Tom Pallant

Photo: Tom Pallant

サマーソニックで初来日を果たしたヤングブラッドのインタヴューをお送りする。先日、9月2日にセルフタイトルのサード・アルバムを完成させた彼だが、過去2枚の彼はどんな批判を受けようとも青臭く信念を貫くドン・キホーテのようだった。大言壮語だと言われようが、ワーキング・クラスじゃないじゃないかと言われようが、裸一貫で勇猛果敢に目の前のファンのコミュニティだけを信じて駆け抜けていく姿に新たなアイコンが登場した予感を感じた。しかし、新作『ヤングブラッド』は違う。彼は「死ぬ日のことを夢見る時がある」と歌い、批判に打ち砕かれそうになる自分までをもさらけ出す。自分の思考を信じて、あくまで理想と希望を掲げる彼は失われてしまったのだろうか? 対面でのインタヴューをできる貴重な機会だったので、そのあたりのことを訊いてみた。

――さて、9月2日にニュー・アルバムが出るわけですが、このアルバムから最初に公開されて冒頭を飾るのが“The Funeral”でした。この曲に込めた思いを教えていただけますか?

「そう、新作から最初に出した曲なんだ。すごくたくさん曲を書いたよ。新しいアルバムのサイクルに入る時っていうのは、特に俺の場合は同じところに留まっていたくないというのがあるんだ。前進したいし、進化したい。なんとしてでも新しい境地に向かいたいから、俺にとって推し進めることは大事なんだ。今回着地したこのサウンド(キッ、キッ、キッと聞こえる音を口で出す)は電車の音を再現している。自分の腹にある炎を表現したかった。このアルバムはピュアな状態を概ね描いているし、ヤングブラッドの感じていることを表している。だから、セルフタイトルになっているんだ。今の俺は今までにないくらいたくさんヤングブラッドのことを学んでいるからね。『ヤングブラッドとは何なのか』という定義としてというより、フィーリングや概念としてのヤングブラッドだよ。で、“The Funeral”を書き終わったら、自分が音的にどこに向かっているのがハッキリしてきた。自分の言いたいことの方向性も。この曲では……みんなを力づけたいんだ。みんなが自分らしくいられるためにね。俺は残りの人生を、みんなが自分らしく生きていられることの手助けに使いたいんだ。ヒット曲をいくつか出した後はもう関係ない、そんな感じで生きている訳じゃない。スタジアムでプレイして、みんなでひとつになりたいんだ。今の音楽には真実が欠けていると思うしね。俺はポップスターじゃないし、ロックスターでもない。俺は俺だ。みんなにも、自分が自分らしく生きることの大切さを知ってほしいんだ。それってファッキンなくらい美しいことだと思うんだよね……って答えが長くなっちゃったね。ごめん」

――“The Funeral”には「That I dream about the day I die」という一節がありました。非常にパーソナルな一節ですが、実際にそんな時があったのでしょうか?

「死という概念については昔からいろいろ考えていたような気がする。もし自分がいなかったらどんな感じなのか、自分の周りの人たちはどんな感じなのか、世間は何て言うのか。『ヤングブラッドはサブカルチャーを始めた。ヤングブラッドはムーヴメントであってカルチャーである』と言われるようになって、どんどん存在が大きくなっていった。そして、メインストリームに溶け込んでいった。メインストリームがこの辺にあって、そのメインストリームに溶け込んでいったサブカルチャーにとっては、メインストリームっていうのはダークな場所なんだ。というのも、人々がこのカルチャーにやってくるのは、受け容れられたい、誰かとひとつになりたい、愛されたいという気持ちがあるからなんだ。そんな同じ気持ちを持った人たちが集まって、メインストリームが無視できないくらい大きくなった。で、メインストリームが関与するようになると、オーセンティシティが問われるようになる。何でも疑問にして、こうあるべきだっていう意見もぶつけてくるんだ。それで……俺はいつも相手を蹴っ飛ばして(笑)、噛みつき返してくるやつがいるか様子を見るのが好きなんだ。蹴っ飛ばす相手がいる方が自分としてうまく機能する。世界が愛の空間になったらどれほど美しいことになるだろう。15歳でまだ学生だった頃も同じことを考えていて、それがファースト・アルバムを書くことに繋がったんだ。今回のサード・アルバムでも俺には同じことが必要だった。もし、俺がロックスターで天狗になっていたら、次に日本に行ったときにひっぱたいてやってくれ。そういうの、俺大嫌いだからさ。俺がここにいるのは土台を破壊するためなんだ。俺がここにいるのはポップスターを破滅させるため。俺がここにいるのはムーヴメントに力を与えたい、人に力を与えたいからなんだ。最高の生業だよね! そう言うと怖がる人もいるけどさ(笑)」

