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U2やザ・ローリング・ストーンズなどとの仕事で知られるスティーヴ・リリーホワイトがLUNA SEAの新作『CROSS』の共同プロデュースを手掛けたことを受けて、ここではスティーヴ・リリーホワイトとSUGIZO(Gt/Violin)の対談をお送りする。スティーヴ・リリーホワイトと言えば、U2の初期3作『ボーイ』、『アイリッシュ・オクトーバー』、『WAR(闘)』をはじめ、『ピーター・ガブリエル III』、デイヴ・マシューズ・バンドの諸作など、数々のヒット作を手掛け、グラミー賞も5度受賞している名プロデューサーだが、その手腕はLUNA SEAが結成30周年のメモリアル・イヤーにリリースした通算10作目のニュー・アルバム『CROSS』でも発揮されている。視界が広がっていくような広大なサウンドスケープ、重心を低く置いたリズム隊にギターが左右に広がることで生まれる3次元のスペース、そのサウンドは一聴しただけで世界基準となっていることが分かる。今回のプロデュースがどうやって実現したのかをはじめ、貴重な秘話まで、様々な話を2人にうかがってきた。

――元々、スティーヴさんはLUNA SEAのライヴを観にきていたとうかがったんですが、LUNA SEAとの交流というのはどういうところから始まったんですか?

スティーヴ・リリーホワイト「僕が最初に会ったのはINORANだった。僕はかなり図々しくてね。INORANは自身のソロ・アルバムを僕に手がけてほしがっていたけど、僕は『もっとすごい仕事があるのに、なぜこれだけをやらないといけないんだ?』と言った(笑)。それで、僕は待ったんだ。INORANのことは大好きだし、彼は素晴らしいギタリストだけど、バンドにおける各人の仕事がとても強力なものを見たいんだ。LUNA SEAではメンバー全員が完璧だと思っている」

スティーヴ・リリーホワイト「というわけで、僕はINORANと友だちになったけど、LUNA SEAのアルバムを手がけることになると、『彼らのプレイをライヴで観ないといけない!』と思ったんだ。エナジーを見るのが僕にとってはとても大切なことだからだよ。スタジオではアーティストは常に考えているけど、ライヴではアーティストは考えていない。パフォーマンスしている。その場で我を忘れるんだ。だから、彼らのライヴを観に行った時、『素晴らしい!』と思ったね。というわけで、最初は彼らのライヴを観て、それから話ができた。彼らが曲を送ってきたんで、僕はアイディアを送り返した。そして、僕はレコーディングの直前にまた日本に行って、重要なミーティングを行った。すべての曲をチェックして、『これはいい』『これは良くない』と言った。『スローな曲が多すぎるから、これは外す必要がある』とかね。それは曲の出来が悪いからではなく、アルバム全体にしっくり合わなかったからでね。僕はいまだにアルバムを信じている。大勢の人がストリーミングをして曲単位で聴いてることは知っているけど、僕にとってはアルバムがいまだに素晴らしいんだよ」

SUGIZO「ちょっと補足すると、今の話の中ではすごくタイムラグがあって(笑)。最初にライヴを見てくれたのは3年前のさいたまスーパーアリーナなんです」

――なるほど。

SUGIZO「今、彼が言ったビッグ・ミーティングってのはこの前(2019年5~6月)の武道館ですね。その間に2年半くらいのブランクがあって。で、最初にライヴを観てくれて、すごく意気投合して一緒にやりましょうってなってから、何度か僕とINORANはスティーヴの住んでいるジャカルタに行って、打ち合わせやいろいろコンセンサスを深める行動をしながら、実はこの前の武道館ではすでにレコーディングは多少始まっていて、すでに“宇宙の詩”と“悲壮美”はできていた。さあ、これからアルバムをどうしましょうかっていう打ち合わせを初めて5人とスティーヴとライブ直後の武道館でやったんですね。そこにサウンドシステムを持ってきて、2時間くらいのミーティングをして、そこでこのアルバムの骨子がかなり固まったんです」

――LUNA SEAは日本でもすごく人気のあるバンドなんですけれども、プロデュースを手掛けるというのにはスティーヴさんにとっても決意が必要だったんじゃないですか?

