのひとつなんだ。多分13歳の頃、この曲をラジオで聞いたことを憶えている。フリートウッド・マックの古いヴァージョンと、スティーヴィー・ニックスやリンジー・バッキンガムのいたラインナップでの新しいヴァージョンと、両方よくかかっていたんだ。この曲は昔から大好きだね。ギター・リフが素晴らしいよ。かつて90年代にはスラッシュズ・ブルース・ボールでジャムっていたし、ライヴでもあちこちでやってきた。このアルバムではどんな風にやりたいか初めからわかっていた。ふさわしいヴォーカリストが誰かをずっと考えていた曲のひとつでもあった。それで頭の中にあったひとりが、今一番素晴らしいシンガー・ソングライターのひとり、クリス・ステイプルトンだったんだ。彼もまた気骨のある、独特の声の持ち主だからね。連絡したら素晴らしい仕事をしてくれた。何しろ声がすごくクールなんだ」
05. Key to the Highway feat. Dorothy
「これは俺がブルース・バンドでジョニーとテディとやっているブルースのスタンダード曲のひとつだね。大昔、1997年か、もしかしたら96年かもしれないけど、初めて一緒に組んで以来ずっとやっている。今回のアルバムでやる曲のリストでも筆頭にあった。オリジナルはフレディ・キングで、アレンジ面ではオリジナルにある程度忠実にやった。テンポはちょっとだけ上げて、ほんの少しハードにロックするようにしたんだ。とてもオープン・エンドなタイプの1-4-5のブルース進行だけど、少しスウィング感もある。とにかくクールな曲だよ。それからアメリカの素晴らしいブルース&ロック・シンガーで、特徴的でソウルフルなしゃがれ声を持っているドロシーに歌を頼んだ。ドロシーがやってきて、すごい仕事をやってのけてくれた。この曲は色んなヴァージョンがたくさん出ているから、彼女には俺の好きなやつをいくつか送ったら、彼女らしいヴォーカル・アプローチを思いついてくれた。最高の出来栄えになったよ」
06. Awful Dream feat. Iggy Pop
「ところで、興味深い話があるんだ。ブルース・バンドを再結成したとき、俺の頭の中には全体のフィーリングと、ヴォーカリスト候補たちがあった。曲から曲へと移りながらぴったりの人を見つけたんだ。シンガーについての会話に出てきた中では、イギー・ポップが俺が長い間友人で一緒に仕事もしてきた相手だった。彼のことは心から憧れているし尊敬している。ベーシストのジョニーが、イギーがあるインタビューで、ブルースのジャンルに入るものを何かやってみたいと言っていたと教えてくれた。そんな話は聞いたことがなかったからイギーに電話して、アルバムについて話し合ったんだ。まだ彼に歌ってもらう曲のアタリを付けていなかったから、何かやりたい曲はあるかと本人に訊いたら、ライトニン・ホプキンスの「オーフル・ドリーム」だと言われた。オリジナルを聴いていると、ライトニン・ホプキンスがピックアップのついたアコースティック・ギターをスツールに腰掛けている姿が思い浮かぶ。とてもオールド・スクールで原始的なヴァージョンのエレクトリック・アコースティックだね。そのバックで誰かがすごくゆったりとドラムを叩いている。ほとんどその場で即興的に作った一発録りだってことがわかるんだ。そんな訳で、俺はそのヴァージョンをすごく大まかに覚えておいた。イギーがLAにある俺のスタジオに来てくれて、ふたりでおもむろに腰を下ろした。彼が片方の、俺がもう片方のスツールにね。それから俺の相棒のマイケル・ジェロームにも来てもらって、ドラムを少し叩いてもらった。で、生演奏で録ったんだ。だから本当にもの凄くクールで自然体なものになったよ。イギーのあの曲に対する解釈は実に卓越している。誰も聞いたことのないような彼の声だよ。それから、曲の一番終わりにはクールなことが起こるんだ。俺たちがヴァンプを弾いているんだけど、ヘッドフォンを着けて聴いていたら、ハーモニカみたいな音が聞こえてくるんだ。振り向いたら、イギーがハーモニカのパートを歌っていた。まったくもってクールだよ。だからそうだね、あれはアルバムの中でもとても特別な瞬間だった」
07. Born Under a Bad Sign feat. Paul Rodgers