――日本からあなたのことを見ていて、過去の2枚のアルバムではみんなが恐れて言えないことを言うドン・キホーテのように見えていました。ティーンエイジャーを救うヒーローなのだと。

「うわぁ、クールだね」

――あの当時は恐れはなかったのですか?

「その時点で、俺に起こり得るであろう悪いことはことごとく起こった後みたいな感じだったんだ。だから、怖いものなんてなかった。自分の言っていることがちゃんと分かっている若者ほど怖いものはないと思うよ。あるいは、知性に近いものが誰かを問うている若者だね。そういうレベルの人間にアクセスしたかったらパワフルで美しい人間でないといけない。多くの人はその人自身の持っている可能性に追いつくことができない。そうなる前に世間に打ちのめされてしまうからね、人と違うからといって。面白すぎるとか、声が大きすぎるからとか。ヤングブラッドはそういう人たちに力を与えるため、そして、その人たちがその可能性に見合った自分になってもらうため、そして、その人たちにパワフルで美しい人間になった実感を得てもらうためにここにいるんだ。俺たちは1人1人がそれぞれ個性を持っているからね。その人みたいな人は今までもこれからも出てこない。俺たちは1人残らずそういう人たちなんだ。そういうことをみんな知っておく必要がある。俺はそれってクールなことだと思うよ。そりゃ怖いかもしれないけど、その人だって自分の素晴らしさを発揮することで、他の人を怖がらせることができるんだから。ファッキンなくらいクールなことだと思う。俺はみんなにそういう人になってほしいし、これからの人生をそのために闘いたいと思っているよ」

――でも、今回のアルバムは少し変わったように見えたんですよ。ちょっと怖いこともできてきたというか、自分の弱さみたいなものもさらけ出しているような気がするんですけど、それはどう思いますか?

「もちろん、さらけ出しているよ。今、言われた通りだね。例えば……もしそうだなと思ったら教えて欲しいんだけど、これは最もピュアなアルバムだと思うんだ。ヤングブラッドが今まで出したアルバムの中でも一番ピュアなアルバムだね。というのも、この時点まで俺は本当の自分を出すことができていなかったんだ。自分が守られている気がしなかったし、人に傷つけられる可能性があるような気がしていた。今はヤングブラッドのおかげで……あ、ここで言う『ヤングブラッド』は俺というよりコミュニティのことなんだけど、本当の自分を出していいんだと考えている。俺にも弱さがあるということを知ってほしいし、今、俺がこういうことを経験している、ということを知ってほしい。それの何がクールかって、滅多にないことだってことだね。ポップスターのファンでも、一生そのスターの本当の姿はわからずに終わるもんだと思うし。その人たちは理想の世界を生きているから、間違いがあってはいけない。だから、本当の姿を知ることができない。俺はみんなに自分のことを知ってもらいたいんだ。アーティストの違いを知るのはなかなかないことだと思う。(本当の自分の姿は)ロックスターとかタレント・ショウとかそういうのじゃなくて、無から生まれるものというか、コミュニケーションや感情から生まれるものなんだ。分かるかな? テレビから生まれるものではないし、役員室やレコード・レーベルから生まれるものでもない。無から生まれたものなんだ。俺が『ハロー、今、俺はこんなことを感じているんだ』とスマホに向かって話しかけると、何百万という人々が反応してくれる。それで決まりだよ。ロックスターとかポップパンクとかそういうレッテルを俺に貼る奴らがいるけど、俺はそういうのは好きじゃない。俺はそういうのじゃないからね。全然違う。俺はパンクじゃないし、ポップじゃないし、ロックでもない。俺は俺なんだ。俺は自分に境界線を設けたくない。一部のファンですら、俺がある種のパンクなアイデアを体現しているということで俺をそう呼ぶことがある。でも、俺が体現したいのはそれじゃない。俺は表現や自由を体現したいんだ。俺はフレッド・アステアと同じくらいジョニー・ロットンも大好きだしね。メタルと同じくらいバレエも大好きだ。どれも表現だよね。俺がこういう格好をしているのは、ヴィヴィアン・ウェストウッドやジョニー・ロットンが大好きだからなんだ。あとセックス・ピストルズと、リチャード・スタークとクロムハーツも。そういうのが大好きだから。でも、これが俺だという定義にはならない。というか、俺を定義していいものなんてないと思う。毎日、なりたいものになる自由は自分の手にある。それってすごくクールなことだと思うんだ。俺は自分がやりたいものを1つの箱にまとめて入れているだけだ。だから、クールなんだと思うし、それに気づいてもらえてハッピーだよ。これは一番ピュアなアルバムで、弱さも出ているんだ。でも、弱さを見せることによって本当に強くなれるんだと思う」

