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1年と少し前、ゼイン・マリクはワン・ダイレクションを脱退した。それ以来、彼はポップスターであったガールフレンドと別れ、フランク・オーシャンのプロデューサーとソロアルバムを制作した。彼の家の奥庭にあるパブで長椅子に腰掛けながら、ギャヴィン・ヘインズが彼に話を聞いた。

「煙はちゃんと出ているかい?」

ゼイン・マリクは彼の個人ビデオ撮影者に、最高のアングルから彼の吸っている“ジョイント”が見えるように様々に指示をしていた。4時間をかけて『NME』はゼイン・マリクの表紙撮影を行い、彼は少なくとも4本はこの小さなきちっと巻かれたジョイントを吸っており、何度も煙が窓から流れていた。彼の歩き方は少し原始的で、頭が来て、それから肩がそのクールな頭とともに出てくる。もし、23歳にして2300万ポンド(約37.2億円)の預金があり、スーパーモデルの彼女がいて、アメリカとイギリスでソロアルバムが大ヒットしていたら誰でもそうなるにちがいない。

彼のガールフレンドのジジ・ハディッドも一緒にいて、ゼイン・マリクのそばに他のアメリカ人の取り巻きとともに腰掛け、かなり静かに彼女のiPhoneをいじっていた。彼は、少しの間だけ彼女のほうへ近づくと、押し殺していた気持ちを忘れ、惜しみなく彼女のことを構っていた。彼らはかなり惹かれあっているように見える。

ジジ・ハディッドは、ゼイン・マリクのしっとりと力強いソロ・デビュー・シングル、“Pillowtalk”のビデオに出演している。この曲は、アメリカで25曲目となるソロ・デビュー曲でナンバーワンとなった曲である。「なんというか、この曲の中には俺がいるって久しぶりに感じた曲だった」。ゼイン・マリクは後でこの曲について語った。「まさにこういうことを言いたかったんだ」

子供たちのエンターテイナーであることへに飽き飽きしてしまった、ゼイン・マリクのような話は今までも数多く見てきた。例えば、音楽、性的な物、薬などーー14歳のファンが求めるものを超えたいという欲求が不快なまでに大きくなるのである。だから、かれがフィアンセ(リトル・ミックスのペリー・エドワーズ)でない女性とタイのビーチで写真を撮られた後、ゼイン・マリクはワン・ダイレクションであることはもう十分だと自覚したというのもまったく不思議ではない。それだけだ。「俺は俺のガードを呼んで、飛行機を取って、家に帰るんだって、どうやったかわかんないけど、とにかくそうしたんだ。俺の従兄弟と少し話した。音楽を少し聴いて……そして飛行機がやってくるのを待ったんだ」

撮影は遅くに始まったためインタヴューを彼のパブに戻ってやらないかと言われた時はすでに午後の8時を回っており、僕たちはタクシーに乗り、彼の家のあるロンドンの緑豊かな上流階級の住む郊外に向かった。

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ゼイン・マリクの家は大きくて白くキューブ状で、窓は丸くバルコニーには芝が生えていた。サッカー選手で、ジョージア王朝時代風の物に対して自分は最先端過ぎると考えているのであれば購入するという感じの家である。そして芝を何百平方メートルも横切り、彼の母屋にロープのつり橋で繋がっているのがゼイン・マリクのパブだ。

「祖父に捧げてるんだ」とこのパブについてゼイン・マリクは説明した。「俺は基地から少しだけ土地を買って、それを一緒にしたんだ。そしてパブにすることにした。銃を持って歩き回るのが好きなんだ」

ゼイン・マリクは、彼のタンブラーの中にウィスキーを注ぎ、そして耳にジョイントをかけた。ビアタップが2つ、不気味な骸骨、偽のクモの巣などもあるが、おそらくはハロウィンの名残であろう。そしてワン・ダイレクションのプラチナディスクが向こうの壁に飾られており、ドアの上にはゼイン・マリクの母方の祖父母の名前と彼らが営んでいるパブ「ブラッドフォード・アームス」の名が刻まれたプレートが飾られている。

ここはまさに、本当のパブに行くことができない少年のオアシスのようであるが、ゼイン・マリクはたまには現実の世界に飛び出し、パブに出かけると語った。「俺がブラッドフォードに戻ったときはね」と彼は語っている。「俺は父さんのコートを羽織って歩きまわったりするんだ。人々は俺だなんて思わないよ」

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シングル“Befour”のビデオ・クリップは、マンチェスターのうす汚れたエリアであるマイルズ・プラッティング地区でこの取材の数日前に撮影されている。北部の労働階級の10代の生活をドラマにした作品で、フォードの車、質の悪いテイクアウト・ショップ、仲間達との戯れが描かれている。ゼイン・マリクは彼が呼ぶところのガラクタ(クロスボウ、盗聴防止機能付きバイク、ゴーカートやサムライの剣など彼の言うところの『最高のお楽しみグッズ』)が大好きなようだ。

「これは、俺はまだ下町の生まれのジェニー(※ジェニファー・ロペスの楽曲)だなんて言っているわけじゃない」とビデオについて語っている。「それより、俺は昔はこんな生活をしていた。フィッシュ&チップショップへ行って友達と駐車場あたりでウロウロしていた。車に火をつけたことはなかったけどね」

君は良い子だったの、それとも不良かい?

