リンキン・パークのブラッド・デルソンとマイク・シノダは『メテオラ』の20周年記念盤や未発表曲“Lost”、さらに過去の音源を聴くことができる可能性について『NME』に語っている。
リンキン・パークは2003年発表のセカンド・アルバム『メテオラ』の20周年盤を4月7日にリリースしており、未発表のデモ音源や舞台裏映像、ライヴ映像などが収録されている。
「僕らは『メテオラ』で不朽のものを作りたかった。20歳そこそこの連中が言ったり考えたりするにしては恐れ知らずだけどね」とギタリストのブラッド・デルソンは語っている。「音楽が長い寿命を持ち、影響を与え続けることが願いだったんだ」
ブラッド・デルソンは次のように続けている。「自分たちとしては今というのは面白い時なんだ。特別なアルバムが20周年を迎え、“Lost”を作って、気に入ったけど、忘れてしまって、こんな瞬間を迎えているんだからね」
“Lost”という曲名にふさわしく、この曲は『メテオラ』と同時期にレコーディングされたが、アルバムでの「居場所が見つけられず」、最終的には収録されなかった。
「アルバムの物語について語ると、“Lost”には“Numb”と似たようなエネルギーがあるんだよね」とブラッド・デルソンは語っている。当初の予定ではアルバムからしばらくしてリリースするか、サード・アルバムのボーナストラックとしてリリースすることを考えていたという。
「2007年発表の『ミニッツ・トゥ・ミッドナイト』で僕らは大きな方向転換をして、前の作品から大きな変化を遂げたから、『5年前は何をやっていたっけ?』と考えたりもしなかった。それで、文字通り“Lost”については忘れてしまったんだ」
“Lost”は『メテオラ』の20周年記念盤をまとめている時に再発見されて、今年2月にリリースされている。UKでは“Lost”は2009年以来の高順位をシングル・チャートで獲得し、アメリカではオルタナティヴ・ラジオとロック・ラジオのチャートで首位に立っている。
「みんながどう反応するか分からなかったよ」とマイク・シノダは語っている。デペッシュ・モードやナイン・インチ・ネイルズ、80年代のニュー・ウェイヴの影響が顕著なため、“Lost”は逆行して聴こえるかもしれないと心配していたという。「若さゆえの戸惑いがあって、それが惹きつけるんだと思う」
リンキン・パークは2020年にもアニバーサリーを記念してデビュー・アルバム『ハイブリッド・セオリー』のデラックス・エディションをリリースしている。「(チェスター・ベニントンが亡くなってから)さらに時間が経ったから、今回のコレクションにはより祝祭感があって、明るい雰囲気があるんじゃないかな」とブラッド・デルソンは語っている。「『ハイブリッド・セオリー』の20周年盤はもっともっと生々しいものだった」
バンド・メンバーによれば、『メテオラ』のレコーディングは前作『ハイブリッド・セオリー』とは随分違っていたという。
「『ハイブリッド・セオリー』でスタジオにいた時は大変だった。レーベルは必ずしも僕らのことを信頼していなかったからね」とマイク・シノダは語っている。「すべてのことに口を出してきて、すごく混沌としたネガティヴな体験になった」
マイク・シノダは次のように続けている。「『メテオラ』の時はいいかどうか、そんなにナーヴァスにならなかったと思う。よりよくなることを聞いたら、変えるためにできる限りのことをやっていたよ」
「最後に駆け込みでいろんなことを固めることになった。ファースト・シングルの“Somewhere I Belong”のマスタリングをやっている時にまだコーラスを変えようとしていた。カオスだったね。アルバムをまとめることに夢中だったし、ドキドキしていたし、不安も感じていた」
ブラッド・デルソンは「多くの人が『メテオラ』を『ハイブリッド・セオリー2』だと言うくらい最初の2枚のアルバムには繋がりがあった」としながらも「セカンド・アルバムは大きな変化をしたいという自分たちの思いの伏線だった」と述べている。
マイク・シノダは次のように続けている。「当時の非常にアグレッシヴなマッチョなサウンドには共感できなかったよ。『ハイブリッド・セオリー』のツアーをしていた時、フェスティバルにたくさん出たけど、マイクで自分の頭を殴って血を出すようなバンドがいた。自己顕示欲が強くて、クレイジーであることを証明しようとするような人たちがいたんだ。そうしたものを経験して、すぐにあれは自分たちじゃないなと分かったね」
マイク・シノダは次のように語っている。「『メテオラ』やその後のアルバムを作っている時、それは内省、実験、魂の探求の期間だった。自分たちがどんな人間であるかを問うだけでなく、クリエイティヴ面でどんなステートメントを出したいかを問いかけていたんだ」
ブラッド・デルソンは当時のリンキン・パークは「正直で、ダイレクトで、傷つきやすい」側面に興味があったと語っている。
「傷つきやすさというのはラウドでカタルシスを伴うものでもあるし、やさしく繊細なものでもある。“Lost”はその両方の側面が最高の形で出ている。チェスターはヴァースでやさしく聴き手を引き込みながら、コーラスではパワーで圧倒してしまうんだ。僕らの音楽にはそうした二律背反がたくさんあって、それが興味深いものにしてくれている。予測可能だと楽しくないからね」
