Danny Clinch

Photo: Danny Clinch

フー・ファイターズは2020年をこれまでのキャリアにヴィクトリー・ランを与える年にしようとしていた。25周年を迎えて、バンドはサウンドの次元を広げた通算10作目となるアルバムを完成させて、彼らは世界中のスタジアムを見据えようとしていた。

しかし、パンデミックを受けて、最高のプランは消え去ってしまった。今回、フー・ファイターズのヘッドクォーターのエンジンは再びうなり声を上げている。週末に『サタデー・ナイト・ライヴ』に出演したフー・ファイターズはニュー・シングル“Shame Shame”をリリースしている。焦土作戦とも言える大作は最も暗い部分を探求したものとなっている。この曲は来年リリースされる『メディスン・アット・ミッドナイト』からの最初に公開された楽曲となっている。

我々はデイヴ・グロールと簡単なインタヴューを行って、新作に期待できるもの、25周年のプラン、世界の終わりに対して常に抱えている恐怖、内なるデヴィッド・ボウイの解放について語ってもらった。

――やあ、デイヴ。あなたが最後にイギリスにやってきたのは2019年の夏、レディング&リーズ・フェスティバルでヘッドライナーを務めた時で、その時はクラブNMEでリック・アストリーとのパーティーを行ってくれました。あれはもう完全に一時代前のようですよね。

「あの頃はよかったよね。控えめに言っても奇妙な1年となったからね。2月にアルバムは仕上げたんだけど、ミックスをしてマスタリングをして、それで準備を進めていたんだけど、ツアーの日程は18ヶ月に及ぶもので、世界各地で25周年を祝福する予定だったんだ。世界征服のルーティンを実行に移す準備はできていたんだけど、すべてが止まってしまったんだ」

――あなたたちにとっては初めてのことですよね。

「バンド全体が別々の方向に動いていて、フー・ファイターズでこれだけ長く休みをとったのは生まれて初めてだった。レコーディングするにせよ、ツアーをするにせよ、ドキュメンタリーを作るにせよ、ずっと何かをやっていたからね。急停止したのはおかしな感じだった。でも、楽観主義者だから、休んでいる間も美しい瞬間がたくさんあったんだ。何よりもまず、みんなが家で、友人や家族が健康でいられるようにしたんだ」

――このタイミングで戻ってくることにしたのはなんでですか?

「長期間おとなしくして、月日が過ぎていく中でいつ音楽を人々に届けようかと考えていたんだけどさ。5〜6ヶ月が経って、通常のルーティンをもう適用させられないことが分かったんだ。今は誰もツアーをしてないけど、それでどうやって観客と繋がって、世に届けたいと思っている音楽をどうやって届けたらいいんだろうとなってね。数ヶ月前に俺たちはマシンを再稼働させて、今がその時だと決心したんだ。最も重要なことは人々に曲を聴いてもらうことでね。俺はライヴも大好きだし、フー・ファイターズにいることでつきまとうあれやこれやも好きだけど、これらの曲は聴いてもらうために作られたものだからね。今がその時だと思ったんだよ」

――『メディスン・アット・ミッドナイト』におけるテーマとして言えることは何でしょうか?

「10作目にして25周年だったから、数年前からフレッシュなことをやりたいと決めていたんだ。いろんなタイプのアルバムを作ってきたけど、アコースティックなものもやったし、パンク・ロックなものもやったし、ミドルテンポのアメリカーナもやった。いろんなものに寄ったアルバムを作ってきたけど、それで直感的にメロウな大人のアルバムを作る代わりに、『くだらねえ。パーティー・アルバムを作ろう』と思ったんだ」

――どんな感じのパーティーですか?

「俺たちの大好きなアルバムの多くみたいにビッグなグルーヴとリフがあるものだよ。ファンクやダンス・ミュージックとかとは呼びたくないんだけどさ。俺たちがこれまでやってきたものよりもいろんな意味でエネルギーに満ちたものとなっていて、土曜日の夜のパーティー・アルバムとしてデザインされているんだ。そこでかける用に書かれていて、曲も並べられているんだ。そして、9曲が終わった後、またかけたくなるんだよ。“Making A Fire”みたいな曲はスライ&ザ・ファミリー・ストーンのグルーヴがルーツとしてあって、それをフー・ファイターズとして鳴らしているんだよね」

――「自分たちなり」のものとなっているということでしょうか?

「“Waiting On A War”なんかはアルバムでも最もフー・ファイターズらしい曲だね。レコーディング・プロセスの半分ぐらいでできた曲なんだけど、70年代後半から80年代前半の政治的緊張感と軍事力争いの中で核戦争に向かうんじゃないかという子どもの頃に抱いていた恐怖感から来ているんだ。核爆弾のホロコーストで死ぬんじゃないかと怖かったんだ。去年、娘を学校に送っていったんだけど、当時はアメリカと北朝鮮の緊張感が高まっていて、娘もニュースで観たらしいんだよね」

「彼女が訊いてきたんだ。『パパ、戦争になるの?』ってね。それで彼女ぐらいの年齢の時に感じていたことを思い出して、『なんてくだらないんだ』と思ったんだ。恐怖という暗い感情によって子供時代にその美しさや無垢さが失われてしまうことがどれだけつらいことかってね。“Waiting On A War”はそういうことについての曲なんだ」

――ヘヴィな内容ですね。他の大きなサプライズはありますか?

「“Medicine At Midnight”という曲があるんだけど、これは俺たちなりのデヴィッド・ボウイの“Let’s Dance”なんだ。至るところでフェスティバルを始めるのを想像できる大きなロック・ソングなんだ。それぞれの曲はちょっとずつ違うんだけど、どれもフレッシュな感覚があってね。それが気に入っているんだ」

――今のライヴの状況においてフー・ファイターズはソーシャル・ディスタンスをとったライヴを行う予定ですか?

「なによりも俺たちの最大の関心事はみんなの健康なんだ。観客を入れる形のライヴにすぐに出るつもりはないよ。俺たちはバンドを観に来てくれる人のことが心配だからね。だから、みんなが健康でいられるようになるまではオーディエンスと繋がる新たな方法を探して、それを採用していくことになるよ。俺たちのバンドはなによりライヴ・パフォーマンスに根ざしているんだ。アルバムを作るのとか、このバンドににいることでつきまとうあれやこれやも好きだけど、ステージこそが本当に輝く場所なんだ。無事にできるようになるまで、リハーサル・ルームでやらなきゃならないよね」

――それって苛立ちますよね?

「正直に言うと、6〜7ヶ月そこから離れて、みんなと会わず、楽器を膝に乗せて、リハーサル場所で誰に対してでもなく演奏するのも素晴らしい気分なんだ。でも、戻って、観客に対してステージに上がるようになったら、最高のライヴになる、過去最高の気持ちになるんだと思うよ」

フー・ファイターズはニュー・アルバム『メディスン・アット・ミッドナイト』を2月5日にリリースする。

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