ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスは1967年8月18日にハリウッド・ボウルで収録されたライヴ音源『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル1967』が各種フォーマットで11月10日にリリースされることが決定している。
このアルバムに収められたパフォーマンスは、エクスペリエンスのデビュー・アルバム『アー・ユー・エクスペリエンスト?』の全米リリースのわずか5日前に行なわれたコンサートをライヴ録音したもので、ジミ・ヘンドリックスと彼のバンドをほとんど知らないオーディエンスの前に立たざるを得なかった時期の「ほぼ最後のコンサート」とプレス・リリースでは評されている。観客はヘッドライナーのザ・ママス&ザ・パパスを観に来た人たちで、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスはオープニング・アクトを務めている。
リリース発表に伴って、アルバムからは“Killing Floor”の音源が公開されている。
ポール・マッカートニーやエタ・ジェイムスのもとでギタリストとして働いてきたブライアン・レイもこの日会場にいた一人で、「その日の観客が楽しみにしていたのはザ・ママス&ザ・パパスだった」と振り返っている。「ジミ・ヘンドリックスの曲は聴いていなかったし、彼の存在すら知らなかった。しかも、アーティストとしての彼の立ち位置はザ・ママス&ザ・パパスとはまったく異なっていた。伝えようとしていることも、身体が表現することも、すべての面で正反対だった。男がステージ登場してくる。バンドは3人だけで、彼らは全員アフロヘアー。ワイルドで、キラキラとした印象の、シアトリカルな衣装を身にまとっている。ジミが空気を切り裂くような音を弾く。大音量だけど、音楽的にも素晴らしい。そして彼は、フィジカルな表現を打ち出していく。股の下や背中でギターを弾き、口でも弾いてしまう。床に膝をつき、まるでギターと交わるような動きを見せる。頭を一撃された感じだったよ」
ブライアン・レイは次のように続けている。「なんというか、彼は人間の本能のすべてを表現している、そんな印象だった。美しくて、優雅で、セクシュアルで、暴力性と優しさが混在していた。一人の男を中心にしたバンドが、そのすべてを表現していたんだ。でも、オーディエンスの誰もが僕と同じように受け止めていたわけじゃない。僕と妹は『やられた!』って感じだったけれど、大半は、ちょっと拍手しただけ。なんとか理解しようとしていたんだろう」
シアトル生まれのジミ・ヘンドリックスは1966年9月にロンドンに渡り、そこで、イギリス人ミュージシャンであるミッチ・ミッチェルをドラムス、ノエル・レディングをベースのリズム・セクションに迎えエクスペリエンスを結成している。そしてこの新バンドは、わずかな時間で大きな成功を手にする。シングル3曲がトップ10圏内に入り、ポール・マッカートニー、エリック・クラプトン、ジェフ・ベックといった大物たちからも絶賛されることになった。イギリスでのこういった盛り上がりが、リプリーズ・レコードのチーフだったモ・オースティンの耳に届き、1967年3月には、ヘンドリックスの作品がアメリカでもリリースされることが決まる。そしてその3ヶ月後となる67年6月、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスは、ポール・マッカートニーからの熱心な推薦もあって、モンタレー・ポップ・フェスティバルのステージで、衝撃的なデビューを果たしている。しかし、短時間で手にしたイギリスでの成功がすぐにアメリカでも再現されることはなかった。たとえば、最初の2枚のシングルは不発に終わっている。そんな時にザ・ママス&ザ・パパスの中心メンバーで、モンタレー・ポップ・フェスティバルの共同プロデューサーでもあったジョン・フィリップスが、8月18日にハリウッド・ボウルで開催されるコンサートでオープニング・アクトを務めてほしいと、声をかけたという。
ザ・ママス&ザ・パパスの唯一の生存メンバーであるミッシェル・フィリップスもモンタレー・ポップ・フェティバルで初めてエクスペリエンスを観たという。「どんな演奏をする人なのか、想像もできなかった。だから、ライヴを観て、本当に驚いたの。あんなもの、目にしたことがなかったから。大切な楽器にひどいことをする人なんて、私たちの周りにはいなかったけれど、彼はギターにライターのオイルをかけて、火をつけたのよ。とにかく衝撃だった。ロックの人たちのシアトリカルなパフォーマンスは経験がなくて、実際に目にしたのも、あのときが初めてだった」
今回リリースされる『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル 1967』 は長くジミ・ヘンドリクスのレコーディング・エンジニアを務めたエディ・クレイマーが新たに発見された音源を修復し、グラミー賞受賞3回のクリエイター、バーニー・グランドマンがマスタリング・エンジニアを務めている。
ブックレットに掲載される写真はエド・カレフ、ヘンリー・ディルツ、アレン・デイヴォウらが当日撮影したもので、いずれも未発表となる。ライヴ・パフォーマンスだけでなく、バンドのメンバーがザ・ママス&ザ・パパスや、シーン・メイカーだったロドニー・ビンゲンハイマー、マネージャーのチャス・チャンドラーらと語り合う様子も収められる。
リリースの詳細は以下の通り。
ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス
『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル 1967』
THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE Hollywood Bowl August 18, 1967
2023年11月10日世界同時発売
英文解説の完全翻訳・歌詞・対訳付
SICP6552/定価:¥2,640(税込)
1.イントロダクション
2.サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
3.キリング・フロア
4.風の中のマリー
5.フォクシー・レディ
6.キャットフィッシュ・ブルース
7.ファイア
8.ライク・ア・ローリング・ストーン
9.紫のけむり
10.ワイルド・シング
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