Photo: David Brandon Geeting

キャロライン・ポラチェックは今年2月にリリースされた通算4作目となる最新作『ディザイア、アイ・ウォント・ターン・イントゥ・ユー』のフィジカル盤が11月3日にリリースされている。

最新作『ディザイア、アイ・ウォント・ターン・イントゥ・ユー』はデジタル・アルバムのグローバル・ストリーミング数が1億3000万回を突破している作品で、“Bunny Is a Rider”、“Billions”、“Sunset”、“Welcome to My Island”といったシングルが収録されている。

キャロライン・ポラチェックは11月5日にニューヨークのラフ・トレード・ショップでサイン会を実施しており、今月21日には、ロサンゼルスの世界最大インディペンデント系レコードショップのアメーバ・ミュージックでもサイン会を行うことが決定している。

キャロライン・ポラチェックは11月30日に一夜限りの来日公演を行うことも決定している。

11月30日(木)豊洲PIT
18:00開場/19:00開演
チケット:7,800円(入場時ドリンク代別途必要/入場整理番号付)

更なる公演の詳細は以下のサイトで御確認ください。

https://kyodotokyo.com/pr/carolinepolachek.html

最新作のフィジカル盤リリースを記念して、日本のレーベルからはキャロライン・ポラチェックのアーティスト性を掘り下げる音楽ライターの矢島由佳子によるテキストも公開されている。

公開されたテキストは以下の通り。

たった1本のライブに価値観をひっくり返されることがある。11月30日、東京・豊洲PITにて開催されるキャロライン・ポラチェックの初単独来日公演は、その「1本」になるだろう――。ただの宣伝文句になりかねない言葉ですら、キャロライン・ポラチェックを表現するにあたっては決して大袈裟でない。

エレクトロ・ポップ・ユニット「チェアリフト」解散後、ソロとして初の来日公演となった『FUJI ROCK FESTIVAL ‘23』WHITE STAGEでのライブは各所から高く評価された。世界のトップアーティストたちによる最先端のライブ表現を見られることがフジロックの醍醐味のひとつであるが、その真骨頂として位置付けられるほど、「見たことのないライブ表現を目撃することができた」という類の感動があった。

「新しいライブ表現」とは、「最先端のテクノロジーを駆使し……」みたいなことではない。むしろその逆だ。キャロライン・ポラチェックのライブは、オペラ、聖歌、さらにはメタルバンドのボーカリストなどをルーツにして磨き上げた驚異的な声域の歌唱力を含めた「身体のすべて」を追究し、原始的な芸術で強烈な印象を残す。自身の声・肉体・感情から、ファンタジーとリアル、人間の美しさと脆さなどを浮かび上がらせて、「理解できるようで理解させない」アートを創造することに挑戦しているようにも見える――まるで、人間やこの世が「理解できるようで理解できない」ものであることを象徴するかのように。

今月(2023年10月)、キャロライン・ポラチェックは2本の重要なパフォーマンス映像をYouTubeにて公開した。Tiny Desk Concertの映像を再生した瞬間から、彼女の歌声には崇高なサウンドスケープを描くことのできる魅力や、円熟した大人の品格でオーディエンスを奮い立たせる強さがあることがわかるだろう。THE LATE SHOWの新曲「Dang」のパフォーマンスでは、コメディになりかねないフォーマットの中に(まるで教授による授業、もしくはビジネスパーソンのプレゼンテーションのよう)、目の動きから指先まで計算尽くした(でも隙を残しているようにも見せる)一つひとつの動作と、ユーモアとシリアスの境界線を溶かしたエッセンスを組み込んで、誰も見たことのないポップアートを作り上げている。キャロライン・ポラチェックによる、ライブにおける斬新な発想力と魅惑的な身体表現を見ることのできる映像作品だ。

キャロライン・ポラチェックのライブは、アーティストたちからも賞賛される。そもそもビヨンセやトラヴィス・スコットに曲を提供するほどプロデューサー/ソングライターとして活躍する存在であるが、ライブアーティストとしても、過去にデュア・リパやThe 1975からツアーのサポートに任命された実績がある上に、オリヴィア・ロドリゴからも「最高のライブシンガーね」と言葉を受けている。ここ日本でも、SIRUPがフジロックのアクトを振り返る際、真っ先に名前を挙げていたのがキャロライン・ポラチェックだった。

1歳から6歳まで日本で過ごし、日本のアニメソングやシティポップからの影響も公言、さらにチェアリフト時代には日本語バージョンの楽曲も発表していたキャロライン・ポラチェック。フジロックのステージ上では感極まって涙をこぼしていたが、初の単独来日公演は彼女にとってさらに意義深いものになるだろう。そして、このライブに影響を受けたアーティスト/クリエイターから新しい表現が生まれるなど、日本のオーディエンス、ひいては日本の音楽/アートシーンにとっても意義深いものになるはずだ。

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