Matt Crockett

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ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズが通算4作目となるニュー・アルバム『カウンシル・スカイズ』を6月2日にリリースするのに際して、ここでは日本用オフィシャル・インタヴューを掲載する。最近のインタヴューを見ていると、ノエル・ギャラガーは前作『フー・ビルト・ザ・ムーン?』について少しエレクトロニックな方向でやりすぎてしまったと感じていたようだ。なので、新作のプレス・リリースでは「原点に帰ったんだ。白昼夢の中、空を見上げて、人生がどうなるんだろうと思いを巡らす。それは90年代前半と同じように自分にとっては真実なんだ」と述べており、今回はまさにそんな作品が出来上がったように思う。ノエル・ギャラガーのオーセンティックなソングライティングの力が発揮された時というのは曲が青みを帯びるような、そんな感覚があるのだけれど、今回の作品にはその片鱗が感じられる。ただ、歌っている内容もノスタルジックかというと、そうではなくて、このインタヴューでも語られているように、ソーシャル・メディアやポリティカル・コレクトネスなど、現代の複雑な様相に対して思うところがあるようだ。前作からの歩みを振り返りながら、ニュー・アルバムについて語ったインタヴューをお送りする。

――前作『フー・ビルト・ザ・ムーン?』から約5年半ぶりのアルバム完成となります。とはいえ2019-20年には3枚のEPがあり、来日ライヴもあり、2021年にはベスト・アルバムが出たので、さほど間があいた感覚はありません。お元気でしたか? どう過ごされていましたか?

「ああ、5年半も経った感じはしないな、その間にいろいろあったから。3枚のEPはアルバムを1枚リリースするのと変わらないし、ベスト・アルバムにも新曲が2曲入ってる。5年半も経ったとは、信じられないな。最後にスタジオ・アルバムをリリースしたのは2017年で……『フー・ビルト・ザ・ムーン?』は2017年だよな?」

――そうです。

「ほとんど6年も前だ。驚くよ、マジで時が経つのは早い」

――その間、新曲を書く以外には何をしていたのですか?

「このスタジオを作って、少し休みを取った。それからパンデミックになった。だから休みを取って、この素晴らしいスタジオを作って、曲作りをして、忙しくしてたよ。でもまあ、ツアーをすることはなかった。グラストンベリー・フェスティバルには出たけどな」

――この『カウンシル・スカイズ』収録曲のうち、最初に書き始めた曲は?

「“Pretty Boy”だったと思う。ものすごい数の曲を書いてたからはっきりわからないけど、ロックダウン中はアルバムを3枚作れるくらい曲を書いたよ。このアルバムで言うなら、“Pretty Boy”が最初に書いた曲だ。『フー・ビルト・ザ・ムーン?』の後に最初に書いた曲ではないかもしれないけど、このアルバムで言えば“Pretty Boy”が最初に書いた曲だな」

――収録曲は全てパンデミック中に書いたのですか?

「全曲そうだよ。アルバム3枚分の曲全部を、このパンデミック中に書いた」

――本作はベスト・アルバム『バック・ザ・ウェイ・ウィー・ケイム:Vol 1 (2011 – 2021)』を2021年6月に発表した後の最初のアルバム、つまりそれまでの歩みから心機一転できるタイミングの作品ですよね。

「そうだな。あと、バンドで演奏して作った初めての作品だ。彼らは普段はアルバムで演奏しないからね。そうだな、再出発だ。オアシスを離れてから俺がやってきた全ての要素が詰まったアルバムだと思う。つまり、“Pretty Boy”はこの前にリリースしたEPのどれかに入っていてもおかしくない曲だし、“Think Of A Number”もファースト・アルバムに入っていてもおかしくない。“Dead To The World”は『チェイシング・イエスタデイ』の曲にもなりうる。だから、今の自分を一番ちゃんと伝える曲を選んだんだ。ここから新しく始まる感じだな。つまり、ベスト・アルバムが終止符を打つ作品とするなら、(その中の新曲だった)“We’re On Our Way Now”と“Flying On The Ground”はそれまでの素晴らしい11年間を締めくくるブックエンドのような曲だった。だから、これからは前進するのみだ。どんなことになるか楽しみだよ」

――その内容が、あなたにとって原点回帰とも言える「胸を打つ美しいメロディーを持つギター・ミュージック」になったのは、何か意図したところがあるのでしょうか?

