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軍情報部第5課、通称MI5は調査によってマンチェスター・アリーナでのテロ事件を防げたかもしれない行動を起こす機会を逃したことが明らかになっている。

2017年5月22日にアリアナ・グランデのコンサート会場のホワイエで公演直後に自爆テロ犯のサルマン・アベディが爆発物を使ったこの事件では22人が亡くなり、数百人の人々が怪我を負っている。

207ページに及ぶ調査報告書ではサルマン・アベディに関する2件の情報について当時の担当者によってテロに関係ないと判断されたことが明らかになっているが、調査責任者のジョン・サンダースはMI5からの証言によれば、この部分で「正確な絵」が描かれていなかったとする見解があることを明らかにしている。

担当者の1人は情報の一部について国家安全保障上の緊急の懸念があると考えたが、すぐに同僚と議論せず、その日のうちに報告書を書かなかったことを認めている。

それを受けてジョン・サンダースは次のように語っている。「報告書の遅れによって重要な調査行動の可能性があった機会を逸してしまいました。担当者が知ったこと、もしくは知るべきだったことに基づいて、捜査活動というのは適切で正当な行動を取れると確信しています。そうでなければならないのです」

ジョン・サンダースはこの情報があれば、爆発物を保管していて、爆弾を完成させるために街中心部のアパートまでの移動に使った日産マイクラまでサルマン・アベディを尾行することができたかもしれないと語っている。

また、ジョン・サンダースはこの情報をMI5が把握していれば、事件前にリビアから帰ってきた時点でサルマン・アベディをマンチェスター空港で止められたかもしれないとも主張している。

調査では爆発犯はリビアにいる人物から援助を受けていたことが明らかになっており、サルマン・アベディと兄弟のハシェム以外に事件に関与している人物はいないというMI5の判断とは矛盾する結果ともなっている。

ジョン・サンダースは「詳細は知らないにしても爆弾の計画に関与している人物がいた可能性が高い」と述べている。しかし、今の証拠ではそれが誰かを特定することはできないという。

ジョン・サンダースのコメントはサルマン・アベディの過激化と事件を防ぐことが出来たかを検証する第3次最終報告書に掲載されている。

調査は3年以上前から始まり、267人の目撃者による194日間に及ぶ証拠供述が集められている。

https://manchesterarenainquiry.org.uk/

8歳の娘のサフィ・ローズを事件で亡くしたアンドリュー・ルーザスは報告書を受けて次のように述べている。「証言を聞いて、過失があったことを知っていましたが、この悲劇を避けられたかもしれないと聞いて、打ちひしがれています」

「これは致命的な失敗であり、すべての証拠から、担当者が爆発事件を起こさないようにするたくさんの機会があったことを知りました。私の見解としてはMI5があらゆる危険信号があったにもかかわらず、彼を阻止できなかったという事実は、彼らが私たちの安全を守るのに適しておらず、目的にも適さないということを示していると思います」

11人の遺族の代理人である主任弁護士のスレイター&ゴードン社のリチャード・スコアラーは「読むのも痛ましいですが、驚くべきものだ」と述べている。

「今回の事件を防ぐことができたかという問題については当然というべきか、報告書は私たちの求める情報よりも少ないものでした。しかし、サルマン・アベディに関する重要な情報を適切に評価することができなかったこと、それを適切な文脈に置き換えることができなかったこと、そして何よりも致命的なのは、それに基づく行動の遅れがあったことは今や明白です」

「この失敗の結果、事件を防ぐ現実的な可能性は失われました。これは私たちにとって衝撃的な結論です」

スエラ・ブラヴァーマン内務大臣もツイッターで報告書を受けて次のように述べている。「今日は大変な日です。愛された人々、人生を永遠に帰られてしまった人々にお悔やみを申し上げます」

「2017年5月22日、純粋に悪と言える行動によってマンチェスター・アリーナで22人の命が失われました。MI5や警察、協力者と共に提言について検討することに取り組んでいます。このような恐ろしい事件が繰り返されないように、できることはすべてするつもりです」

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