――イギリスの『NME』のインタヴューでは「他のやつらは俺がしくじるのを待っている」と発言していますが、実際にどのようなことでこのように感じたのですか?

「ああ。去年はキツかったよ。その頃はメインストリームに溶け込んでいったんだけどね。俺はステージ上で自分の指揮を自分で執るけど、そのやり方は……俺のカルチャーだと怪奇で陳腐でロックンロールなんだ。セックス・ピストルズやデヴィッド・ボウイみたいな感じ。メインストリームにとって俺は不気味な存在なんだ。俺は嫌われることが、ものすごく大好きなんだ。理解されないことが嬉しい。だって、楽しいからね! それが大事だよ。俺は自己表現を説いて回っているんだ。だから、俺を嫌いなやつの存在をもし許さなかったら、俺は偽善者になってしまう。そこがクールなところなんだ。何か正しいことをやるとそういうことが起こるんだと思う。俺にとって一番怖いのは、みんなが『あー、ヤングブラッドね。クールじゃん』と言ったらそれっきりで、何も言うことがなくなってしまう状態になることなんだ。俺が望むのは『ヤングブラッドなんてものすごく嫌いだ』『ヤングブラッドが大好きだ』。それがあるべき姿だね。そこがスウィート・スポットだし、俺が何かやりたくなる原動力になる。それこそがクールなところだよ。『ふーん、ヤングブラッドね』……じゃなくてさ。そんなのはクソ喰らえだ。そうなったら俺はエレベーター・ミュージックになってしまう。エレベーターで俺の曲がかかるなんてごめんだよ」

――これまでに言われて一番キツかった批判というのはどういったものですか?

「これまでに言われて一番キツかった批判か……批判はいろいろされるけどあまり気にしていないんだよね。よくあるのが『楽器を弾けない』とか『曲を書けない』的なもので、作り物的に思われることもある。そう言われると傷つくよね。全部俺と、俺のバカみたいな大親友2人(笑)が一緒に作っているんだから。3人の馬鹿野郎たちが世界中を回っているんだ。俺にもソーシャル・メディアのチームがあったらなと思ったり、俺の代わりに全部やってくれるソングライターがいたら、俺の服を見立ててくれるスタイリストがいたらどんなにファッキンなくらい楽になるだろうなって思うけど……そういう人たちが肩代わりしてくれたらいいなと思うけど、俺にはいない。誰もいない。なのに、フェイクとか作り物だとかって思われるのが一番ムカつくよ。これは午前2時の俺だけど、日本時間の午前3時まで待ってから写真を投稿しないといけなかった。誰も信用ならないからね。ヤングブラッドは俺にとってあまりに大きな存在なんだ。そんな感じのことが一番ムカつくね」

――あなたは家族のことを言われることもありました。お父さんはノエル・ギャラガーやジョニー・マーにギターを売っていた有名なギター・ショップの店員だったみたいですね。お父さんのことについて訊くことはできますか?