「必ずしもいつも良い状況にいたってわけじゃないね。人々が言うことに頭にきていた」

繊細だったの?

「繊細ではないよ。もう俺には関係なくなったから今思い起こすのは好きじゃない。なんというか人種差別的なものがあったんだ。俺をどこに分類していいか彼らはちょっと困っていた。その無知なでかい態度に俺は混乱していた。ある人々は、あることを知りたがらない、だから俺も教えることができないということを知ったんだ」

ゼイン・マリクの母親のトリシャ・マリクは、普通の女性だったが、彼の父と結婚したときイスラム教に改宗した。彼女は彼を必ずモスクに通わせた。また「Xファクター」のオーディションで眠り込みたい彼をベッドから起こしたのも彼女である。

しかし、ゼイン・マリクを音楽に触れさせたのは彼のパキスタン人の父である。ヤーセル・マリクは、ビギーとトゥパックのような90年代のラップや、グレゴリー・アイザックス、ボブ・マーリィ、イエローマンのようなレゲエが大好きだった。そこからゼイン・マリクはドネル・ジョーンズ、R・ケリー、プリンス、そして地元ブラッドフォードのラッパーを好むようになっていった。「俺はまだ人々とこうした曲について話すよ。『この曲、もう聴いたかい?』って。そしてYouTubeにアップするんだけど、まだ6000回ぐらいしか観られてないんだ。地元の人しかしらないからね」

彼の家族は毎月の家賃を払うのにも苦労していた。そのためゼイン・マリクが手元にお金が入って最初にしたことは彼らに家を購入することだった。彼は(イギリスの教育監査局「オフステッド」が“不十分”と評価する)悪名高いトン・スクールに通っていた。彼は、自分が言いたいこともうまく言えないような感じだった。彼は本来持っている彼の突出した芸術的気質を抑えていた。彼のタトゥーはすべて独自のデザインによるものだ。彼はたびたびファンに彼のアートをツイートしている。また、ある時点では彼は家に落書き用の部屋を所有していた。

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彼は、ソロ・アーティストになることは前から分かっていたと語っている。オーディションでもソロとして受けていたし、スタジオにいることが大好きだと言うのだ。「俺は、スタジオでいろいろ試したりするのが好きなんだ、実際には世にでないようなね」彼は自身のデビュー・ソロ・アルバム『マインド・オブ・マイン』のための歌詞をすべて作詞している。

「これは、俺のすべての経験を語ったもので、リスナーにシェアしたかったんだ」と彼はアルバム・タイトルについて語っている。「ほとんどすべて閃きで作ったね。純粋に音楽で、そのとき感じただけを表現したかったんだ」

彼は、彼の取り巻きが頼み続けている曲“Drunk”の気分になったようだ。ゼイン・マリクは彼のノートパソコンに手を伸ばした。「聴いてみたい?」すぐにマリオの “Let Me Love You”とR・ケリーの“Ignition (Remix)”を連想させるようなメロディが鳴り響いた。“夜遅く/赤い目の人たち……夏の間、飲み続けるんだ”。スティーミーでロマンスを感じさせる曲で、新「Xファクター」のオーディション曲に使われることを想像してみた。

ワン・ダイレクションの後の初のソロ・アルバムのプロデューサーとなる予定であったノーティ・ボーイと彼は公の場でいがみ合うことになった。彼はノーティ・ボーイのことをツイッターで「冗談のようなデブ野郎」とつぶやいている。しかし、そのすぐ後にゼイン・マリクは、フランク・オーシャンを手がけたマレイとともに仕事をし、彼を褒めちぎっている。

「まあ、ノーティ・ボーイとはうまくいかなかった。だからやめたんだ。マレイとは余計なことはまったくなかった。彼は、音楽についてはすべて精通しているような人なんだ。本当に魅力的だよ。細かく説明してくれる人にはとても魅力を感じるんだ」

確かにマレイは、ゼイン・マリクに明らかに音楽的に良い影響を与えているようだ。例えば、ポスト・アリーヤとして女王の座を狙うケラーニとデュエットをしていえる“Wrong”も良い例だ。実際、マレイはシンセサイザーを多用したザ・ドリーム、ザ・ウィークエンド、ミゲルといった雰囲気のある2015年のトレンドのオルタナティヴR&Bを取り入れている。

