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ニルヴァーナのベーシストであるクリス・ノヴォゼリックは『NME』に対して『イン・ユーテロ』の30周年記念盤についてAIで昔の音源を修復したことや残ったメンバーで新曲をリリースする可能性などについて語っている。

ニルヴァーナの最後のアルバムとなった通算3作目の『イン・ユーテロ』はちょうど30年前の1993年9月21日にリリースされており、その7ヶ月後にカート・コバーンが自ら命を断ったことで遺作となっている。スティーヴ・アルビニがプロデュースした本作には“All Apologies”、“Heart Shaped Box”、“Rape Me”といった楽曲が収録され、前作『ネヴァーマインド』が一大現象と言える成功を収めた後にもかかわらず、無慈悲で妥協のない回答として後世に多くの影響を与えることとなっている。

「聴いていると、どこかに連れて行かれるんだ」とクリス・ノヴォゼリックは色褪せない『イン・ユーテロ』の魅力について語っている。「暗くて、美しく、その間のあらゆるものがある」

「切なさもある。1週間くらいでレコーディングして、ファースト・テイクが使われている曲もいくつかある。かなりリハーサルをやっていて、一緒に演奏するのが大好きだったから、バンドとしてまとまっていた。ライヴをやって、ライヴを収録したんだ」

クリス・ノヴォゼリックは次のように続けている。「3人と楽器だけでこんなことができたんだから素晴らしいよね。想像を掻き立てるようなサウンドにすることができた。それが音楽のいいところだよね。人々を引き込んで、キレイな作品にもダークな作品にもすることができる。このアルバムの話に戻ると、グループとしての人柄が滲み出ていると思う。それまでとは違ういろんな見解があるからね。それがここでは聴ける。世界的に有名になった『ネヴァーマインド』以降のニルヴァーナだよ」

先日、スティーヴ・アルビニは『NME』のインタヴューで『イン・ユーテロ』の自分はプロデューサーというよりも「エンジニア」であり、カート・コバーンがいかに彼のバンドであるビッグ・ブラックのファンだったかについて振り返っていた。

スティーヴ・アルビニと仕事をしたこと、ならびにアルバムのサウンドについて尋ねると、クリス・ノヴォゼリックは次のように語っている。「カートはスティーヴ・アルビニのファンだった。1989年にツアーのヴァンに乗っている時にカートはピクシーズを聴いていて、親指を上げて、『俺たちのスネアもこういうサウンドにしたいな』と言っていたのを覚えている。ずっとスティーヴ・アルビニとやりたかったんだよ」

「有名になると変わっていかなきゃいけないことというのがあって、それが誰しも難しいわけだけど、カートは前面に出て、注目を浴びることになった。歌詞については解釈の余地を残しておきたいからコメントしないけど、聴いて自分なりに考えてみてほしい。“Radio Friendly Unit Shifter”なんかは気の利いたもので、すべてを物語っている。僕らはレコード契約を結んで、期待をしていたところがあったんだ」

クリス・ノヴォゼリックは次のように続けている。「アルバムを作った後に起きたことというのはすごかったけれど、バンドに戻るしかないんだよね。ドラムとベースとギターとヴォーカルというコンセプトが発明されたのは本当に素敵なことで、このアルバムはそれを自分たちなりにやってみたんだ」

先日、『イン・ユーテロ』はローマ、シアトル、ロサンゼルスの公演で収録された後期のライヴ音源を追加して30周年記念盤がリリースされることが発表されている。スーパー・デラックス・エディションに収録される72トラックのうち53トラックが未発表音源となっている。

「ザ・フーの『ライヴ・アット・リーズ』みたいにバックステージ・パスや手に取れる小物など、素敵なものがたくさん入っているんだ」とクリス・ノヴォゼリックは語っている。「ライヴ音源が入ることになったのも嬉しいね。というのも、AIを使ったんだ。ローマ、シアトル、ロサンゼルス公演のサウンドボードからのデジタル音源を使って、AIで楽器を分離できたから、素晴らしいミックスにすることができたんだ」

ザ・ビートルズが「最後の音源」でやっているようにニルヴァーナの未発表音源にAIを使うことは考えているのだろうか?