「そうそう、親父はギターを売っていたんだ。俺の祖父もミュージシャンだった。以前もどこかでこの話をしたことがあるけど……俺の曽祖父は戦争の後、クラリネット奏者として陸軍にいたんだ。曾祖父は陸軍でクラリネットとヴァイオリンを演奏していた。戦後はガソリンスタンドと金物屋を営んでいたんだ。で、俺の祖父と、祖父の兄弟だから……俺の大叔父になるのかな? まあいいや。俺の祖父とその兄弟は俺の曽祖父から楽器を教わった。そこにロックンロールがやってきて、エルヴィス・プレスリーやリトル・リチャードが人気になったから、祖父たちはヴァイオリンやクラリネットなんてやってらんないという感じになった。それよりピアノやギターをやりたくなったんだ。それで、祖父たちはイングランドの北部でバンドを始めた。その後、祖父の兄弟は医者になったけど、俺の祖父はロックンロールバンドをやりたいと考えた。で、イギリス中をバンドでプレイしながら旅していたんだ。そうして少しカネが貯まった。その頃、俺の一家は美容院と金物屋を営んでいたけど、カネを貯めた祖父はその金物屋をギター・ショップに改造してしまった。ギターが大好きだったからね。その頃、イングランド北部にはギター・ショップなんてなかった。ギターが欲しかったら、わざわざ郵便の通信販売でロンドンから取り寄せるしかなかったんだ。北部にはギター・ショップが必要だった。それで祖父はギター・ショップを北部で開いた。で、俺の親父はすごく若い頃からそのギター・ショップで働いていたんだ。本人はギターをやらないけどギターに夢中でね。芸術品を見るような目でギターを見るんだ。ギターを手に取るとこんな目になって、面白いよ。それくらい大好きなんだ。親父はその後店を継いだ。少年時代の俺は学校から帰るとギター・ショップで働いていた。ファミリー・ビジネスだったからね。文字通り現金のやり取りをして、店が終わったら煙草を吸って、店ではギターを売って……そういうことをやっていたんだ。学校が終わったら、店で働いて、20ポンド稼いだらオアシスのアルバムを買ったり、クサを買ったり、クサを吸いながらオアシスを聴いたりして……翌日は店で働いて、ちょっとカネを稼いで、ちょっとクサを買って、グリーン・デイのアルバムを買う。そしてかける。そんな感じ。そのまた翌日は店に入って、ちょっとクサを買って、レッド・ツェッペリンのアルバムを買ってかける。そんな風に俺は音楽を学んでいったんだ。俺の家では音楽を知らなかったら発言権がないような感じだったからね。ディナーの食卓でもバンドの話が出てくるんだ。ジミ・ヘンドリックス、ストーン・ローゼス……そして、店で働いてカネを稼いだおかげで、俺はヒップホップに出会ったんだ。エミネムも、NWAも、パブリック・エナミーもそうやってレコードを買って出会った。俺のバックグラウンドはロックだったけど、ヒップホップとも同じように出会ったんだ。レディー・ガガもマドンナもデヴィッド・ボウイもそうやって知って、『おおっ』という感じだったよ。ギター・ショップから出てきたものとしては興味深いと思うけどね。というのも、ギター・ショップで働いていると、ギター・ショップっていうのはロック・ミュージックの古いイデオロギーを体現しているものなんだ。でも、それってほとんどロックンロールの意味に反しているよね。ルールブックに固執している訳だから。ロックは自由を意味するのにさ。だから、ギター・ショップ出身でロックスターになるのは難しいことだった。俺にとって、アーティストになるためには、ルールブックに『ファックオフ』と言わなければならなかったから。でも、そのルールブックは、俺の家族全員が守っていたものだった。親父が医者だった方がよほど楽だったかもしれない。それまでロックンロールに使われていなかったやり方でロックンロールをやろうとすると、いつもみんなと喧嘩する羽目になってしまう。分かってくれるかな? そういう興味深い生い立ちなんだ。クソ喰らえって感じだったよ。俺はヒップホップとロックとダンスを融合させたものがやりたかったけど、みんな『ノー、ノー、ノー、ダメだ』みたいな感じでさ。『ツェッペリンみたいな音を出せ』『ザ・クラッシュみたいな音じゃなくちゃ』『セックス・ピストルズみたいな音じゃないと』ってね。でも、俺は『そんなのクソ喰らえ!俺は全部やりたいんだ』と思っていた。分かるだろ? そんな感じで、とても興味深い生い立ちだったんだ」

