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ステレオフォニックスは多くのバンドが夢見るだけで終わってしまうような類の長いキャリアを誇っている。25年以上を共にしてきたウェールズ出身のロッカーたちは12作目のスタジオ・アルバム『ウーチャ!』をリリースしている。とはいえ、当初はこのような計画ではなかった。

嬉しい偶然の産物としてアルバムは生まれることになったが、フロントマンのケリー・ジョーンズ率いるバンドの当初の目的は、四半世紀を共にした記念として2作目のグレイテスト・ヒッツ・アルバムを作ることだった。ところが、ケリー・ジョーンズが楽曲のアーカイヴをくまなく検討するためにスタジオに入ると、物事が劇的に方向転換していったのだ。彼が見つけたのは過去のアルバム・セッション中に録音されたマテリアルの宝の山で、その中には2013年の『グラフィティ・オン・ザ・トレイン』や2019年の『カインド』向けに録音されたもののお蔵入りしたものもあった。

発見した音源がインスピレーションとなり、彼らはベスト盤の代わりにまったく新しいアルバムに取り組み始めたのだ。甦った楽曲はすべてが新作に収録された。その結果、『ウーチャ!』はオープニング曲“Hanging on Your Hinges”のストレートなロックンロールのイントロから、親密で驚くほど率直な自叙伝的チューン“Right Place Right Time”まで、様々な音楽スタイルに満ちたヴァラエティ豊かなアルバムとなった。

『NME』による『イン・カンヴァセイション』でケリー・ジョーンズは自宅スタジオからインタヴューに答え、現時点で最も感情に訴える曲や今も自分で笑ってしまうというキツネについて書いた曲などが収録された『ウーチャ!』を作るに至ったものを語っている。そこで分かったことは以下の通りだ。

1. “Right Place Right Time”はケリー・ジョーンズにとってこれまでで最も率直な曲である


若き日のボクサー時代や家庭生活から、ステレオフォニックスの結成メンバーで初代ドラマーであるスチュアート・ケーブルとの出会いまで、ケリー・ジョーンズは率直な“Right Place Right Time”であらゆる事柄を取り上げている。この曲を書いたのは新型コロナウイルスのワクチンの1回目を接種した日で、アルバムのアートワークへのヒントを探しにロンドンを彷徨っていた日だったという。「本当に天気のいい日でね。最後はルーフ・テラスに腰かけてひたすらヴァースを書きまくったんだ。『ここまでどうやって来たのか』的な感じだね」と彼は振り返る。

この曲では自身の恋愛についても深く掘り下げている。「1曲で3人もガールフレンドを挙げるなんてやったことがなかったよ!」と彼は冗談を飛ばしている。「結構不思議だけど、この曲では予期せぬ発見と運命について歌っているんだ。こういう感じの曲は、今まで出会った人たちを一人残らず挙げていったら永遠に続くよね」

2. 元々デビュー25周年を記念してベスト盤のコンピレーションを出す予定だった


ロックダウンの間に、ステレオフォニックスのデビュー・アルバム『ワード・ゲッツ・アラウンド』が25周年を迎えたこと、そして2008年の『ディケイド・イン・ザ・サン』以来、グレイテスト・ヒッツを出していなかったことに気付いたケリー・ジョーンズは、記念に新しいベスト盤に着手することにした。ケリー・ジョーンズによると、通常彼らがベスト盤を作る時は2、3曲新曲を入れようとするのだという。「スタジオに入って、昔のハードディスクを漁ってみたんだ。まだ使っていない音源に気に入ったものがたくさんあったんだよ」と彼は語っている。

この当初の目的は、その後ケリー・ジョーンズがさらに古い楽曲を再発見したときに転換し、過去の音源を掘り下げたことが別のものへのスターティング・ポイントとなった。彼は残りのメンバーをスタジオに招き入れて、曲に取り組んだことをこう説明する。「気が付けば14~15曲あったんだ。それで『コンピレーション・アルバムなんてもういい。新しいアルバムを出してしまおうぜ』と言ったんだ。それがきっかけになったんだ」

3. アルバムはケリー・ジョーンズによるキツネへの復讐譚で締めくくられる


『ウーチャ!』では歌詞が非常に多彩であり、なかでも最もシュールな一時がアルバムの最後にゆっくりと展開する庶民的なナンバー“Jack In A Box”だ。「僕の車にいつも糞をしてくる、庭に現れるキツネを僕が殺したがっているというおかしな曲なんだ」と彼は語っている。「(ザ・ビートルズの)“Octopus’s Garden”の僕たち版みたいなものだね。これは生演奏で録音したんだ。(プロデューサーの)ジョージ・ドラクリアスが立ち会ってくれてね。トム・ぺティのバンドのマイク・キャンベルがバンジョーで参加してくれたんだ!」曲の仕上がりは信じられないほど素晴らしいとジョーンズは語る。「アダム・ジンダーニがアコースティックで素晴らしいギター・ソロを弾いているんだ。今も思わぬ幸運だったと思っているよ! 生演奏でたった3回録音したうちの1テイクをピックアップしたんだ」

この曲が成功への道を歩んでいるとケリー・ジョーンズに実感させてくれたのは、彼の子供たちの反応だったという。「かけるたびに子供たちが飛び跳ね始めるんだ。キツネに関するアニメ動画を探すか、アルバムの最後に固定するべきだなと思ってね。旅に連れていきながらも、最後は笑いで終わるんだ」

4. ステレオフォニックスにはZ世代のファンがたくさんいる


バンドをやるようになって何十年も経っても、若い世代が彼の音楽を発見していることにケリー・ジョーンズは圧倒される。ケリー・ジョーンズは最近バスの中で若いステレオフォニックス・ファンに遭遇したという。マスクをしていたにもかわわらず、ある少年に二度見されていたことに気付いたのだ。

「その子が振り向いて『あなたはケリー・ジョーンズですか? 今あなたの曲を聴いているんですよ!』と言うんだ。その子は(2003年発表ののアルバム)『ユー・ガッタ・ゴー・ゼア・トゥ・カム・バック』を聴いていた。多分17歳くらいだと思う。小脇にスケートボードを抱えていたよ。『あなたの音楽は本当に大きなインスピレーションなんです』と言って、バスからスケートボードで降りていったよ」ケリー・ジョーンズにとっては報われる、そして目を瞠るような出来事だった。「『あの曲を書いた時、彼は生まれていないじゃないか!』と思ったね」

5. グラストンベリーの予定は……まだない


ケリー・ジョーンズは2017年にグラストンベリー・フェスティバルの主催者であるエミリー&マイケル・イーヴィスからもう一度この伝説のフェスティヴァルへの出演オファーの電話を待っていると語っていたが、今日その話を振ったところ軽くあしらわれた。「グラストンベリーからの電話はないよ。ノーだ。(2002年の)土曜日の夜にピラミッド・ステージでやったけど、あれはあれ。戻る予定はないね」とはいえ彼らは自分たちのツアー計画に大忙しである。トム・ジョーンズとキャットフィッシュ&ザ・ボトルメンを迎えた大規模なスタジアム公演は今年6月に延期になった。「楽しみないいことが色々あるよ! 確か返金を申し込んだお客さんは1パーセントもいなかったんじゃないかな。それどころかチケットの枚数を増やしたよ。だから、6月にはさらにいい状況になると思う」

ステレオフォニックスのアルバム『ウーチャ!』は3月4日にリリースされている。

アルバムのストリーミングはこちらから。

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