USインディ・シーンはフレーヴァーが少しずつ変化してる。アーティストの間の接点がなかったり、アーティスト同士のコミュニティ感は薄れてきたかもしれない

今回のアルバムについて御自身で「NEW NEW WAVE」と呼んでいますが、これはどこから来たんですか?

「“NEW NEW WAVE”なサウンドを最初から目指したわけではなくて、あとから付け足したような感じなんだ。80年代の音楽って自分たちにとってユニークなものなんだ。子供のころは60年代や70年代の音楽から夢中になっていったんだけど、この年代の音楽を学ぶのはすごく楽なんだ。なぜなら、クラシック・ロックの物語はすでに定着しているからね。『アビイ・ロード』、『スティッキー・フィンガーズ』、『追憶のハイウェイ61』を聴くべきなのはみんなが知っている。いわゆる名作が明確で、どのアルバムをおさえておくべきかを簡単に知ることができるんだ。でも、80年代の音楽はまだ“クラシック・アルバム”と言われるほどは古くないんだよね。まだ“クラシック”と言われるようなアルバムがないので、そのぶん自分たちでリサーチしたり、自分たちが良いと思った曲、自分たちが新鮮だと感じる作品を探す楽しみ方ができたんだ。3〜4年前にかっこいいと思う80年代の音楽に出会ったのがきっかけで、『もっと名作を探そう!』というモードになってね、まだクラシック・アルバムとは認識されていないかっこいい曲やアルバムをたくさん見つけたよ。10〜20年後にはおそらく“名作”になっているんだろうけど、今はまだリスナー/ファンとして自分で掘り下げられる自由さや楽しさがあるんだ」

このアルバムに収録されている曲の中で日本で書いた曲はどれですか?

「あらゆる曲に少しずつ入っている感じだね。“Vice”の歌詞は楽曲が完成する前に日本で散歩している時に歌詞が浮かんだよ。“Backwards World”はニューヨークと日本を行ったり来たりしていた時に、日本とニューヨークとの違いについて感じていたことを曲に込めた。日本で完成させて、最初に演奏したのも日本という、日本の影響が強い曲だね。“I’m Only Dreaming”は、日本で仕事をしている時にジョンがバック・トラックを送ってきた曲なんだけど、日本にいなかったら書けなかったような曲だね。それを歌った時の感情はというと、これはよく日本で感じることなんだけど、重りから解き放たれたように、ハッピーで、気持ちが軽くなってたんだ。日本を離れている期間が長いと、早く戻りたいと思うし、日本にいると穏やかな気持ちになるんだ。この曲を歌い終わったときも、そんなエネルギーが放たれたんだ。まるでなにかから抜け出す必要があったかのようにね。気持ちがよくなり、すっきりしたよ。この曲を書いてよかった」

日本とは非常に縁の深いアルバムですが、逆に同世代のUSインディ・シーンが影響を与えた部分とかはないのでしょうか?

「ちょっとだけ。難しいなぁ。実は、アメリカより、日本でコラボしたミュージシャンとのほうがつながっている感じがする。アメリカにも仲の良い友達はいるよ。ウォーターズというバンドのシンガーはザ・モーニング・ベンダーズのオリジナル・メンバーで、ずっと一緒に曲を作っているし、仲が良いよ。僕たちは、アメリカのいろいろな音楽シーンとはちょっと違うなとずっと思っていたんだ。僕たちは常に動いていたい人たちだというのもあるかもしれない。ここ数年は日本、カリフォルニア、NY、ポートランドといったように、まるでコミュニティーに受け入れられていない人たちみたいに、いろいろなところに行ってたからね。それは、音楽のためには必要なことではあるんだけど。そんな感じかな」

2008年から2010年にかけて、USインディ・シーンは大きな盛り上がりを見せました。ヴァンパイア・ウィークエンドやアニマル・コレクティヴがシーンを牽引するような作品を発表しました。しかし、最近はUSインディ・シーンが見えにくいような気がしています。あなたはどう見ています?

「同じように感じているよ。インディ・シーンで何が起こったかというと、『インディ・ロック・バンド』のフレーヴァーが少しずつ変化しているんだ。以前ブログを書いたり、彼らを追っていたようなメディアが、もちろん引き続きカヴァーはしているものの、ヒップホップやR&Bに影響を受けたアーティスト、ソウル系やポップ・アーティストをより扱うようになっているんだ。音楽をより幅広く網羅しているのはクールだし、面白いと僕は思うけど、アーティストの間の接点がなかったり、アーティスト同士のコミュニティ感は薄れてきたかもしれないね」

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