デビュー以来、立て続けに2作で地元アイルランド・チャートの首位を獲得し、全英アルバム・チャートでも両作を5位以内に送り込んできたアイルランド出身の4人組バンド、コーダライン。9月28日にリリースされた彼らのサード・アルバム『ポリティックス・オブ・リヴィング』は、これまでセルフ・プロデュースが主だった彼らが幅広い共作陣を起用して、前2作とは「まったく違う方向」へ舵が切られた意欲作である。『NME Japan』では、レーベルがリリースに際してリードシンガーのスティーヴ・ギャリガンに行ったインタヴューを前編と後編に分けて掲載する。10月3日の日本盤リリースが待たれる中、ここにお届けするインタヴューの前編では、フロントマンのスティーヴ・ギャリガンが通算3作目となる新作について、プロデューサーを務めるスノウ・パトロールのジョニー・マクデイドとの関係性や、2016年に行ったカイゴとのコラボなどに言及しながら、アルバムが完成するに至るまでを語っている。
――2013年にファースト・アルバム『イン・ア・パーフェクト・ワールド』を発表して以来、ノンストップで活動してきたあなたたちは、2016年7月のダブリンのマーレイ・パークでのライヴでひとつの区切りをつけて、しばらく休みをとりましたよね。あの公演を終えた時は、どんな気分でしたか?
「そうだね……あのショウは僕たちにとって、とてもビッグなものだったんだ。ソールド・アウトだったし、会場も大きかったし、地元だったからね。とにかく最高の気分だったのを覚えているよ。それから少し休みを取って、その間に結婚したメンバーもいたりして、みんながダブリン近郊でご近所になったんだ」
――その後、2017年に入ってサード・アルバム『ポリティックス・オブ・リヴィング』に着手しましたが、どんなアルバムにしたいのか、具体的に考えていたことはありますか?
「僕たちにとって一番重要だったのは、以前やったことのあることはやりたくないということでね。自分たちにチャレンジを課したいと思ったんだ。『カムフォート・ゾーン(馴染みがあって安住できる範疇)』から出るということだね。そのために、いろんなプロデューサーやライターと組んでみたんだ。本当に、バンドとしてカムフォート・ゾーンから出られたと思うよ。今までの僕たちはエモーショナルなバラードが中心のバンドだったけど、そういう状態からかなり挑戦できたと思う」
――確かにそのカムフォート・ゾーンからの脱出が強く感じられるアルバムになった気がします。普段はポップやアーバン・ミュージックで活躍しているいろんなプロデューサーやソングライターと組んでいますよね。それでいて今までのエモーショナルな部分もちゃんとブレンドされていて、とても気に入りました。
「ありがとう。確かに今までやってきたことも織り交ぜられるようには考えたんだ。アルバム全体で見ると、まったく新しい方向に行っているけどね」
――人選はどのように進めたのですか?
「そうだね……今まであまり外部の人たちとやったことがなくてさ。いつもバンドのセルフ・プロデュースが中心で、そこにせいぜい1人加わってもらうくらいだった。けど今回は、自然の流れでこうなったんだ。ジョニー・マクデイドという人がいて、スノウ・パトロールのメンバーでもあるんだけどさ、彼は僕たちのバンドと仲がいいんだ。今回は彼にいろいろと手伝ってもらったんだよ。彼との会話の中で、『ああ、もしかしたらこの人と組んだら面白いかもよ』なんていう話になったら、その人に声をかけるという感じだった。すごく自然な流れだったよ」
――ジョニー・マクデイドとは確か前作でも一緒に曲を書いていますよね。
「そうだったね。前作を作って、それからロサンゼルスで一緒に過ごしたんだ。確かその時が、前回以来初めて一緒に曲を書いたときだったかな」
――ジョニー・マクデイドは今回はエグゼクティヴ・プロデューサーを務めています。よほど前回でウマが合ったのでしょうね。
「そうだね。すごく気が合うんだ。ショウの後で一緒に飲んだりしたこともあるよ。音楽への情熱がある人だから、一緒に作業していてとても楽しいんだ」
――エグゼクティヴ・プロデューサーとして、今作でジョニー・マクデイドが果たした役割を教えてください。
「彼は僕たちが新しいチャレンジをできるようにプッシュしてくれたんだ。カムフォート・ゾーンの外にね」
――このようにアルバム制作のアプローチを変えて、自分たちらしさが薄まってしまうのではないかという不安や戸惑いはありましたか? あるいは、最初の2枚のアルバムを通じて自分たちらしさを確立できていたからこそ、このような大胆な実験ができたのでしょうか?