「いや、俺の場合はアルバムを書こうとして作業を始めるんじゃなく、いつもただ曲を書いてるだけなんだよな。それで、自分で一番良いと思える曲を録音する。アルバムのコンセプトはその後についてくる。自分でこのアルバムを聴いてると、内省的な内容に思えるんだよな。これは、ノスタルジックとは違う。歌詞が内省的なんだ。で、パンデミック中は誰もがそうだったと思う」

――音楽的にも、何もアイデアはなく作り始めたと?

「音楽的にも、そう。特に深く考えたりはしないんだ。自宅でアコースティック・ギターで曲を書く。でもまあ、いつもと違う特別なシチュエーションだった。いつもだったら、まず1〜2曲書いたらすぐスタジオに入ってデモを作る。そうすることでサウンドが形作られるんだよ。でもこのアルバムは、自宅だけで書いた30曲をまとめてスタジオに持ち込んで作った。そこから11〜12曲を選んでアルバムに仕上げる作業は大変だったよ。でも、深く考えながら曲作りはしない。自分がいい曲だと思ったら、他の人もそう思ってくれるだろうと考えるんだよな。絶対にそうなるわけでもないけどさ。人によってはもちろん、アルバムの中には好きじゃない曲もあると思う。これまで俺のやったことは、全部自分の好みでやってきた。だから今まで一度も、何か特に決まったことを書こうと意識して曲作りをしたことはないんだよ」

――時間がなくなる前に一つ聞かせてください。“Open The Door, See What You Find”は本当にいい曲で……。

「そうだろ。そう言ってくれたのはお前が初めてだよ。素晴らしいな、お前と俺はいい趣味をしてるな。俺の大好きな曲だ」

――この曲はライヴで聴いても盛り上がるでしょうね。

「うん、そう願ってる。まだリハーサルをはじめてないから、どうなるか分かんないんだけど。ライヴで絶対に演奏するのは、“Pretty Boy”と“Easy Now”、あと“Council Skies”もやるだろうな。それ以外は、まずリハーサルでどうなるか様子を見たいね。“Open The Door, See What You Find”はキンクスやザ・ラーズのようなサウンドの素晴らしい曲だよな。俺も個人的に大好きなんだ」

――はい、これは「In my mind my dreams are real」と未来と自分を信じて歌った“Rock’n’roll Star”などのオアシス時代の曲にも繋がる、未来を信じる素晴らしい曲です。シングルにもなり得る曲ですね。

「そうだろ。お前、俺のレコード会社で働くべきだな。でも、基本的には、この曲はシングルにはならない曲だ。“Slide Away”もそういう曲だった。あと、“Acquiesce”も、“Half The World Away”もそうだったよな?つまり、これまでもシングルになり得るけれど、ならなかった曲は何十曲もある。でも、それは俺が最高の曲を何曲も書くからだよ」

――(笑)その通りで、本作もあなたの自信を感じます。

「で、その理由は俺が考え過ぎずに曲作りをしているからだと思う。曲を作って、良ければリリースする。そのパターンだ。細かい心配は後からすればいいんだよ」

――今作のレコーディング・スタジオローン・スター・サウンド・レコーディング・スタジオはパンデミック中に作ったとのことですが、2年間かけて作ったのですか?

「うん、それくらいだな。2019年のツアー中に始めて、ほぼ完成というところまで来たのに、そこから9ヶ月間は全てが止まってしまった。で、2021年1月に完成したよ。いや待てよ、完成したのは2020年11月で、最初にレコーディングしたのはジョン・レノンのカヴァー曲“Mind Games”だった。ジョンの誕生日だったからな。その後、(本作の)デモを2021年1月に作り始めた」

――このスタジオの特に気に入っているところ、こだわったところは?