――そうやって批判を受けることも多いあなたですけども、レジェンダリーなアーティストはあなたを支持する発言をしています。ミック・ジャガーからはギターをもらったそうですね。この時のことを教えてもらえますか?

「クレイジーだったよ……正直言って、ヒーローに出会えるときっていうのは心がぶっ飛ぶよ。ミック・ジャガー、ロバート・スミス、オジー・オズボーン、ブライアン・モルコ、ザ・フーのロジャー・ダルトリーにも数週間前に会った。なかなかクレイジーだよ。とにかく、そんな感じになるんだ。どうしてかは分からない。すごく不思議な感じ。部屋の中を歩き回っていたら、マネージャーが満面の笑みを浮かべているんだ。俺が『どうした?』って訊いたら、『ミック・ジャガーが会いたいって』って。『えええええ! 何てこった!』ってね」

――実際に会ってみて、どうでした?

「リヴァプールで会ったんだ。彼らのショウの後にね。ミックと、フレディ・マーキュリー。デヴィッド・ボウイ。俺にとってのトップ・フロントマンだと思う。とにかくエネルギーがすごいんだ。そういうロックスターに会うと、エネルギーのレベルでコミュニケートできる気がする。俺に言わせれば、それこそがロックンロールだから。ドラムキットやギターやサウンドがそうなんじゃない。フィーリングなんだ。まさにフィーリングなんだよ。それがあるからセックス・ピストルズも、ミック・ジャガー、レディー・ガガ、それからリンダ・ロンシュタット、スクリーミン・ジェイ・ホーキンズ、ジョン・レノン、エミネム、ドクター・ドレーが同じテーブルに着いて、この上なく美しい会話をすることができるんだ。大切なのはフィーリングだよ。そこにマイルス・デイヴィスが音を加えることだってできる。みんなロックンロールだから。俺はそんな感じに考えてきた。14歳くらいの頃からね。すごくクールな考え方だと思うよ。新作に“Tissues”という曲があって、ザ・キュアーの“Close To Me”がサンプリングされている。ロバート・スミスが使わせてくれたんだ。メールをやり取りして、実際に会いもした。俺がアイライナーを引いているのは彼の影響なんだ。感激したよ。プラシーボのブライアン・モルコに会ったときも、彼の電話番号をもらって、ショートメールを送った。すごいことだよね!『どうしてるかと思ってさ。元気かい?』なんてメールが来ると、すごくクールなことだよね。それからThe 1975のマット・ヒーリーにも会ったんだ。彼は稀なエネルギーの持ち主でね。お互いリスペクトしているんだ。『おお、おまえのやっていること好きだぜ』なんて言ってくれる。彼のやっていることは俺とはまったく違うけど……というか、ミック・ジャガーのやっていることともまったく違うし、トム・ヨークともまったく違う。みんな独自のことをやっているんだ。みんなの好き嫌いは別として、それぞれオーセンティックだ。心からリスペクトしているよ」

――まさにザ・キュアーのことを次に訊こうかなと思っていたんですが、どんなメールだったんですか?