「確かにまったくなかったといえば嘘になるけど、同じことを2度やりたくないというのは初めから決めていたことだからね。それもあって、カムフォート・ゾーンから押し出す人が必要だったんだ」
――2016年にカイゴのシングル“Raging”にフィーチャーされたことが、今回こういうアプローチをとるきっかけのひとつになったのではないかと思うのですが、あのコラボレーションから得たものはどんなものだったのでしょう?
「うーん…確かに、そうかも知れないね。ジャンル的にも全く違うところとのコラボだったからね。特にスタジオで、普段とは違う音を聴くことができたのが大きかったかも知れないな。振り返ってみるとね」
――アルバム・タイトル『ポリティックス・オブ・リヴィング』にはどんな意味が込められているのでしょうか?
「実はそのタイトルの曲があったんだ。結局ボツになってしまったんだけど、全員その曲のアイデアが気に入っているから、アルバムのタイトルになったっていうね。ファースト・アルバムのタイトルが『ア・パーフェクト・ワールド』なんだけど、あの時も、“Perfect World”という曲を作ったにもかかわらずアルバムに入らなかったっていうことがあってね。後でB面(注:シングル“Brand New Day”)には入れたんだけど、アルバム本体には入らなかったから、タイトルをアルバムにつけたんだ。今回も同様に、いい曲ではあったんだけど、“Politics Of Living”という曲は入っていないんだ」
――音楽的に合わなかったとか、そういう理由だったのでしょうか。
「いや、実は結構合ってたんだけど、最終的には外したんだ。けど、どこかの時点でリリースしようとは思ってるよ。かなりパワフルな楽曲に仕上がっているからね」
――ところでこの“Politics”というのは、「政治」という意味の“politics”とは違いますよね?
「うん。政治とはまったく関係ないよ。これは毎日の生活の中での“politics”(駆け引き的なニュアンス)であって、日々の浮き沈みだとか、そういうのにどうやって対峙していくかということなんだ」
――歌詞に目を通してみると、全体的に、自分たちの若い頃を振り返るというノスタルジックな視線が感じられます。何があなたたちを、このような気分にさせたのでしょう?
「バンドとして活動をし始めてから随分経ったけど、その間に培った経験を元に書いたんだ。それは自然の流れだったと思う。歌詞のネタになっているものの中には、もっとずっと前の出来事なんかもあるけどね。そういうのを掘り下げて書いた曲が多かったんだ」
新作より日本語字幕付きミュージック・ビデオが公開!
リリース詳細
コーダライン
『 ポリティックス・オブ・リヴィング』
10月3日日本盤リリース
¥2,200+税/SICP-5658
国内盤ボーナス・トラック収録
1. Follow Your Fire|フォロー・ユア・ファイア
2. Hide And Seek|ハイド・アンド・シーク
3. Angel|エンジェル
4. Worth It|ワース・イット
5. Shed A Tear|シェド・ア・ティアー
6. Head Held High|ヘッド・ヘルド・ハイ
7. Born Again|ボーン・アゲイン
8. I Wouldn’t Be|アイ・ウドゥント・ビー
9. Don’t Come Around|ドント・カム・アラウンド
10. Brother|ブラザー
11. Hell Froze Over|ヘル・フローズ・オーヴァー
12. Temple Bar|テンプル・バー
13. Ready To Change|レディ・トゥ・チェンジ
14. The Riddle|ザ・リドル
15. Blood and Bones|ブラッド・アンド・ボーンズ
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