「最初は全然こんな感じじゃなくて、普通のスタジオみたいだったよ。パンデミック中にここに何度か足を運んだのを覚えてる。今のこういう色合いじゃなくて全然違う感じの、無味乾燥な灰色と黒。ほんと、普通のレコーディング・スタジオと変わらなかった。俺がそれが大嫌いだったんだよな。で、「こんな場所で時間は過ごせない。こんな場所にいても楽しくない」と。冷たい感じで、何のヴァイブも感じられなかったしな。ともあれ、だったら内装を変えればいいわけで。パンデミック中は時間もたくさんあるから、70年代のスタジオをいろいろググって、で、こういう内装にしたんだ。今は気に入っているよ。一番重要なのは、自分が気分よくいられる場所にすること。くつろげる場所になったから、今じゃよくここで時間を過ごしてるよ。何も作業していない時ですら、食事をしたり、少しギターを弾いたりしてる。とんでもなく素晴らしい場所だよ。俺とあそこのあいつ(注:スタジオのコントロールルームにいるスタッフ)、プラスそのほかの2人でゼロからデザインしたんだ。ただの空っぽの部屋で、レコーディング・スタジオじゃなかったからな。見ろよ、あそこにあるのは俺が長年かけてコレクションした機材一式さ。スタジオをゼロから作り、そこで自分のアルバムを作る……最高だよ、ほんと」

――あの桜の木もいいですね。

「俺があそこに置いたんだ。その理由は俺自身にもわかんないけどさ」

――この素晴らしくいかしたスタジオ名をつけた理由は?

「ローン・スター(Lone Star)だろ? 保険会社みたいな名前だけどな。この名前にした理由は、俺が孤独を好きだから。自分の好きなことを好きなようにやるから、一匹オオカミだってよく言われる。で、ローン・スターは空にあるロンリーなスターだ。スタジオの名前としていかしてるだろ」

――素晴らしい名前です。

「ありがとう」

――アルバム・タイトルの『カウンシル・スカイズ』は自宅のコーヒーテーブルにあった本の名前からとったと聞きました。元々あった“Council Skies”という曲の原型を、この言葉をタイトルに決めて完成させたことが作品の全てにつながったとラジオのインタビューで答えています。とはいえ、「カウンシル」という言葉の持つニュアンスが日本人には馴染みが薄いため、カウンシル・スカイズという言葉に出会った時のあなたの感動をもう少し詳しく教えてもらえますか?

「そうだな、英国には政府が建てた住宅があって、そこに労働者階級の人々が非常に安く、または無料で住んでるんだ。何棟も並んで建っていて、Council Estates(公営住宅団地)と呼ばれてる。で、カウンシル・スカイズはそんな公営住宅団地の上に見える、空のことさ」

――タイトルを見た時にどのような感覚になりましたか?

「俺はマンチェスターの公営住宅団地で育っているから、俺にとってのカウンシル・スカイズは……俺は空想するのが好きで、俺の夢は全部カウンシル・スカイズの下で生まれたんだよ。よく空想にふけってたんだよね。だから、俺にとってこのタイトルはそういう意味なんだ。アメリカ人にもよく分からないタイトルだろうな、それって悪くないね。日本人も、きっとどういう意味か深く考えるだろうと思ってたよ。『カウンシル・スカイズとは何だろう?』ってね。公営住宅団地の上にある、空のことさ。日本に同じような建物があるのか知らないけど」

――日本にも似たような建物がありますね。

「そうか、あるのか。じゃあ、そういうことだ」

――“Pretty Boy”について。この曲は歌詞がシンプルなのにとても深くて、あなたの詩人としての才能に改めて感銘を受けました。特に「I wanna change my star sign」というフレーズが見事ですよね。

