PRESS

Photo: PRESS

ホワイト・ストライプスはたくさんの疑問を呼び起こす。あのド直球のブルースには厳密な色のスキームと姉/弟&妻/夫の関係性が必要だったのだろうか? ここ10年の間にサッカーの試合を訪れた者が本当はベースラインではないベースラインの輝きの恩恵を受けることを可能にしているのは何か? 技術的には窺い知れるドラマーのほうがバンドをよりよくするのだろうか? 音楽さえよければ、このどれも気にならないのだろうか?

実のところ、最後の疑問に答えるのは簡単だ。代表例はこちらだろう。彼らがリリースした6枚のアルバムの底流にはぎこちなさが存在する。ホワイト・ストライプスがベスト盤をリリースするという事実にオンラインで喜びの声が溢れているのも当然だろう。その衣装やミシェル・ゴンドリー監督によるミュージック・ビデオ、絶え間ない陰口とジェイソン・ストールスタイマーとの殴り合いの喧嘩を差し引いたとしても、ここ20年間で最高のロック・バンドの一つであることは間違いないのだ。

第6位:『ホワイト・ストライプス』(1999)

ホワイト・ストライプスのデビュー・アルバムには『となりのサインフェルド』的なところがある。振り返ってみても、その重要性を把握するのは難しいかもしれない。1999年のメインストリームのロック・シーンは退屈なポスト・グランジの唸り声と個性のないニューメタルの怒りに薄められていた。『ホワイト・ストライプス』のような生々しくウィットに富んだデビュー・アルバムが生まれたのはまさに驚異的であり、素晴らしいフィンガリングと爆発するアンプのそのサウンドはそんな中で産み落とされた。

『ホワイト・ストライプス』はレッド・ツェッペリンやジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンと近いが、過剰なほどの粗さと説明できない何かが付け加えられている。それは“Sugar Never Tasted So Good”の思いがけない甘さ(もちろん、それは意図的なものだ)かもしれないし、“The Big Three Killed My Baby”の2つの楽器だけで生み出すサウンドの大きさかもしれない。非常に素晴らしいスケッチであり、その後訪れるものはすぐそこだった。完全なる傑作はその出番を待っていたのだ。

第5位:『デ・ステイル』(2000)

ジャックとメグによる最初の2枚のアルバムがこのランキングの一番下にあるのはそれらが「最低」であることを示しているわけでもない。完全に確立されたところまで辿り着いたというよりは正しい方向に進み、世間を前に成長していくバンドの兆候を見てほしい。『デ・ステイル』はデビュー・アルバムで生まれたフォーミュラを荒らすのではなく、ストンプを鳴らし、ブルースをがなり立てる自身のガレージ・ロックを洗練させ、伸び伸びとやるためのスペースをあちこちに見つけるものとなった。ソングライティングは大きく飛躍し、チャーミングなピアノが主体の“Apple Blossom”や『レッド・ツェッペリンIII』風の“I’m Bound To Pack It In”などがその証拠だ。

『デ・ステイル』で傑出しているのはホワイト・ストライプスが既に自身のフィルターを極めており、それによって様々な影響をくぐりぬけながらも、すべてをホワイト・ストライプスのサウンドとして出すことが可能になったということだ。ブラインド・ウィリー・マクテルの“Your Southern Can Is Mine”のカヴァーもホワイト・ストライプスのオリジナルのようだ。本能的で屋根も揺らすようなロックのサウンドはよりタイトになり、境界はさらに広がり、それは中心で完璧に一つに結びついているのだ。

第4位:『イッキー・サンプ』(2007)

ロックの経典に刻まれている言葉としてこんな言葉がある。「基本に立ち返ると言っているバンドには注意しろ」基本的な解釈としてはこういうことだろう。「新しいことをやろうとしたが、誰にも気に入られず、アイディアも使い果たしたから、初期の音源を真似しよう」ホワイト・ストライプスにとってはそういうことではなかった。『イッキー・サンプ』の前作にあたる2005年発表の『ゲット・ビハインド・ミー・サタン』は感動的な船出だった。しかし、バンドは再び大騒ぎをしようと考えた。それこそが最後のアルバム『イッキー・サンプ』でホワイト・ストライプスがやったことだ。過去の8年間をなかったことにしてガレージ・ロックに戻るということではなかったが、『ゲット・ビハインド・ミー・サタン』のスタイルの揺らぎを筋肉質な直接性と結びつけたのだ。