スティーヴ・リリーホワイト「自分がいい仕事が出来ることをわかっていないといけないよね。たくさんの大物バンドから依頼があるけど、目を閉じて彼らを聴いてみると『ダメだ、いい仕事ができない』と思うことがある。だから、日本に来て、目を閉じて彼らのライヴを聴いたんだけど、『イエス、これならいい仕事ができる!』と思ったんだ。でも、それは大物バンドだろうが、小さなバンドだろうが関係ない。肝心なのは『僕に自分の仕事ができるのか?』なんだ」

スティーヴ・リリーホワイト「素晴らしいエピソードを教えてあげよう。ロサンゼルスに行って、ガンズ・アンド・ローゼズに会った時のことなんだけどさ。驚くことに、僕はガンズ・アンド・ローゼズと一晩過ごさねばならない!ということになってね。それで、僕たちはスタジオに行った。『チャイニーズ・デモクラシー』の前のことだった。僕がこの話をする理由は最後にわかる。『チャイニーズ・デモクラシー』がリリースされる5年前のことだよ。僕がスタジオに行って、『何曲か聴かせてくれ』と言ったんで、アクセルは何曲か聴かせてくれた。いい感じだったけど、歌が入っていなかった。バッキング・トラックだけだった。それで、僕がアクセルに『歌の入ったものはないのかな?』と訊くと、彼は『1曲ある』と言ってかけてくれてね。そこで、僕は(小声で)『アクセル・ローズの声が好きじゃない』と思ったんだ(笑)。でも、そのことは忘れて、ホテルに戻った。翌日、電話が鳴った。『ハーイ、スティーヴ』。ガンズ・アンド・ローゼズのマネージャーだった。『アクセルが君は素晴らしいんで、ガンズ・アンド・ローゼズのアルバムのプロデュースをぜひとも手がけてほしいと言っている』と言われたけど、僕は『申し訳ないけど、僕にはできない』と言った。理由は彼らに言わなかったけど、『僕は君たちにふさわしくない』と言ったんだ。僕にはふさわしくないけど、彼らにはふさわしくないわけではないからね。僕がこの話を君にしているのは、そして書きたければ書いてもいいけど、米『ローリング・ストーン』誌で『アクセル・ローズ、スティーヴ・リリーホワイトの申し出を断る』とあったからなんだ。彼らが何も言わなかったら、僕だって何も言わなかったさ! でも、僕は真実を語っている。彼は、自分が僕に対してノーと言ったという話にしたんだけど、実は僕が彼に対してノーと言ったんだ。LUNA SEAとは何の関係もない話で、申し訳ないけどさ(笑)」

――貴重なお話をありがとうございます。

スティーヴ・リリーホワイト「彼はとてもいい人だったよ。ただ、僕には彼の声が響かなかったんだ。続けてくれ」

――貴重なお話ついでにうかがいたいのですが、スティーヴさんは元々LUNA SEAのサウンドに苦手なところもあったと聞きました。それはどのようなところだったのでしょう?

スティーヴ・リリーホワイト「おかしなことに歌だったんだ。聴いてみたところ、以前のレコーディングの中には歌に合っていないミックスがあった。だから、ライヴを観る必要があったんだ。そしてライヴを観て、これならいい仕事ができることを理解したんだよ。でも、以前の音源のミキシングを聴くと、僕にはいまいちしっくりこなかった。あと、日本語のアクセントがこれまでと違っていた。でもね、僕はいつもこう思っているんだ。シガー・ロスというバンドを知っているよね? みんなシガー・ロスが大好きだよね。シガー・ロスなら僕もプロデュースできる。問題ない。シガー・ロスは意味のない言葉で歌っているからだ。みんな、彼らが母国語のアイスランド語で歌っていると思っているけど、違うんだ。彼らは意味のある言葉を使っていない。あれは彼ら独自の言語なんだ。僕は日本語でも大丈夫。純粋な音だからね。音を扱うのが僕の仕事なんだ。僕には聴いた音が見えるんだよ。変だけど、君(SUGIZO)もそうだろう? ミュージシャンには音が聞こえると同時に見えるんだ。今時はプレイするよりも文字通りスクリーンで音を見ているミュージシャンが多すぎるけど、それはまた別の話だ(笑)。切り貼り、切り貼り、切り貼りしているけどね(笑)」

SUGIZO「あのRYUICHI特有のビブラートの癖がスティーヴはあんまり好きじゃなくて、それを直せないかっていう話になったんです、最初ね。あれがまあ日本的なんですけどね。でも、それをライヴで観たときは、非常に良いじゃないかという話になったんです」