「な、最高だろ。誰一人として気づいてくれなかったから、ガッカリしてたんだ。ほんと、素晴らしいフレーズなんだよ。今は、何か不満があるとそれを変えれば良いという社会だろ? 見かけや自分の個性も変えられるし、とにかく何でも変えられる。それで、誰かと『それだったら星座も変えられるだろう』って話になったんだ。彼らは『いや、それはできない』って。俺が『何で?』って聞くと、『変える必要がないだろ?』って。だから俺は「だったら、何で他のことは変えたいと思うんだ?」って答えたんだ。このフレーズは、そんなことから始まってる。最近はみんな、本来の自分から逃げてるような気がするんだよな。で、『I wanna change my star sign』ってのは賢いフレーズだと思った。でも、そう思ったのは俺だけだったみたいなんだよ(笑)」

――ちなみに、何か違う星座になれるとしたら何になりたいですか?

「獅子座だね。そりゃ、変われるとしたらライオンになるだろ。ライオンか蠍だな。そういった星座だな。でも、ちょっとの間だけだね。自分が双子座なのは気に入ってる」

――“Easy Now”は、あなたが書くこういうミドル・テンポのギターロック・バラードは本当に胸を打つ、と改めて痛感させてくれる曲でした。ミュージック・ビデオでは、主人公の女の子にあなたが寄り添う出演でしたね。自分が主人公になるのではなく、主人公に寄り添う存在として登場するのはあなたのアイデアですか? 主人公として登場しようとしなかった理由は?

「それは、単に俺がビデオが大嫌いだからだ。出演すること自体が大嫌いだ。違和感があるし、単純に好きじゃないんだよ。でも、少なくとも1曲か2曲のビデオに出るとスタッフに約束したからさ。どうしてだろう、大嫌いなんだよ……ビデオに出ている自分がバツが悪そうに見えるし、冷たく見えるしな」

――無理やり出演させられたようなもの、と。

「ま、そんなところだ」

――誰かの人生を応援する存在であればいい、という悟りの境地のようなものを感じましたが……。

「俺はエゴのない人間だからな、ブッダみたいに。ブッダよりももっと優れた存在だ。もっと哲学的だしな。シンプルに、俺はいいやつなんだよ。あらゆる面においてね。それは否定できない事実だな」

――「カウンシル・スカイズ」について、このタイトルの言葉に象徴されるような、あなた自身の昔のこと、子供の頃のことを思い出すようなきっかけが何かあったんでしょうか。

「や、そうじゃなくて、これは休暇を過ごしてたイビサで書き始めた曲さ。だからラテンのリズムの影響が出てる。その後で、ピート・マッキーの例の本のタイトルを拝借したんだよ。その時はまだ歌詞はそれほど書いてなくて、曲のアレンジを肉付けしているところだった。で、公営住宅団地に住む2人の恋人たちのことを題材にした歌詞にしたらいいんじゃないかと思いついたんだ。アーバン・コンクリートに住む美点を探そうとしてる2人のことをね」

――日頃からよく昔のことを思い出します?

「作曲中には思い出さないな。重要なのはチューンで、俺にとってはメロディーとチューンが一番重要。歌詞は、それをサポートして、かつそんなに悪いものでなければ俺は満足だよ。俺はいつも、後ろを向くより前を向いて生きてるからね。後ろを向いて生きるのは健康的じゃない。30年前に書いた曲をツアーで演奏してる時にはよく思い出してたけど、でもまあ、過去のことを思い出すのはそれで十分だよ。自分がアルバム作りをしてる時には、過去に何があったかなんて考えもしないしな。俺は今を生きて、今のことを考えてる。だから、全て無意識なんだよな。インスピレーションにまかせてる。その時にたまたまそうなる、って感じだな。もちろん全部ではないけど、ほとんどの曲はその時に得たインスピレーションで作られてるんだ」

――“Think of a Number”のメランコリックで狂おしいメロディーがグルーヴと共存する感覚は、ノエル・ギャラガーの音楽を聴く喜びを改めて実感させてくれます。この曲がアルバムの最後に来た理由は?