「アルバート・キングの曲の中でもオールタイム・フェイヴァリットのひとつで、ガキの頃に聴いてきたブルース・ロックの中でも指折りにリフがクールな“Born Under a Bad Sign”をやるというのは悩むまでもなかった。俺たちは俺たちなりにアレンジして俺たちならではのヴァージョンをやったんだ。そうしたら、以前一緒に仕事をしたことがあって、仲のいい友人でもあるポール・ロジャースがスタジオに入ってきた。ほら、彼は最高に素晴らしいブルース・ヴォイスの持ち主だろう?60年代のイングランドで誰もが憧れていた人なんだ。ポールは最高のブルース・ヴォーカリストで、フリーにいた後はバッド・カンパニーをやって、それ以降は色んなことをやってきた。歌ってくれるか頼んだら、驚くほど素晴らしい仕事をしてくれたんだ。“素晴らしい仕事”と言うことすらはばかられるよ。とにかくあまりにパーフェクトなんだか」
08. Papa Was a Rolling Stone feat. Demi Lovato
「この曲はブルース・カヴァー・アルバム的なものとしては最左翼にあるんだ。ザ・テンプテーションズの曲で、本当はR&Bだからね。1972年以来、俺はこの曲と一緒に育ってきた。‘70年代前半、俺がガキの頃にものすごく人気があった曲だったんだ。クールな曲で、内容もこの曲自体もアドヴェンチャーだね。オリジナル・ヴァージョンが超長いんだ。少なくとも10分間はある。しかも、びっくりするくらい素晴らしいインストゥルメンタルのアレンジが施されている。というか、曲全体がびっくりするくらい素晴らしいんだよな。90年代にはよくジャムっていたものだよ。俺がスネイクピットと呼んでいたもうひとつのバンドでね。うちのベーシストのジョニー・グリパリックもメンバーだったんだ。ところでこの曲は絶対にデミにやってほしかった。何しろこの曲の主題というのが、父親不在という不穏な傾向についてだからね。この父親は最終的に亡くなってしまうんだけど、そうするとキッズがママに訊くんだ。『パパとは会ったこともないのに色々噂を聞くって一体どういうこと?』ってね。とてもダークでパーソナルな主題だよ。だから、歌い手はただカヴァーするためだけにカヴァーする訳にはいかない。何らかの形で通じるものがないといけないんだ。デミ・ロヴァートとはここ数年来の仲で、俺はこの歌を力強い女性の声で歌ってもらいたいと思っていた。彼女はとても若々しくてパワフルな声の持ち主だけど、完全に純真な感じではないのに、子供らしさに近いものが間違いなくある。デミに歌を頼んだのは、彼女に興味深い過去があったから。彼女は二つ返事で飛びついてくれたよ。曲が投げかける疑問に彼女がどう反応するか想像もつかなかったけど、完全にこの曲を理解して共感してくれた。デミが参加して、素晴らしい仕事をしてくれたんだ。この曲を彼女とやるのは本当に、本当に楽しかった」
09. Killing Floor feat. Brian Johnson
「“Killing Floor”はアメリカン・ブルースの巨匠のひとり、ハウリン・ウルフが書いた曲だ。彼はすごくクールな感じの、ユニークなスタイルの持ち主だった。“Killing Floor”は彼の曲の中で特によく知られているうちのひとつに過ぎない。何度もカヴァーされていて、素晴らしいギター・リフとソリッドなグルーヴがあるから、昔からカヴァーしたかったんだ。オリジナルとは少しアレンジが違っていて、実は彼の曲を2曲組み合わせている。“Killing Floor”と、それから“Spoonful”のギター・リフもちょっと入れてある。俺の特にお気に入りのリフを2つ。誰に歌ってもらうかを見極める中で、俺はぶっきらぼうな感じのいい声の持ち主が欲しいと思った。それで最初に思い浮かんだのがAC/DCのブライアン・ジョンソンだったんだ。そうしたら『ああ、こっちへ来いよ。一緒にやろう』と言ってくれた。プロデューサーを連れてフロリダに行ったら、ブライアンが「キリング・フロア」のキラー・ヴァージョンをやってのけてくれた。AC/DCでの特徴的な声で歌う代わりに、1オクターヴ下げて歌っていた。それが実際この曲の高さだから、それで良かったよ。別の歌い方をしていたら、きっとAC/DCがやった方が良かっただろうからね。つまり実にうまくいったということだ。エアロスミスのスティーヴン・タイラーがLAのスタジオに来てくれた時にこの曲を聴かせたら、彼も参加したいと言ってくれた。で、自分のハーモニカを掴み取ると、スタジオに飛び込んで吹いてくれたんだ。とても自然発生的で素晴らしかったよ。ヴォーカルもやってくれたようなものだね。ハープのプレイの合間に叫んでいるんだ。マジでクールだよ。間違いなく一瞬をとらえているし、あれを何とか手に入れることができて誇りに思いながら終えることができた」