スティーヴ・リリーホワイト「そうそうそう。あれはとても日本的なスタイルなんだよね。今はとても気に入っているよ! とてもいい。彼は素晴らしいシンガーだ。でも、このアルバムではドラムが最高だと思う。ドラムがものすごくエキサイティングなんだよ」

SUGIZO「真矢はあなたのスタイルでトライしましたよね。レコーディングの時、基本的にクラッシュやシンバルは使わなかったですからね。最初はそうしたがりませんでしたけどね。『どうしてそんなことしないといけないんだ!』ってね(笑)。でも、僕やINORANと話し合った結果、真矢は『僕たちにはスティーヴのサウンドが本当に必要なんで、彼がそう勧めるんだったらそれをやってみるべきだ』と言ってくれたんです」

スティーヴ・リリーホワイト「僕が関わることで、バンドのメンバー全員が『スティーヴを感心させなくちゃ』と思ってくれたんだ。これまでは自分たちさえ感心させれば良かったけど、今回は外部の人間がいたのがよかったんだな。だから、彼らが僕を信頼してくれたことを、僕はとても誇りに思っている。でも、僕が信頼を勝ち取ったのは最初に1〜2曲やったからで、そこですぐに『これで、どういう音を出せばいいかわかった!』と彼らは分かったんだ」

SUGIZO「そう。僕らは約30年間、完全に自分たちだけで作ってきたんですね。それで、30年も経てば、ある意味ベテランの域に入ってきたわけですけど、ここでベテランとして自分たちのやり方だけで終わってしまうのがすごくイヤだったんですよね。だから、ともすれば僕らはもう音楽のマスター・クラスになれるとも思うけど、まだまだ弟子・生徒でいたかった。なので自分たちよりはるかにレベルの高い誰かであれば、僕らは音楽をその人に委ねたいと思ったんです。実は数年前からそういう気持ちがあったんです。だけど、日本のプロデューサーではそういう人が見つからなかったんですね。だから、今となっては世界的なスティーヴだから、僕らは任せることができたし、スティーヴでなければいけなかったんです」

スティーヴ・リリーホワイト「ありがとう、光栄だよ」

SUGIZO「とても嬉しく思っています。僕らは長年いい師を探していましたから。サウンドを教えてくれる師を」

――実際にレコーディングが始まって、いろいろバンドにとっても新しいところがあったと思うんですけど、SUGIZOさんにとってはどういったところが新鮮でした?

SUGIZO「今まではもちろん、アイディアにつまったら自分でひねり出すしかないわけで、いくつかの道に迷ったら時間をかけて自分で決めるしかなかったんですね。でも、今回は迷ったらすぐスティーヴに連絡することができた。どちらがいいと思う?と思ったら、録ったものをそのまま送って連絡する。すると、すぐにこっちがいいよって返ってくる。物を作ってるときって、必ずこれからどうしようかっていう路頭に迷うタイミングが多々あるんですよ。その重要なタイミングで常にスティーヴが道を示してくれたんですよね。そういう意味で自分の身を委ねるっていうのは初めてのことなので、それが逆にすごく心地よかった。頼れる人と一緒に作っているっていう感覚がとても心地よくて、すごく重要な経験でした。あと、スティーヴはもちろん世界最高のレコーディング・エンジニアですけれど、同時にアレンジャーとして素晴らしい。だから一緒に曲をいじっていける、一緒に曲を触ってくれるのがすごく楽しくて」

スティーヴ・リリーホワイト「このバンドにはJの曲、INORANの曲、SUGIZOの曲があったし、RYUICHIの曲が1曲あったけど、今では各人のスタイルの違いが本当に理解出来たよ。Jはハード・ロッカーだし、INORANはインディー・ロックだし、SUGIZOはプログレッシヴ・ロックだ(笑)。これらをすべてミックスすると、素晴らしいアルバムになる。面白いのは、僕のところに送られてくるSUGIZOの音楽はすべて完璧だということ。僕のところに送られてくるINORANの音楽は……(笑)。SUGIZOの曲よりもINORANの曲を手がけるほうがずっと難しかったんだ。SUGIZOの曲はとても整然としている。INORANの曲はあまり整然としていないけど、INORANの曲を手がけるのはとても楽しかった。でも、SUGIZOは取っ散らかってなくて、INORANが取っ散らかっていると言っても、U2はもっと取っ散らかっているからね(笑)。だから、INORANはまだマシなんだよ。でも、INORANの作業は楽しかった。違うだけなんだ。彼がレコーディングしたものは多かった。多すぎたんだな。だから、僕が取り除いたんだ。SUGIZOのはあるべきものがすべてそこにあったけど、INORANの場合は、もしも彼が送って来たものを僕がすべてミックスしていたら、とんでもないことになっていただろう。だから、いいものを選ばないといけなかったんだ。でも、それは素晴らしいことだった」