「ああ、オープニング・ナンバーにすべきだったかもな。他の収録曲ほどに気に入ってなかったんだ。でも、いい曲だとは思っていて、捨てたくなかった。そう気づいた時には遅かったな。この作品をスタートさせるほど強力な曲だとは、思ってなかったんだ。派手なギター・ソロがあって、わかりやすいスタジアム・ロックみたいで、“Everybody’s On The Run”とか“Riverman”みたいな感じの曲だよな。歌詞に関して言えば、この曲の方がオープニング曲に適してると思う。“I’m Not Giving Up Tonight”のメッセージの方が締めくくりの曲としては適してる。今、変えられるんだったら変えるけど、もうどうするか最終判断を下して変更できないんだよな。まあ、そうは言ってもあまり関係ないかな。だってみんな、アルバムを最初から最後まで聴くなんてことないだろ。つまらないよな」

――幼い頃、空を見て未来を夢見ていた時の音楽への想いと、2023年の現在の音楽への想いには、違いがあって当然だと思います。改めて今、既に音楽を通して多くの人の人生を救い、楽しい気持ちにさせたり寄り添ってきたあなたが考える、音楽というものの魅力は何ですか?

「10人の人が同じ曲を一度聴いたとしたら、そのうち半分はその曲が嫌いで、残りの半分はその曲を好きになる。俺にとっては、それこそが音楽の魅力だね。『この曲がアルバムの中で一番いい曲だ』と誰かが言っても、他の人にとっては別の曲が一番いい曲だ。音楽はリスナー次第。それぞれの人がどう聴いて、どう理解をするかが違うんだよな。俺は、自分にとってどんな意味なのかわかってる。アーティスト、ソングライターとして唯一望むのは……自分がソングライターとして感じていることと、リスナーが自分の作ったその曲を聴いた時に感じることに何かつながりがあればいいと願ってる。無理矢理そうすることはできないけど、ほんとそれだけだよ。そんなに不思議なことでもないだろ。そう、俺にとって音楽は、自分が幼い頃から自分の人生にある、3つか4つの重要なことのうちのひとつだ」

――では次に、ポール・ステイシーのことをうかがいます。

「あのろくでなしのことか」

――今回はポール・ステイシーがあなたとの共同プロデューサーとして名を連ねています。彼とは2000年以来の長い付き合いですよね。

「長すぎるくらいだよ。あいつのことをこの何年間も追い払おうとしてるけど、悪臭みたいにしつこくまとわりついてくる」

――オアシス『スタンディング・オン・ザ・ショルダー・オブ・ジャイアンツ』のエンジニアの頃からの付き合いですよね。

「そう、その通り。それとキーボード・プレイヤーとして『ビィ・ヒア・ナウ』ツアーにも参加してるよ」

――今回その長い付き合いの彼にプロデュースを頼もうと思った理由は?

「ポールは素晴らしいギタリストだし、何よりもまず彼は俺の友人で、とても気が合うんだ。2人とも似たような音楽が好きだけど、彼にはジャズのセッション・ミュージシャンのバックグラウンドがあり、明らかに俺はそうじゃないよな? それから、彼は優れたエンジニアでもある。知り合った時はそこまでのエンジニアじゃなかったよ。でも1997年から一緒に仕事をしてきて、俺はポールを崇拝してるし、彼は俺の一番良いところを引き出してくれるんだ。俺にとっては、その人がどんな技術を持っていようがそれはどうでも良いこと。大切なのは、スタジオにいる全員と仲良くできることなんだ。そうすることで、最高の作品が作られる。彼は有能で、俺は大好きだ。それに、とんでもなく素晴らしいギタリストだよ。これまでも俺のアルバムで見事な演奏を披露してくれている。“Riverman”のソロや、何だったっけな、あの曲のタイトルは……“The Girl With The X-Ray Eyes”でも弾いてるし、あと……“There She Blows!”や“Love Is A Rich Man”でも弾いてる。“Black Star Dancing”もそうだな。俺のソングライティングと彼の曲作りに対するインプットこそが、ハイ・フライング・バーズの要になってるよ。でも、そんなことあいつに言うなよ? 必要不可欠な存在だと思わせたくはないからさ」

――ところで、曲のタイトルにもなっている「open the door, see what you find」という印象的な言葉はどこから来ましたか?