ゼイン・マリクは、『マインド・オブ・マイン』の曲をいろいろと振り返ってくれた。“Fool For You”は思いもかけずビートルズの“In My Life”を連想させた。「その週はジョン・レノンをたくさん聴いてたんだ。リピートしてたんだよね」とゼインは認めている。「それでこの曲に僕はのめり込んでいたんだけど、インド音楽っぽいテイストが前面にあって、シタールとかも使ってたんだけど、別の曲みたいになっていったんだ」と、ビートルズの名曲“Lucy In The Sky With Diamonds”の影響について言及している。

ジョイントの煙が耳の後ろで光った。「ずっと吸っていたのもあったからかな」と彼はニヤッと笑った。「いつから始めたとか言いたくない、誰かに影響を与えたくないんだ。まあ、それが俺自身だとも言えるけれど」

スタジオにいるときに、そのお陰で閃きがあるとか?

「何かを創作しているときには、助けになることはあるね。上質の草を吸っていればさ」

もっと強いやつはやるの? マイ・ドラッグ・ヘルの夏みたいになるの?

彼の顔がくもった「そんなに心配するなよ、天然だぜ」。こうして質問をはぐらかすのは、ゼイン・マリクの得意とすることである。もし政治的なことを尋ねると、彼は貝のように黙る。もしワン・ダイレクションの仲間の将来について尋ねると彼は話をそらす。何年ものメディアに対する対応でゼイン・マリクはインタヴューでの上手なかわし技を覚えていた。

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俺はまだ「リアムとは一番仲がいいと思う」と彼は元バンド仲間について語った。「たまに電話で話すよ」

何についてだろう?

「俺の最初のシングルを祝福してくれた。嬉しかったよ。俺はブリット・アウォーズについておめでとうと言ったんだ」

とても心がこもっているね。

「良い会話が出来たと思うよ。しばらく会ってなかったから会いたいよ」

最後にあったのはいつ?

「バンドを辞める前だと思う」

じゃあ、あれ以来誰にも会ってないのかい?

「みんなに連絡を取ろうとしたんだ。だけど、誰からも返信がない。まあ、なんでもいいさ」と最後のところは少し濁している。

みんな君を嫌っているのかい?

「そんなこと分からないよ」

彼らが君を嫌う特別な理由はあるのかい?

「特にないと思うけどね」

じゃあ、この噂はどこから来たのかな? 誰かが君はグループを追い出されたって?

「誰かがそんなことを言っていたこともあるかな。だけどそんな噂いちいち覚えてないよ」

もしかして、脱退してからは嵐のような時間だった?

「台風の芽のように静かにいているか、または巻き込まれるかだよ」と彼はスツールに立ち上がって、それはワン・ダイレクションのヒット曲のコーラスを歌うかのようだった。「俺は自分の中に少し狂った部分はいつも持っているんだ。だけど、メディアがどうなっているかも理解している。彼らも稼がなきゃいけないし、みんな金は必要なんだ」

初期の頃に学んだのかい? それらすべてのリアルじゃない物に焦点をあてている必要があって、そうしないと自分が破滅してしまうかもしれないということを。

「そうかもね、だからミステリアスとか孤独だとか思われていたのかも。俺は、事実でないものにとりつかれたくなかったんだ。世界で1番のバンドにある時はなれた、だけど終わりは必ずある

じゃあ、君は、いつか期限切れになる前にそこから抜け出そうと思っていたの?

「そうハッキリはいってないさ、だけど……」彼は笑った。「まあ俺は頭がいいからね」

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そこには、語らない何かがあった。彼は慎重だった。彼は繊細だが、強い意志を持った生まれながらのリーダーだ。彼は、そこから抜け出ることでみんなを出し抜いたのだ。彼は全部計算済みだったというのは考えすぎであろうか?

ドアがノックされた。握手を交わし、長くて四角い眉毛の下で最後に笑顔をくれて、僕たちはゼイン・マリクを彼が唯一誰からも邪魔されない世界である、たった1つのパブにおいて去った。

ミュージック・ビデオ

リリース詳細

ゼイン・マリク
『マインド・オブ・マイン』
2016.03.25
アルバム
¥2,200+税
SICP-4778
1. Mind Of Mindd (Intro)
2. Pillowtalk
3. It’s You
4. Befour
5. She
6. Drunk
7. Intermission Flower
8. Rear View
9. Wrong Ft. Kehlani
10. Fool For You
11. Bordersz
12. Truth
13. Lucozade
14. Tio
15. Blue
16. Bright
17. Like I Would
18. She Don’t Love Me
19. Do Something Good
20. Golden
21. Pillowtalk (The Living Room Session)

更なる詳細はこちらから。

http://www.sonymusic.co.jp/artist/zayn/

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