SUGIZO「あなたの言っていることはすごくよくわかります。僕が聴いても本能的なINORANの曲はいつもそうですから(笑)」

スティーヴ・リリーホワイト「僕がINORANの曲に対してすることを、君は自分の曲に対してしているんだよね。君は編集がとてもうまい」

SUGIZO「僕はオーケストラのように曲を作っているんです。クラシックのフィーリングがとても重要なんです。でも、INORANはまた全然違う。彼のフィーリングはとてもロックしているよね」

スティーヴ・リリーホワイト「そう。フィーリング、彼のハートはとてもいいんだ」

SUGIZO「Jの曲はとてもシンプルでハードなロックですよね」

スティーヴ・リリーホワイト「で、とてもキャッチーなんだ。サビがとてもいい」

SUGIZO「そして彼のリフがとてもいいです」

スティーヴ・リリーホワイト「ああ、とてもいい! とてもライヴ栄えする」

SUGIZO「僕には彼のようなリフのサウンドは書けませんよ」

スティーヴ・リリーホワイト「だから、LUNA SEAはこんなにいいんだ。異なるスタイルがあるから、すごくいいアルバムになるんだよ」

――実際にレコーディングのやりとりが始まってスティーヴさんはLUNA SEAのメンバーへの人間的な印象は変わりましたか?

スティーヴ・リリーホワイト「そうだね。僕は彼らのことを知らなかったけど、今は知っている。彼らと一緒に過ごすことはそんなにはないけど。今の僕はLUNA SEAをある意味、アニメのキャラクターのように捉えている。でも、これがまたいいんだ。そのおかげで素晴らしいバンドになるんだからね。INORANはインディー・ロック・キャラだし、Jはハード・ロック・キャラだし、SUGIZOはプログレッシヴ・キャラだ。フランク・シナトラ(RYUICHI)もいるしね(笑)。ラウンジ・シンガーだね。でも、素晴らしいよ。とてもいい。これは悪口じゃない。フランク・シナトラのようなんだ。素晴らしく素敵なメロディを歌う」

SUGIZO「彼のソロのスタイルはそんな感じなんです。彼はシナトラが好きですから。それに(エルヴィス・)コステロも大好きですしね。真矢はとても……」

スティーヴ・リリーホワイト「真矢は誰にでも合わせられる(笑)。ドラマーはそうあるべきなんだ。ドラマーはハード・ロックもやれば、インディー・ロックもやれば、プログレッシヴ・ロックもやれないといけない。誰にでも合わせられないといけないんだ。彼は曲を書いていないんで、それぞれの曲を彼なりのやり方で解釈している。だから、ドラマーはすべてをこなせないといけないんだ。このアルバムのドラミングは全曲において完璧だよ」

SUGIZO「彼はスティーヴのドラム・サウンドが本当に大好きなんです。『信じられない。こんな音を出せたのは初めてだ!』と言っていました」

――スティーヴさんは今までいろんなアーティストをプロデュースしていますが、LUNA SEAに近い雰囲気のアーティストっていますか?

スティーヴ・リリーホワイト「さっきも言ったように、僕はLUNA SEAの中に3つのバンドを見ている。プログレッシヴ・ロックが見えるし、ハード・ロックが見えるし、インディー・ロックが見える。この3つがフランク・シナトラと、なんでも叩けるドラマーによって統合されている。だから、U2が少し入っていると言えるだろうけど、デイヴ・マシューズ・バンドやフィッシュみたいなプログレッシヴ・ロックも少し入っていると思う。ハード・ロックはどれかなあ」