「これは、ロックダウンから来てる。当時は、誰も外に出て街中を歩くのを怖がってたからな。これは特別でも何でもないフレーズだ。曲のコードも、シンプルだけど凄くキャッチー。誰が言ったのか知らないけど、要約すると……ある年齢になって鏡に映る自分を見ると、映っているその自分が自分の全てで、それ以上にならないことに気づく。で、俺も50代半ばになり、つまりはそういう年齢になったわけだ。この先の20年、30年であっと驚くことはもう起こらないだろう。これからも、今とそれほど変わらないはずだ。つまりこの曲は、そういうことや、それを快く受け入れてることを歌ってる。『I see all that I’ll ever know. I see all that I’ll ever be. And it’s warm outside』、 自分が自分であることを受け入れ、それに満足してる、ということを歌ってるんだよ」

――あなたは前向きな人間だとおっしゃいましたよね。

「うん、そういう人間だな」

――このフレーズは生命とか人生とか生き方に思いを馳せつつ、それでも歩み続ける人間そのものが愛しくなるような、このアルバムの内容を象徴する言葉だなと思いました。

「それと、人生のシンプルさだな。人は今、物事を複雑にしてるよ。人生が複雑になっていて、でも、人生はそんなに複雑なものじゃないんだ。シンプルなことが真実なのは、今でも変わらない。自分の愛している人との争いを最悪の状態にせずに乗り越えて、まともな仕事について、家族を養えていたら、人生それで満足だろ? アホな奴らが世の中を複雑で難しいことにしていんだ。『こんなことは言ってはいけない、傷つく人がいるかもしれないから』ってさ。何なんだよ、マジで。そういったアホどもは70年代だったら10分ともたないね。政府や権力者、それとインターネットで騒いでる馬鹿野郎たちのせいで、俺のような人間には人生がとんでもなく複雑になってしまった。それでも、何とかやってくしかないよな。だろ?」

――あなたはミュージシャンとして大成功を収めていて……。

「すごい大成功、だよな」

――それを考えると子供の頃のほとんどの夢はかなったと思います。

「あ、すぐにかなった。94年に全部かなった」

――叶わなかった夢はありますか?

「ないな。個人的なことでは、無い。仕事面では……そうだな、007の主題歌とか担当できたら最高だ。映画音楽やってオスカーをもらえたら、まじ最高だよ。それと、俺はグラミー賞に一度もノミネートされたことがない。30年以上も活動してきて一度もないんだ。だからそういうのがあってもいいよな。でもまあ、そういったことは全然考えないよ。俺のような年齢に達すると、医者に電話しないで1日を過ごせたら、それで幸せだ。これからもずっと曲を書いて音楽を作り続ける熱意を持ち続けられたら、それで十分満足だ。でも、そういうことは考えないね。あまり先のことや昔のことを考えたりせずに、今はこうしてプロモをやって、それが終わったらリハーサルしてツアーに出る。ツアーが終わる頃には新しい時代がまた始まる。またニュー・アルバムを作って、新しい時代が始まる。その頃にはまた5歳年をとって俺も60歳だ。ほんと、年寄りもいいとこだ」

――叶わなかった夢について歌った曲はない?

「ないな。今、そういう曲があったかは思いつかない。あるかもしれないけど、この時点では思いつかないな」

――今回、ディスク2にはジョン・レノン“Mind Games”とボブ・ディラン“You Ain’t Goin’ Nowhere”のカヴァーが入っています。これらの曲はそういった若き日の頃の思い出とのつながりで選んだのでしょうか? それとも?