「いいアイディアだね。今日、君と話せてよかったよ。興味深いね」とクリス・ノヴォゼリックは答えている。「それをデイヴ・グロールとパット・スメアにも訊いてみることにするよ。ザ・ビートルズの新曲を聴くのが待ちきれないね。だって、ザ・ビートルズだからね。ザ・ビートルズの新曲なんて聴いてみたいよ。AIの力を借りれば、今じゃそんなことになるんだからね」

完成させられそうな未発表のデモやスケッチの音源は存在しているのでしょうか?

「それは分からない。話を始めないとね。でも、いいアイディアだよ。あるかもしれない。『これがAIによるニルヴァーナなのか?』なんてことになるかもしれない。既にYouTubeにはそうしたものがあるよね。著作権とか虚偽の問題とかは議論が進んでいる。『2001年宇宙の旅』みたいだよね。『やってはいけない!』ってね」

クリス・ノヴォゼリックは次のように続けている。「カートはもういないから、すべてが然るべき形にしなきゃならないんだ」

ニルヴァーナが『イン・ユーテロ』の後にどんなサウンドに向かっていたと思うかと尋ねると、クリス・ノヴォゼリックは「考えてみることしかできない」と答えている。

「分からないよ。最後にレコーディングしたのは“You Know You’re Right”で、あの曲はニルヴァーナだった」と彼は語っている。「全部がジャムで、クレッシェンドで盛り上がっていって、大きなコーラスが待ち受けている。でも、答えるのが難しい質問だよ。デイヴ・グロールはフー・ファイターズをやり、成功を収めて、トーチを受け継いでいる。僕もサウンドガーデンのマットとキムと共にサード・シークレットというバンドをやっている。僕らはグランジのABBAみたいな感じなんだ」

「もしカートがあの時、踏みとどまっていれば、分かっていたんだろうけどね。彼がこの世にいれば、大きく違っていただろうし、重要なのはそれだけだよね。惜しまれるけど、思い描くことしかできないんだ」

30年が経ってクラシック・ロックのように見られることを認めつつも、クリス・ノヴォゼリックはニルヴァーナがなお若い世代のロック・ファンにアピールしていることに言及している。

「カート・コバーンと彼の激しさ、そして彼の歌い方、ヴォーカル・スタイルには何かがあるんだと思う」と彼は語っている。「“Milk It”を人に聴かせたら『別世界だ』と言われたのを覚えている。激しくて、スカンジナヴィア半島のメタル・バンドにも匹敵する。衝撃を覚えるだろうね。ヤバいという言い方が一番しっくりくるよ」

クリス・ノヴォゼリックは次のように続けている。「『ニルヴァーナに人生を救われた』と今も言われるけど、それは僕も分かるんだ。自分にとってそれはフリッパーだった。一度ハマったら、すごく重要なものになったんだ」

「カートのことを忘れずに、彼に称賛を送りたい。アーティストとして意見を表明するということは人々を招き入れ、受け入れ続けてもらうということになる。新しい世代でも、特につらい状況を経験した人たちがニルヴァーナに繋がりを覚えるんだ」

クリス・ノヴォゼリックとデイヴ・グロール、パット・スメアはカート・コバーンの死後も何度か共演している。最もよく知られているのは2014年のロックの殿堂入りの式典で、ロードやセイント・ヴィンセントらと共演を果たしている。2012年にはポール・マッカートニーと“Cut Me Some Slack”をレコーディングしており、2018年のカル・ジャムにも出演し、2020年にはベックとデイヴ・グロールの娘であるヴァイオレットと共演している。

ニルヴァーナの存命中のメンバーで再結成することはあるかと尋ねると、クリス・ノヴォゼリックは次のように答えている。「常にやりたいよ。カートが亡くなった後は『もう二度とあれらの曲は演奏しない』という時期もあった。自分の抱えた悲しみの一部だったんだ。やり過ぎはよくないけど、感謝の気持ちを忘れないように特別なものにしたいよね」

「機会があって、間違ってないと思えば、やることにするよ。それまではカートのことを忘れずに、自分のことをやるだけだね」

新曲をリリースするということもあり得るのでしょうか?

「ああ。いくつか音源はあるんだ。デイヴ・グロールが既に口を滑らせていてね。彼にそのことを問い詰めてみたいね。『俺たちのやったジャムはどうするんだ? あれをどうしたいんだ?』ってね。思い出させてくれて、ありがとう。こっちも素晴らしいアイディアだったよ」

ニルヴァーナは『イン・ユーテロ』の30周年記念盤が10月27日にリリースされる。

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