SUGIZO「ガンズ・アンド・ローゼズですか?(笑)」

スティーヴ・リリーホワイト「(笑)。いや、Jのことを考えているんだけどさ。僕にとってJの曲はハード・ロックで、僕がこれまであまり手がけてきたことのないものなんだよ。(Jの曲は)僕が手がけた最もハード・ロックした曲じゃないかな。普段、僕はハード・ロックの曲は手がけない。ブラック・サバスやディープ・パープルのような古いハード・ロックは大好きだけど、ああいうのはそんなにハードじゃないんだな。実は、かなりいいメロディーを奏でている。今のハード・ロックにはメロディーがない。僕はメロディーが大好きなんだ。だから、フランク・シナトラというのは最大の褒め言葉なんだよ。フランク・シナトラは素晴らしいメロディーを奏でているんだから。その意味で、Jの曲のサビはとってもポップだ。このアルバムにはポップなサビがある。アルバムにあるキャッチーなものと同じくらいね。というわけで、LUNA SEAには僕のキャリアのすべてが少しずつ入っているんだ。わかるよね」

――SUGIZOさんにとってスティーヴさんと仕事をしてみて、一番感心した、尊敬できるところってどういうところでしょう?

SUGIZO「間違いなく言えることは、スティーヴが送ってくれるミックスの音像が素晴らしいということですね。こんなの聴いたことない。LUNA SEAに魔法がかかって帰ってきたっていう感じがしました。特にリズムと声が。あれだけドラムがパワフルなのに(きちんと)分離している、各メンバーの楽器も本当に耳元で聴こえる。何よりRYUICHIの声が10歳若く聴こえる(笑)。どんな魔法をかけたらこうなるんだろうって不思議でしょうがないです。全体的にサウンドの瑞々しさ、若々しさに本当にびっくりする。ただただ素晴らしい。今回のアルバムは結果的にものすごくフレッシュなエネルギーに満ちたものになったと思うんですけど、実はそれはスティーヴのミックスによるところが大きいと思う。楽曲はどちらかというと熟練されてきていると思うんですけど、熟練されてきている僕らの曲やプレイをスティーヴが若々しくしてくれたっていうところで、すごいマジックが起きたなって思ったんです」

スティーヴ・リリーホワイト「僕の人格のおかげだね(笑)。わからないけどさ(笑)。でも、音楽を聴くと僕もフレッシュになるし、彼らもフレッシュになるんで音楽がフレッシュになる。フィードバックしているんだよ」

SUGIZO「あともう一つ、とても重要なのは、実は何度かスティーヴと会ってきて、やっぱりこの人は天才的で世界的なプロデューサーだと思った瞬間があって。こうやって陽気にふるまってくれているんですけど、おそらく一瞬でその場所の空気とか各人間のポジショニングとか、各人間の位置関係を見破るというか、見抜くんですね。その瞬間に、彼自身がそっとベストな位置について、気が付いたら彼が全体をコントロールしているんですよ。LUNA SEA5人とスティーヴが対峙した瞬間に、LUNA SEA5人とスティーヴの、バンドとプロデューサーという関係が一瞬にして生まれた。スティーヴが一瞬にして全員をまとめるんですね。あっ、これが世界的なプロデューサーの手腕なんだなっていう、音楽そのものよりも、人間的な強さというか、洞察力というか……それはものすごく感銘を受けました」

スティーヴ・リリーホワイト「僕には40年間バンドと付き合ってきた経験があるからね。バンドのメンバーを見せられると、僕はいつだって何もしないうちから『君はドラム、君はギター』だとわかるんだ(笑)。Jは間違いなくベーシストだろ。Jを見たら、『あれはベーシストだ』って思うもの」

SUGIZO「背も一番デカいしね」

スティーヴ・リリーホワイト「真矢、あれはドラマーだ。疑問の余地はない(笑)」

SUGIZO「大体どのバンドもギタリストがうるさいからね(笑)」

スティーヴ・リリーホワイト「SUGIZOはギタリストとして右? それとも左?」

SUGIZO「だいたい右ですよ」

スティーヴ・リリーホワイト「アルバムではINORANは左側においているんだけど、ステレオでレコーディングする時っていうのは、すべてを左右に分けていくことになるんだけどさ。僕がこのアルバムでよくやったのは、2トラックだったけれども、中央にスペースを与えるということだった。音楽のトラック数が多いと、すべてをステレオでレコーディングしがちだ。それだけだとよく聴こえるからだよ。でも、すべてが入っているミックスだと、スペースを空ける必要のある場合がある」

SUGIZO「すごくよく分かります」

スティーヴ・リリーホワイト「君には分かるよね。レコーディングが進むにつれ、君は僕の考え方が少し分かるようになっていった。僕がやったであろうものを提示してきたよね。だから、素晴らしかったよ。君は学んでくれたんだ」

――今、スペースという話がありましたが、スティーヴさんといえばロック・サウンドにおける時間と空間の概念を大きく変えた人だと個人的には思っているんです。今回のアルバムはまさしくそういう音になっているなと感じたのですが、SUGIZOさんにとっても、そうした手ごたえや片鱗を感じるところはありましたか?