10. Living for the City feat. Tash Neal
「“Living for the City”はスティーヴィー・ワンダーの曲で、これもまた俺が聴いて育ってきた曲だ。子供時代、スティーヴィー・ワンダーが間違いなくBGMだった時期があった。母親が彼ばかり聴いていたからね。“Living for the City”は俺の好きな曲のひとつで、ずっとついて離れなかった。歌詞的には曲の中でいろんなことが起こって、ストーリーが語られるんだけど、終盤になると音楽的にブレイクが起こって、ニューヨークの街の音に入っていく中、主人公が逮捕されてしまう。頭の中にとあるヴィジュアルが思い浮かんで、それがずっと頭から離れなかった。このアルバムをやることの何が楽しかったって、俺たちのやりたい放題にできることだった。90年代にはスティーヴィー・ワンダーの“Superstition”をやったけど、あの曲は死ぬほどカヴァーされているからやりたくなかった。ということで、スティーヴィー・ワンダーの曲をやるというアイディアは、『ああ、スティーヴィー・ワンダーの曲はやらないといけないな』ではなく、『そうだ、俺の好きな別の曲をやろう』と言ったんだ。アレンジは少し切り取ったからオリジナルより少し短くなっている。俺たちは街の音を模倣しようとも、オリジナル・ヴァージョンみたいなサウンドにしようともしなかった。でもこのアルバム全体とこれから始まるツアーで歌とギターをやってくれているタッシュ・ニールがこの曲を歌ってくれて、超ファンタスティックな仕事をやってくれた。だからそうだね、本当に満足しているよ。間違いなく大したものになった。“Papa Was A Rollin’ Stone”が意外だったら、この曲はさらにそうなるだろうな」
11. Stormy Monday feat. Beth Hart
「これはかなり有名なブルースのスタンダード曲のひとつだ。大半の人は、60年代のエタ・ジェイムズのヴァージョンに馴染みがあるんじゃないかな。この曲には色んなヴァージョンがあったけど、俺はいつもエタ・ジェイムズのヴァージョンにかなり惹かれていたから、これはやりたいと確信していたんだ。オールマン・ブラザースも素晴らしいヴァージョンをやっていて、俺たちも90年代にブルース・ボールでやっていた。俺はとにかくこの曲でソロなんかを弾くのが大好きだったね。すぐに思い浮かんだのがベス・ハートだった。めちゃくちゃ素晴らしいアメリカ人ブルース・ヴォーカリストで、結構長い間シーンにいる。猛烈にエモーショナルで、全身全霊で歌う女性ヴォーカリストだから、みんなベスとプレイするのが大好きなんだ。彼女に声をかけたら、『ええ、ぜひとも。ただ、オリジナルのメジャーじゃなくて、マイナーでやりましょう』と言われたよ。そうしたら曲の毛色がすっかり変わって、俺たちのヴァージョンをとても独特にしているだけでなく、間違いなく効果的なものになっている。彼女はスタジオに来て、この曲をワン・テイクでやって、歌い終わると床に倒れ込んでいたよ。まさに俺たちが実際にスタジオで、最初の1週間で生録音の技術的な調整をやっていた頃だった。俺たちがスタジオに居るところに彼女が入ってきて、確か1回バンドだけでプレイしたんじゃなかったかな。それからベスが到着して、一緒に取り組んだ。それで決まりだったね。彼女とやったあの見事なファースト・テイクを超えるものはできないって確信したよ」
11. Metal Chestnut
「これはカヴァーじゃなくて、誰の歌も入っていない。“Metal Chestnut”はインストゥルメンタルで、俺が『オージィ・オブ・ザ・ダムド』のために書き下ろしたものなんだ。プロデューサーのマイク・クリンクに『なあ、おい、君はこのアルバムに向けて何も書いてないんだな』と言われてね。考えてもいなかったから、家に帰って何か書いて、それを持って戻ってきて、バンドとジャムを始めたんだ。あっという間に自然にまとまった、とにかく本当にシンプルなチューンだよ。無理に作ったものじゃないけど、何か書こうと特に心で温めていた訳でもなかった。急いで書いて、それから自宅のスタジオでギターを乗せた。とても正直でエモーショナルな曲なんだ」
アルバムのストリーミングはこちらから。
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