『ハイブリッド・セオリー』がガンズ・アンド・ローゼズの『アペタイト・フォー・ディストラクション』以来、最も売れたデビュー・アルバムとなり、21世紀で最も売れた1枚になるなか、『メテオラ』はリンキン・パークの成功がまぐれではないことを証明する長い道のりの始まりだった。
「『メテオラ』を出してすぐに自分たちの信念としては前進することだけだった」とマイク・シノダは語っている。「『ハイブリッド・セオリー』のバンドで片付けられたくなかった。10年以上にわたって懸命に闘ってきた。あのアルバムを好きなファンと僕らの間には軋轢もあったと思う。ああいうサウンドから離れて、別のスタイルを探ることになった。それが合わなかった人たちも確かにいたね」
マイク・シノダは次のように続けている。「自分たちには『ハイブリッド・セオリー』の上に積み上げていくことが重要なことだった。“Faint”や“Somewhere I Belong”で聴けるループされるエレメントに重点を置いたんだけど、“Breaking The Habit”は大きな啓示を受けた瞬間だったんだ。ヘヴィなギターも、スクリームもない。大半はストリングスとピアノ、プログラムされたドラムでできている。『メテオラ』は違ったものを試すドアを開けてくれたんだ」
昨年、リンキン・パークはサード・アルバム『ミニッツ・トゥ・ミッドナイト』の15周年バージョンをストリーミングでリリースしている。しかし、ブラッド・デルソンは『ハイブリッド・セオリー』や『メテオラ』の20周年盤とは違うものだと考えているという。
「『ハイブリッド・セオリー』や『メテオラ』の20周年盤はアルバム全体の体験を祝福するものなんだ」とブラッド・デルソンは説明して、リンキン・パークの未発表音源をまだ聴けるチャンスはあると語っている。
「僕らのバンドはキャリアを進めていく中でどんどん曲の書き方が奇抜になっていたんだ」とブラッド・デルソンは続けている。「みんなに1曲を聴かせるために120のトラックを作ったこともあった。日の目を見ていないものがたくさんあって、聴いてもらうものへの道を作るために倒れていったものもたくさんあるんだ」
「でも、最高のものと同じくらい特別なものになるのは非常に稀なことだからね。“Lost”ほどの曲があるかは分からない。でも、あるんじゃないかな。僕らはやってきた中でたくさんの曲を作ってきたからね」
リンキン・パークのリリースと合わせてマイク・シノダは映画『スクリーム6』のサウンドトラックにも参加している。デミ・ロヴァートの“Still Alive”を共同作曲/プロデュースしているほか、ケイリー・モーグとのコラボレーションとなるソロ曲“In My Head”も提供しているが、マイク・シノダは『メテオラ』の20周年盤をまとめた影響が新曲にはあると語っている。
「生楽器を演奏することの楽しさを改めて思い出したんだ」とマイク・シノダは語っている。「リンキン・パークと一緒にスタジオで作っていた時からだいぶ経ったから、『そうだ。生の楽器で実験してみるという要素もありだな。しばらくやっていなかった』と思ったんだ。去年の年末に『メテオラ』を仕上げていたら、『スクリーム6』用の2曲も一緒に生まれたんだ」
マイク・シノダはソロ・デビュー・アルバム『ポスト・トラウマティック』を2018年にリリースしており、その後もシングルやEPをリリースしているが、ここ数年は他のアーティストへの作曲やプロデュースも行っている。
「最終的にどうなるかを考えずに曲を作るのは変な感じなんだよね」とマイク・シノダは語っている。「リンキン・パークの曲を書く時は『これはリンキン・パークのアルバムに入るリンキン・パークの曲だ』と考えていた。デミ・ロヴァートに曲を書く時は彼女に見合ったものにしなければならないと思っていた。今は作りたいものを作っている。現時点ではそれがどうなるのか分からないけど、それは決めなくていいと思っている。ただ曲を作りたいだけなんだ」
“Lost”が成功を収め、リンキン・パークの楽曲が求められる状況だが、バンドは現時点で何もしていないという。
「それはクリエイティヴな機会が来たら、それを尊重するということなんだと思う」とブラッド・デルソンは語っている。「“Lost”を見つけたのも恥ずかしながら偶然の産物だったんだ。好きだからやっているという感じで、あまり計画性みたいなものはないんだよ。『いい感じだから使ってみよう』という感じで、オーガニックな調子で、いつもそうしてきた。常にいいクリエイティヴな機会がある時に最高の作品ができるんだよ」
リリースされてから20年が経ちますが、『メテオラ』が人々の心に響いているのはなぜでしょう?
「僕らにとって感情の面でユニークな時期だったと思う」とブラッド・デルソンは説明している。「僕らは若くて、自分自身を探している成長の最中だった。新たなアイデンティティ、新たな責任、新たなチャンス、新たな経験を手にしようとしていた。その怖さ、感謝、自信、不安、怒り、過剰さ、それが全部アルバムには入っている。そうした感情というのは常に通じるものなんだ」
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