SUGIZO「やっぱりその音楽におけるスペースのあり方、その広さとか瑞々しさとか、なんというのかな、スティーヴがその空間と時間をコントロールする魔術師みたいに感じましたね。例えば、それは、名盤でいうと、ピーター・ガブリエルの3枚目とか、僕らがすごく影響をうけてきたU2の『WAR(闘)』とか、あの時代のスティーヴのよさをちゃんと残しながら、2020年代に近い今、一番最新のロック・サウンドを作ってくれたと思っていて、実はスティーヴの40年間のさまざまな素晴らしい要素が、今回、日本の僕らのバンドに帰結したような気がしていて、それがすごく光栄の極みです。今回のアルバムからスティーヴの歴史と業績を感じます。それはまさに自分の中では、時間と空間を飛び超えて今があるという感じがします」

スティーヴ・リリーホワイト「さっきも言ったように、とてもいい偶然だったんだと思う。『愛してる』、『君は素晴らしい』と言うのは簡単だけど、僕たちはラッキーだった。彼らはとてもいいところにいて、僕を受け入れる準備が整っていた。そして、僕には彼らを受け入れる準備が整っていたんだ。彼らには素晴らしい曲があるし、僕は彼らをインスパイアさせる手助けをした。でも、僕にとっては至って単純なことでね。あまり考えすぎないようにしているよ」

――今、SUGIZOさんからも具体的な作品名が挙がりましたが、80年代にプロデュースをしていた時に自分たちがロックのサウンドに革命を起こしているという自覚はあったんでしょうか?

スティーヴ・リリーホワイト「それはなかったね。ピーター・ガブリエルは多少あったかな。当時のテクノロジーを他の誰も使っていなかったことを僕たちは知っていたから。ノイズ・ゲートやコンプレッションなど、最新のテクノロジーを駆使することができた最初の人間ではあったからね。だから、ピーター・ガブリエルは多少あったね。でも、U2は正直ひたすらクレイジーだった。『なんてこった、完成させなくちゃ!』という感じだったよ。U2のライヴを観に行くと完璧なものが観られるけど、(スタジオは)予測不能だよ。でも、広い心に満ちている。SUGIZOは(U2のギター・テックである)ダラスに会ったよね?」

SUGIZO「ええ」

スティーヴ・リリーホワイト「彼らはずっと同じ人たちを起用している。ファミリーのようなんだ。そして僕はラッキーなことに、彼らのファミリーの一員だ。そして、今度はLUNA SEAのファミリーだよ。LUNA SEAにはU2の時と同じファミリーの感じがする。君たちの人の扱い方がそうなんだ。とてもとても名誉なことだし、とても素晴らしいことだよ」

――ここからは一般的な話を訊かせてください。世界的なシーンでいうとロック・バンドは最近、チャート的な面ではあまり元気がないですが、スティーヴさん、SUGIZOさん、それぞれそうした状況はどのように見ていますか?

スティーヴ・リリーホワイト「ロックは死に絶えつつあると思う。80年代にはプロデューサーとしての僕には様々なスタイルのバンドがいた。どれもよかったけど、ロックのスタイルがすべて違っていた。今はほとんどいない。ライヴは別物だけど、レコーディングはね……僕はキャリアの終盤にさしかかっているから、本当は仕事をしたくない、友だちに頼まれる以外はね。僕は最近U2を手がけたけど、ボノが『早く早く! 2日間でこの曲を仕上げないといけないんだから!』と言ったんで、僕はついこの間U2のニュー・シングル(“Ahimsa”)のミックスを手がけたんだ。聴いたかい?」