「彼は全部大文字で打ってくるんだ。クレイジーだよね。初めて彼と会った時の話をするよ。NMEアウォーズの授賞式でのことだった。2019年、俺は黄色と黒の最高にクールな格好で出席したんだ。ファッキンなくらいクレイジーだよ。俺はある部屋でじっとしていた。俺は新人で、The 1975も同じ場所にいた。ロバート・スミスも。『うわぁ』と思ったよ。俺はここにいるべきじゃないなと思ったね(笑)。で、俺は座ってロバートのことをじっと見ていた。ビッグヘアでさ、『何だよあれ』と思った(笑)。彼が俺のテーブルに、俺のクルーと一緒にいるなんて。あとThe 1975も、コートニー・ラヴもいた。スロータイもいたし、いろんな人がいた。俺は授賞式にママを連れて行ったんだ。イングランド随一のロックな式典にママを連れて行った。俺はロバートを見つめていた。ただ彼に『ハロー。すべてにありがとう』と言ってみたいだけだった。でも、ママときたらロバートのところに行って、ロバート・スミスに話しかけるんだぜ?(笑)。『ノー!ノー!なんてことをしてくれるんだ』って感じでさ。きっと『うちの子ったら昔からあなたが大好きなんですぅ』なんて言っていたに違いない。そんなのノーだ。だから、俺もそっちに行って『ママ!……ロバート・スミス、ハロー』と言ったんだ。そこから会話が始まった。ものすごく楽しかったよ。最終的には『ママありがとう、ロバート・スミスに紹介してくれて』ってことになった。すごくクールだったよ」

――“I Cry 2”を初め、このアルバムでは非常に多くの悩みを抱えているあなたの姿が明らかになるわけですが、この3枚目のアルバムを作って辿り着いた心境というのはどのようなものなのでしょう?

「そうやって訊いてくれると、なんだか不思議な感じだけど(笑)、アルバムっていうのは必ずキャリアのひとまとめで、毎回欠かさず自分のマークを入れないといけない。アーティストはいつもこう言うんだ。自分の書いた“Born Dead”という曲があったとする。これを出すときには必ず自分のマークを入れないといけない。意味わかる? これを作り終わったときは喜びを感じたね。出来上がった実感があった。“I Cry 2”なんかはクールに仕上がっているしね。サウンドで実験できたし……俺がレディオヘッドの『キッドA』の影響を受けていることを知らない人は多い。リバース・スネアやリバース・ベースラインなんかすごくクールだよね。“The Boy In The Black Dress”がアルバムを締めくくる訳だけど、あれを書いたときは作り終わった実感があった。文字通り椅子から起き上がって『完成だ』と言ったからね。それって珍しいことなんだよ! いつもだったら俺を椅子から引きはがさないといけないんだから。俺はいつも自分に質問をするんだ。いくつかの質問をね。これはリアルか、本物なのか、他の人に歌えるものなのか。2500万年後、この世界が吹っ飛んだ後に宇宙人がこのアルバムを見つけたとして……俺が誇りに思うかどうか。そういう問いに答えられたら完成だ。で、今回は『ああ、いいと思うよ』が答えだった。ってことで次に進める訳だ。特に最初の2作のアルバムはプレッシャーだった。何もかもがね。でも、最高のアルバムには、フィルターのかかっていないセンシティヴな表現があるべきだと思う。やろうじゃないか、そして出す、出す、出す、出す、出す……そうやって命を吹き込んでいくんだ。デヴィッド・ボウイもそうだったんじゃないかな。今はもう彼はいないけど、彼がアルバムを出すときは、1時間の中でアルバム20枚分のことをやっていた。それぞれのアルバムの中の曲がフィーリングを体験しているんだ。ヤングブラッドの場合は2つと同じアルバムを作りたいと思わないね。『21stセンチュリー・ライアビリティ』は怒っているし、ナイーヴだけど、それでいてファッキンなくらいインテリジェントだ、と思ってほしい。『ウィアード』は堂々としていて華やかでファッキンなくらいセクシャルでクレイジー。そして『ヤングブラッド』はピュアでドライヴ感があって、ファッキンなくらい80sでニューウェイヴ。さらに次のやつは次のやつで……その時点の匂いがあるようなものにしたいんだ。元カレや元カノの香水の香りみたいな感じかな、あるいは食べ物みたいに、どこかに連れ戻してくれるような感覚のあるものをね。アルバムはそういうものであるべきだと思うんだ。特定のフィーリングに連れ戻してくれるようなものだね」

リリース詳細

ヤングブラッド
ニュー・アルバム『ヤングブラッド』
2022年9月2日(金)発売
UICS-1396 / 2,500円(税別) / 歌詞・対訳・解説付
https://umj.lnk.to/Yungblud_YUNGBLUD

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