「“Mind Games”は、もともとショーン・レノンがやっていたジョンの80歳の誕生日を祝うプロジェクトで、俺にも声をかけてくれたんだ。俺は“Mind Games”のカヴァーをやると約束してたんけど、参加するには時間が足りなくて。でも、インスタグラムでジョンの80歳の誕生日にそのカヴァーを少し披露したよ。で、それを完成させたんだ。嬉しいよ。もちろんこの曲は好きだけど、俺にとってそれほど特別な曲というわけじゃ無いかな。“You Ain’t Goin’ Nowhere”は、ボブ・ディランで……とんでもないよな、あの人に関しては何を言っていいのかわかんねえな。型破りなアーティストで、一番シンプルで……ボブ・ディランの曲は、聴いているととんでもないと思うけど、自分で演奏してみるとどんなにシンプルな曲でもとっても楽しいんだよ。ボブ・ディランはキングだね。彼こそキングだよ。俺がやったカヴァーは、BBCの番組に出ることになって……今はみんながカヴァー曲を聴きたいみたいでさ。もともと、この曲は自宅でリラックスしてる時に弾いてた曲なんだ。ニール・ヤングとかザ・ビートルズとかの曲を家で弾いて楽しんでる。それで、カヴァー曲をって話になったから、この曲をやってみた。別の時には“The Mighty Quinn”もカヴァーしたよ」

―― 日本のファンへメッセージをお願いします。

「日本のファンへのメッセージだね。最後にお前らに会ったのはずいぶんと前のことだよな。次に日本に行く時には、俺のために山ほどプレゼントを溜め込んでくれてるに違いない。必ずお前らに会いに行くからな。おそらく、今年の終わりごろには行けると思う。ま、それに関して俺は責任持てないけどな。俺は、元気でハッピーだ。もうすぐ素晴らしいニュー・アルバムをリリースする。お前らみんなも元気でハッピーでいることを願ってるよ。待ってろよ!」

インタビュー:妹沢奈美
通訳・翻訳:新堀麻里子

リリース詳細

Noel Gallagher’s High Flying Birds | ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ
新作アルバム
『Council Skies | カウンシル・スカイズ』
2023年6月2日(金)全世界同時発売予定
<完全生産限定盤A:2CD+ブラックTシャツ>  
2CD 全25曲収録 / Blu-spec CD2仕様 / ハードカバーブックレット付き / ステッカー封入 / Tシャツ(Lサイズ)封入  
価格:¥8,800(税込)  
品番:SICX-30167~30169  
Tシャツは以下3種類のうち1つをランダム封入  
① ブラックדロックンロール説”  
② ブラックx”俺最高“  
③ ブラックx”もう1枚買っちゃえよ”  

<完全生産限定盤B:2CD+ホワイトTシャツ>  
2CD 全25曲収録 / Blu-spec CD2仕様 / ハードカバーブックレット付き / ステッカー封入 / Tシャツ(Lサイズ)封入  
価格:¥8,800(税込)  
品番: SICX-30170~30172  
Tシャツは以下3種類のうち1つをランダム封入  
① ホワイトדロックンロール説”  
② ホワイトx”俺最高“  
③ ホワイトx“もう1枚買っちゃえよ“ 

<完全生産限定盤C:2CD+アーミーグリーンTシャツ>  
2CD 全25曲収録 / Blu-spec CD2仕様 / ハードカバーブックレット付き / ステッカー封入 / Tシャツ(Lサイズ)封入  
価格:¥8,800(税込)  
品番:SICX-30173~30175  
Tシャツは以下3種類のうち1つをランダム封入  
① アーミーグリーンx”ロックンロール説“  
② アーミーグリーンx”俺最高“  
③ アーミーグリーン x”もう1枚買っちゃえよ“  

<初回仕様限定盤>  
2CD 全25曲収録 / Blu-spec CD2仕様 / ハードカバーブックレット付き / ステッカー封入   
価格:¥4,400(税込)  
品番:SICX-30176~30177