SUGIZO「知ってます。あなたのミックスだったんですか?」

スティーヴ・リリーホワイト「そうなんだ。A.R.ラフマーンと一緒にやっているんだけどさ。というわけで、君は正しい。ロックは……例えば、今クラブに行ってステージを観て、ギター2本、ベース、そしてドラムがいると、僕の心はしぼんでしまう。素晴らしいものは他にたくさんあるんだもの。ギター2本にベースにドラムだったら、LUNA SEAのようにやらなくちゃ。LUNA SEAは、ギター2本にベースにドラム、それにキーボードが少し入るけど、素晴らしい! でも、こういうものはほとんどないんだ。LUNA SEAの素晴らしいところは、異なる個性の人間がいろいろいることだ。INORANのギターはインディー・ギターでジャカジャカ言っているし、SUGIZOのギターはプログレだ。だから、常にいろんなものが聴こえてくる。素晴らしいベース・ラインもある。でも、今時そういうバンドは多くないんだ。もしかしたら、ロックの終わりが近づいているのかもしれない。わからないけど、素晴らしいロック・ミュージックを見つけるのが難しくなってきている。どの国でも、特に西洋諸国ではそうだよ。わからないけど、これで終わりだと思うたびに、何か新しいものが出てくる。このアルバムのようにね。このアルバムは若い人たちに聴いてもらいたい。そして、素晴らしいロックがまだあるのだということをわかってもらいたい。若い日本のキッズがこれを聴かないといけないんだ。そうすれば、彼らの目がいい音楽に向くからだよ」

SUGIZO「この近年はロック・ミュージシャンという自分の身でいうと、衝撃に身を備えている感じですね。ずーっと常に壊れてきている激震が我々を襲ってきていて、必死になって身をこらえながら、物を作っている感じ。そしてもう一つ言うと、昔の90年代みたいな大きなビジネスをレコードで作ろうとももう思っていない。昔と同じのようなお金のかけ方をしていたら、もう収益が得られないことは決まっているし、でも収益のために作品をケチって作るのは言語道断だし、なので音楽家として物を作っている時の感覚は昔から変わらず、ギリギリまで自分の表現欲求を形にする。でも、スティーヴの言うことにすごく僕も同感なんだけど、つまらないロック・バンドばっかりになってますね。なぜか。多くのロック・バンド、僕らの世代、スティーヴの世代のバンドもみんな、今ある物事に対してぶち壊したい、反抗したい、今までなかったものを見たい、作りたいっていうハングリー精神から生まれてきたものが多かった。それがロックなんです。ないものを新しく作ること、もしくは今までの価値観をぶち壊すことがロックだった。今はどうか。ほとんどのミュージシャンは、もうすでにある、『これがロックですよ』というフォーマットを習って、それをなぞって作っているだけに感じる。だから、つまらない。ぶち壊したいっていう人が出てきたら面白いものがまた始まると思うけど、その新しい音楽のテクスチャーや新しい意識、新しい価値観、あり方っていうのが、今はロック・バンドじゃなくて、いわゆるポップスとか、ヒップホップやダンスの方に移って、『ロック』というカテゴリーは追いつめられているっていうことだと思うんです。新しい価値観を生み出したいと思うロック・バンドが出てきたらまた面白いことが起こると思う」

スティーヴ・リリーホワイト「僕はパンク出身なんだ。セックス・ピストルズやザ・クラッシュだよ。その通り。当時僕たちがやっていたのは、以前のものが大嫌いだったから、プログレッシヴ・ミュージックを破壊することだった。そして、今、一巡したんだ。だから、もしかしたらまた一巡してバンドが出てくるかもしれない。でも君たちは常に安泰だ(笑)。LUNA SEAにはプログレッシヴが入っているけど、ほんの少しだけだからだよ」

SUGIZO「僕らにはいろんなスタイルがありますからね」

スティーヴ・リリーホワイト「いろんなスタイルがあるから、どっちの方向にも行けるし、それで素晴らしいことをやれるんだ」

――最後にお訊きしたいのですが、今はストリーミング・サービスの普及で音楽の聴き方も大きく変わってきていると思います。インターネットによっていろんなものが変わっているわけですが、プロデューサーやレーベルなど、いろんな立場で音楽を見てきたスティーヴさんはそうした影響をどんなものと捉えていますか? SUGIZOさんにも御意見をいただければと思います。

スティーヴ・リリーホワイト「すごく悲しいのは、そして、これはいつも思うことだけど、『僕の新曲を聴いて下さい!』と言ってスマホを差し出される時だ。『低音はどこだぁ!?』ってね。あれが大嫌いなんだよ」

