2010年にモーニング・ベンダーズ名義でリリースしたアルバム『ビッグ・エコー』がリスナーからもメディアからも大きな評価を受け、その後バンド名をポップ・エトセトラに変更してファースト・アルバムをリリースしたのが2012年−-つまり今回1月29日にリリースされるポップ・エトセトラのセカンド・アルバム『スーベニア』までは実に4年の歳月がかかることになった。しかし、その4年のあいだにフロントマンのクリストファー・チュウは木村カエラのアルバムへの参加のほか、Galileo Galileiの諸作をプロデュースするなど、日本のシーンとはぐっと距離を縮めた時期でもある。一方、インタヴューでも語っている通り、プライベートでも様々なことがあったという。
新作『スーベニア』はそんな時期に書かれた数百曲のなかから選りすぐりの楽曲を集めたアルバムとなっている。本人たちが「NEW NEW WAVE」と呼ぶ、80sを基調としたサウンドにのせて、クリストファー・チュウならではの浮遊感のあるメロディは健在ながら、あらためてバンド名の変更にとどまらないポップ・エトセトラというバンドは何か?というアイデンティティを提示する作品となった。昨年11月、Galileo Galileiのツアー参加のために来日を果たした際に、このアルバムについて、現在のUSインディ・シーンについてクリストファー・チュウに訊いてみた。
すごく身近な家族、祖父母が亡くなったのも辛かったし、両親が離婚して家族でニューヨークに移り住んだんだ。そういった大きな変化があった
前作から4年ぶりのアルバムとなるわけですけど、その間にクレイジーな人生経験があったとうかがいました。この4年間とはどんな感じだったのですか?
「常に動き回っている感じだったんだ。日本にも仕事のためによく来ていたしね。ここ2〜3年はニューヨークで過ごした時間と同じくらいの時間を日本で過ごしていた。長年、カリフォルニアをベースに暮らしていたんだけど、ずっと住んでいた家を売って、家族でニューヨークに移り住んだから、その変化に慣れるのにも少し時間がかかったんだ。今は3人とも良い場所を見つけたなという気分になっているし、落ち着けているけど、いろんなことが起こっていて、なかなか落ち着けなかったよ。あとは、周りの友人たちにもいろんなことが起こっていて、たとえば、昨日も話していたんだけど、子供が生まれたり、家族を持ったりする友人がいる一方、まだシングルでパーティーしている人がいたりね。みんながバラバラなことをしている、なかなか興味深い期間だったね」
なにかトラブルのようなこともあったのでしょうか?
「友達が変化しているなかで、自分たちも家族を持って落ち着かなきゃいけない年齢なのか、まだ子供みたいでも良いのかを考えたりはしたね。人生って、予想しているようにはいかないって考えたりもしてね。アルバムに込めたフラストレーションというのは、自分が思い描いていた人生の計画の通りに人生が運ばないことへの葛藤というのかな、それはまったく悪いことじゃないし、その困難に直面していた時もすごく価値のある経験をできたとありがたく思ってはいたんだけど、振り返ってみると思い通りにいかなかったことを受け入れるのに時間がかかっていたりするんだ。ある時点までには達成する思っていたことが達成できなかったというような、手放さなければならない悲しみを経験したりね。そういったフラストレーションがアルバムには表れてる」
このアルバムが、権力や力だけでは物事は変えられないというメッセージが込められてるともうかがいました。具体的にそういうエピソードもあったのですか?
「このアルバムは長い期間にわたって作っていたので、いろいろなことが起きたから具体的に言うのは難しいんだけど、たとえば、すごく身近な家族、祖父母が亡くなったのも辛かったし、なぜ家を売ったのかというと、両親が離婚したからだったんだ。そういった大きな変化があったし、自分たちも恋愛がうまくいかなかったりしたりね。音楽はというと、ジェットコースターみたいで、物事が起こっている時はいろんなことが起きていて、うまくいっている時もあれば、そうじゃないこともあったりで、なにやってんだと落ち込んで、前に進むスピードが遅くなったりもしていたんだ。いろいろあった時期だったね」
モーニング・ベンダーズとして2010年に発表した『ビック・エコー』は非常に大きな評価を得た作品でしたけど、一方で前作『POP ETC』はそこまで注目されることはありませんでした。そのことはどう受け止めていましたか?
「ある意味、そういうことってなぜ音楽をやっているかの理由に気づかせてくれたりもするんだ。もちろん良い評価を受けたり、人に好きだと思ってもらえるのは嬉しいけど、このアルバムでやりたいと思ったことのひとつとして、毎日なぜ曲を書いているかというと、音楽が出来上がった後って他のことではそこまで喜びを感じることができないからなんだ。とにかく音楽を作っている瞬間が大好きで、自分がハッピーな気持ちになるために毎日曲を書いているんだ。人の見方によって評価や自分たちの立ち位置が変わったりという、ジェットコースターに乗ってるような変化を経験したからこそ、その感情を少し解放することができて、自分にとって音楽は学びたいもので、自分たちがハッピーになる曲を書くことだと思うことができたんだ。それに気づくことができて、良い経験だったと思うよ」
というのも、このアルバムのために何百曲も書いたとうかがったんですけど、それはプレッシャーがゆえじゃないのですね? むしろ根源的に音楽を作ることと向き合ったという。
「そうなんだ、その逆だよ。そうだよね、そういうふうに思う人はいると思うから、ぜひ説明したいよ。僕にとっては、たとえば前作と同じような曲を10曲書いてとか言われるほうが、ある意味締め付けられていてアーティストとして自由に表現できないと思うし、プレッシャーを感じるんだ。今回は時間をかけて、毎日曲を書きながら自然な流れでアルバムが出来上がったんだ」
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