『カウンシル・スカイズ』リンク:
https://lnk.to/NGHFBCouncilSkies

<ディスク1>   
1. I’m Not Giving Up Tonight | アイム・ノット・ギヴィング・アップ・トゥナイト   
2. Pretty Boy | プリティー・ボーイ
3. Dead To The World | デッド・トゥ・ザ・ワールド
4. Open The Door, See What You Find | オープン・ザ・ドア、シー・ホワット・ユー・ファインド   
5. Trying To Find A World That’s Been And Gone | トライイング・トゥ・ファインド・ア・ワールド・ザッツ・ビーン・アンド・ゴーン   
6. Easy Now | イージー・ナウ
7. Council Skies | カウンシル・スカイズ   
8. There She Blows! | ゼア・シー・ブロウズ!   
9. Love Is A Rich Man | ラヴ・イズ・ア・リッチ・マン   
10. Think Of A Number | シンク・オブ・ア・ナンバー   
11.Easy Now (Acoustic) | イージー・ナウ(アコースティック)※日本盤限定ボーナス・トラック

<ディスク2>   
1. Don’t Stop… | ドント・ストップ…   
2. We’re Gonna Get There In The End | ウィアー・ゴナ・ゲット・ゼア・イン・ジ・エンド   
3. Mind Games | マインド・ゲームス   
4. Pretty Boy (Instrumental) | プリティー・ボーイ(インストゥルメンタル)   
5. Dead To The World (Instrumental) | デッド・トゥ・ザ・ワールド(インストゥルメンタル)   
6. Council Skies (Instrumental) | カウンシル・スカイズ(インストゥルメンタル)   
7. Think Of A Number (Instrumental) | シンク・オブ・ア・ナンバー(インストゥルメンタル)   
8. I’m Not Giving Up Tonight (David Holmes Remix) | アイム・ノット・ギヴィング・アップ・トゥナイト(デヴィッド・ホルムス・リミックス)   
9. Think Of A Number (Pet Shop Boys Magic Eye 12” Remix) | シンク・オブ・ア・ナンバー(ペット・ショップ・ボーイズ・マジック・アイ 12″リミックス)   
10. Pretty Boy (Robert Smith Remix) | プリティー・ボーイ(ロバート・スミス・リミックス)   
11. Council Skies (The Reflex Revision) | カウンシル・スカイズ(ザ・リフレックス・リヴィジョン)   
12. Flying On The Ground (Radio 2 Session, 08.09.21) | フライイング・オン・ザ・グラウンド(ラジオ2セッション, 08.09.21)   
13. You Ain’t Goin’ Nowhere (Radio 2 Session, 08.09.21) | ユー・エイント・ゴーイン・ノーウェア(ラジオ2セッション, 08.09.21)   
14. Live Forever (Radio 2 Session, 08.09.21) | リヴ・フォーエヴァー(ラジオ2セッション, 08.09.21)

来日公演詳細

<日程> 
12/1(金) 東京ガーデンシアター   OPEN 18:00 / START 19:00 
12/2(土) 東京ガーデンシアター   OPEN 17:00 / START 18:00 
主催:TV 朝日/J-WAVE Info: HOT STUFF/SMASH 
12/4(月) 大阪フェスティバルホール  OPEN 18:00 / START 19:00 
主催:FM 802/FM COCOLO /Info:SMASH WEST 
12/6(水) 愛知県芸術劇場大ホール  OPEN 18:00 / START 19:00 
主催:ZIP FM /Info:JAILHOUSE 
*未就学児童入場不可 
<チケット料金> 
SS席 \15,000/S席 \13,000/A席 \11,000 
<チケット発売> 
・FAN CLUB 会員先行予約:5/29(月)17:00-6/4(日) 18:00 *抽選受付 
・SMASH FRIENDS 会員先行予約:6/1(木) 10:00-6/4(日) 18:00 *抽選受付 
・主催者先行予約:6/5(月) 10:00-6/18(日) 23:59 *抽選受付 
・イープラス最速先行予約:6/19(月) 10:00-6/25(日) 23:59 *抽選受付 
・プレイガイド発売: 7/1(土)詳細後日発表

更なる公演の詳細は以下のサイトで御確認ください。

https://smash-jpn.com/noelgallagher2023/

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