SUGIZO「僕も大嫌いです(笑)」

スティーヴ・リリーホワイト「分かるだろう? ダメだよ。ヘッドフォンをくれたらいいかもしれないけどね。でも、確かに変わったね。アルバムも。そもそもアルバムは、テクノロジーのおかげでアルバムになったんだ。以前のテクノロジーはアナログ盤向けだった。そして、アナログ盤は40分でないといけなかった。でないと、音量が下がってしまった。その後アナログ盤からCDに移行すると、70分、もしくは80分入れられた。でも、今はストリーミングだから、アルバムの必要性がなくなってしまったんだ」

SUGIZO「制限がありませんよね」

スティーヴ・リリーホワイト「そう、残念なことだけど、普通はテクノロジーが勝つ。だから、今時の音楽のほとんどはコンピューターで作られているんだ。シンセサイザーを使ったベースの方が、ベース・ギターよりもクラブ向けにずっと大きな音が出せるからね。僕たちはアルバムも大好きだけど、クラブではあまりかからない。クラブ・ミュージックはかなり違うからだ。でも、今だっていいものを作れると僕は信じている。僕たちはアートを信じている。今回いいもの(LUNA SEAのアルバム)を作ったと信じているんで、これがトップにのし上がればと思っている。誰だってYouTubeに音楽をアップできる。でも、どれもどんぐりの背比べだ。僕は、まるで東京マラソンのようだと思っている。2万人が参加するけど、重要な人たちは先頭を走っているアフリカ人だけだ(笑)。5人が先頭集団だね。他の人たちはそうじゃない。それでいい。それがYouTubeにアップされている音楽なんだよ。彼らは遊びでやっている。真剣に取り組んでいる人たちは先頭集団にいる走者だ。彼らは努力しているし、冴えた発想をしているし、経験がある。僕は音楽ビジネスをそう捉えているんだ。今時は誰でも音楽を作っている。とても安上がりで出来るからだ。ガレージバンドだって曲を作れる」

SUGIZO「今は音楽を作るのがとても簡単になりすぎたよね」

スティーヴ・リリーホワイト「そう、簡単だ。それは遊びの走りだ。ジョギングだよ。真剣にやってはいるけど、勝つことはない。僕は先頭集団の走者にしか興味がないんだ」

――SUGIZOさんはどうですか?

SUGIZO「僕もスティーヴの言っていることとほとんど同じ考えですね。簡単に音楽を作れるようになったから、みんな様々な音楽ができるようになって、そのほとんどが良きにつけ悪しきにつけ世に出ている。でも、何を基準にするかは措くとして、本当に良いものが生まれた時っていうのは、今までの現状を超えて、残るものが生まれる。だから、ほとんどのアートがコンピューターやスマホで見られる時代で、ほとんどの子どもたちはそれでアートを見てOKなんだけど、でも、どんな時代になっても、例えばゴッホやピカソのような本物の絵は残ると思う。その本物の絵として、モノとして残す価値があるものと、そうでないものが、はっきりと今ふるいにかけられている時代で、それこそ(ヒットチャートとは違う意味での)トップ3、トップ5だけは残るべきで、でも後は淘汰されていくと思う。もちろん僕らは残るものを作りたい。なのである意味、ネットがこれだけ大きくなって、子どもたちも含めて老若男女誰でもすぐに音楽に触れられる状況は、それは音楽に触れるきっかけとしては素晴らしいんです。ただ、そこから本物が生まれる、残るっていう意味でいうと、やっぱり音楽という世界のゴッホやピカソ、もしくはウォーホルのような人が必ず現れると思う。いいものを作り続けること、そしてアルバムというひとつのアートの形をちゃんと守り続けることが大事だと僕は思っている。ネットの世界ではアルバムっていうアートの形が崩壊していますからね」

通訳・翻訳:川原真理子

リリース情報

LUNA SEA
New Album
『CROSS』
Produce: LUNA SEA & Steve Lillywhite
2019.12.18 On Sale
01.LUCA
02.PHILIA※MMORPG『ETERNAL(エターナル)』主題歌
03.Closer
04.THE BEYOND※「機動戦士ガンダム40周年プロジェクト」記念テーマ曲
05.You’re knocking at my door
06.宇宙の詩 〜Higher and Higher〜※TVシリーズ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』第1弾オープニングテーマ
07.anagram
08.悲壮美 ※TVシリーズ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』第2弾オープニングテーマ
09.Pulse
10.静寂
11.so tender…

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