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メタリカは激しいロックに彩られた40年を経てもスロットルから拳を離す気配はない。4月14日にリリースされる2016年以来となる通算11作目の新作『72シーズンズ』でもヘヴィ・メタルの巨人は年齢を重ねても疲れ知らずであることを証明するように、ドライヴ感のあるリフ、マシンガンのようなドラム、怒りに満ちた歌詞を披露している。ジェイムズ・ヘットフィールドが説明するようにアルバム・タイトルは形成期である人生の最初の18年間を指している。これはベテランのバンドが思春期のエネルギーを取り戻そうと頭を悩ましたことを意味するわけではない。

「若返りの泉を求めることを意識していたどうかは分からないね」とラーズ・ウルリッヒはいたずらのような笑い声と共にサンフランシスコの自宅から『NME』に語っている。「言えることとしては59歳になっても居心地はいいということだよ。自分自身にとっても、メタリカのファンに対しても、まるで違うようなフリをする必要は感じてない」

リード・シングル“Lux Æterna”には1983年発表のデビュー・アルバム『キル・エム・オール』にも登場する「full speed or nothin」という歌詞があるなど、『72シーズンズ』にはバンドの輝かしい過去への言及があるが、総じてメタリカは若者の苦悩に対する新しい視点を見つけるために、年齢を経た上での知恵を使おうとしたようだ。「ジェイムズの歌詞にも、今のバンド全体にも、長所も短所も含めて今の自分たちに満足しているのが表れていると思う」とラーズ・ウルリッヒは語っている。「弱さや今の自分たちについての作品を出すのは、いまだに理解しようとしているからだよね。今の若者がいつか分かる日が来るなんて思っているなら、自分のこととして言えるのは、そんなことは絶対にないということだよ。歳を取ったら、より疑問がわいてくるかもしれない」

アルバムではどんな禁止事項もなく、鬱や誘惑、現実的な苦悩が扱われている。なかでも、“Screaming Suicide”という注目の楽曲の一つで、ジェイムズ・ヘットフィールドはセンセーショナルに煽ることなく、自殺というタブーな話題を扱っている。「口に出したほうが健全だと思う題材を扱っていて、メンタル・ヘルスの問題についてどう感じているかを表現してほしいとファンにも促しているんだ」とラーズ・ウルリッヒは語っている。「話題になればなるほど、自分は1人じゃなく、似たような大変な時期を数え切れない人が経験していると分かるんだ」

パンデミックのためにツアーから離れて自宅にいた2020年の前半に『72シーズンズ』は形になり始めたという。それぞれの自宅に隔離されている時にラーズ・ウルリッヒ、ジェイムズ・ヘットフィールド、ギタリストのカーク・ハメット、ベーシストのロバート・トゥルヒーヨは定期的なZoomのやりとりで曲のスケッチを渡し合うことになった。「世界中のみんなと同じように、今、何が起こっているのか、前例のない状況に違いを生み出すことができるか、見出そうとしていたんだ」とラーズ・ウルリッヒは語っている。「重々しいものよりもエネルギッシュで遊び心のあるアイディアに惹かれていった。アルバムのスピードや激しさにまで関係があるのかは何とも言えないけど、これらの曲を書いてレコーディングするのは間違いなく気分のいいものだった」

バンドがカリフォルニア州北のスタジオに集まって、対面でレコーディングを始めたのは2020年の年末だったという。当時もまだ、パンデミックに関する厳しい制限は残っていた。「僕らのスタジオには至るところにカメラがあって、映像を観てみると『全員がマスクを着けてるよ』なんて場面もあったんだ」とラーズ・ウルリッヒは信じられないといった様子で笑っている。「アルバム制作の最初の6ヶ月はマスクを着けていて、それぞれスタジオの端でソーシャル・ディスタンスを取っていた。その結果、新たな感謝の念が生まれたんだ。この2〜3年を経て、それを乗り越えてアルバムを作れたという事実に本当に感謝しているし、外に出てライヴをやるのが楽しみだよ」

スタジアムを揺るがすメタリカのスケールから言っても、新作を引っ提げたツアーは巨大な事業となる。今月から始まるM72ワールド・ツアーは世界各地の22都市を訪れて、それぞれの場所でまったく違う2公演を行うものとなる。「27通のメールのやりとりではいいアイディアだと思ったんだけど、4週間後に控えて、『一体、誰のアイディアだ?』という感じだよね」と長いリハーサルの開始を数日後に控えたラーズ・ウルリッヒは冗談を飛ばしている。「2年間で世界各地を回り、多くの都市では金曜日と日曜日に公演を行うことになる。まったく違うセットリストで、同じ曲が演奏されることはない。サポート・アクトも別の2組になる。フェスティバルに行くような感じだね」

6月には同じコンセプトをダウンロード・フェスティバルに持ち込んで、メタリカは木曜日と土曜日のヘッドライナーを務めることになる。「最後に出てから、だいぶ経っているからね。ドニントン・パークという歴史的な場所で行われる素晴らしいフェスティバルだから、曲が被らないというコンセプトを持ち込もうと思ったんだ」

この一つのバンドが二度演奏するというフォーマットを楽しみにしているかもしれない一人がボブ・ディランで、昨年12月、彼はメタリカのライヴを二度観たことが明らかになっている。「そうなんだよ」とラーズ・ウルリッヒは語っている。「ボブ・ディランが『NME』を読むかは分からないけど、彼に言いたいことが一つあるんだ。『ボブ、いつでも、世界のどこでも、メタリカのライヴには歓迎するよ。だから、楽屋に来て、挨拶させてください。会って、敬意を伝えたいんです』」

ボブ・ディランが実際に来るかどうかはともかく、この夏、生でメタリカを見る機会を楽しみにしているファンは世界中に数多くいる。ラーズ・ウルリッヒが指摘するように、その中には72シーズンズにも達していない人たちもいるかもしれない。「13歳や14歳の子がたくさん初めて観に来てくれるんだよ。自分たちのライヴには常に青春の要素があって、去年の夏にあった『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の現象もそうだよね。何もないところから、突然、若い世代にメタリカを紹介してくれることになったんだ」

新しいファンと繋がり続けるバンドの性質を考えると、10代のラーズ・ウルリッヒだったら、新作をどう思うのか考えずにはいられない。「18歳の僕だったら『72シーズンズ』のエネルギーとスピリットを評価するんじゃないかな」と彼は少し考えて語っている。「でも、メタリカが41年後も続いているという事実を理解できないと思うよ。僕らがバンドを組んで、繋がったのは、はみ出し者の不適合者で、一匹狼だったからなんだ。お互いのことを知って、一緒に音楽をやり始めた。これだけの持続力があるなんて誰も分かっていなかった。だから、18歳のラーズ・ウルリッヒはこんなアルバムをメタリカが出していることに驚くんじゃないかな」

メタリカの通算11作目となる新作『72シーズンズ』は4月14日にリリースされる。

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