“30MPH Torrential Outpour Blues”のような曲では粗さと洗練さの非常にいいバランスがあるし、傑出した曲“You Don’t Know What Love Is (You Just Do As You’re Told)”では豪華なスタジオを満喫している楽しさも伝わってくる。フェイセズのようなスタイルなアコースティックの最終曲“Effect And Cause”はホワイト・ストライプスのアルバムでは非常に珍しい曲となった。そして、バンドにとっては身を引くいい形となったのだ。

第3位:『エレファント』(2003)

『エレファント』を語るにあたって“Seven Nation Army”に終始することはできる。しかし、不朽のヒット曲がアルバム全体の評価を決めると考えるのは完全に的を外すことになる。そう、『エレファント』は過去3作よりもより洗練された作品だが、どう考えてもよくあるヒット作ではない。大ヒット作ではあるが、『エレファント』はダークで怒りとパラノイアに満ち、「オーオオオー、ジェレミー・コービン」と歌うよりも間違いなくディープな作品なのだ。

ジャック・ホワイトは度々過小評価されてきた言い回しをふんだんに使って、アルバムを意地悪く笑えるものにもしている。“Well It’s True That We Love One Another”にある「I got your number written in the back of my Bible(聖書の後ろに君の電話番号が書いてある)」という一節は、デトロイト出身の少年には無縁の南部らしいおかしな恋愛への言及となっている。ロンドン出身のシンガーであるホリー・ゴライトリーが「弟のようにジャック・ホワイトが大好きだわ」と歌う時、バンドが自ら作り出した神話に照らして考えると、まったく新しい意味を持つことになる。『ホワイト・ブラッド・セルズ』はバンドに新たな種類のファンをもたらすことになったが、失敗を心待ちにしているたくさんの懐疑論者も生み出すことになった。しかし、『エレファント』はそうした懐疑論者に前言を撤回させる見事な好例となったのだ。

第2位:『ホワイト・ブラッド・セルズ』(2001)

ホワイト・ストライプスのポスト・ジョン・スペンサー的な佇まいは最初の2枚のアルバムではまだ信じられないほど未熟なものだったが、このサード・アルバムではほぼ画期的なものとなった。生々しいエッジは残しつつも(“Expecting”の鋭い一撃はリノリウムも突き通すほどだ)、『デ・ステイル』からの成長は目覚ましいものとなっている。少なくともジャック・ホワイトは滝つぼで歌うボブキャット・ゴールドスウェイトのようにずっと歌う必要がないことが分かったのだ。一見即興のような“Little Room”も、“Expecting”の攻撃性と“The Union Forever”の陰鬱なテンションに挟まれると、とりわけカッコいいのだ。

『ホワイト・ブラッド・セルズ』で注目すべきはジャック・ホワイトのまったく違う2つのペルソナだ。“Fell In Love With A Girl”や“Hotel Yorba”の誠実な恋愛と“I’m Finding It Harder To Be A Gentleman”の厭世的なならず者が対峙する。前者は素晴らしい楽曲を生み出しており、特に“We’re Going To Be Friends”は言葉にできない不気味さがありつつも、美しくイノセントな子どもの頃の友情を描いた非常に素敵な楽曲となっている。『ホワイト・ブラッド・セルズ』を通して、彼らは明らかにその攻撃性を上げ、視野を広げ、正しい方向で刷新し、期待に応えてくれるバンドであることが明らかになったのだ。

第1位:『ゲット・ビハインド・ミー・サタン』(2005)

山の登り方は一つではない。ホワイト・ストライプスは最初の2枚のアルバムであらゆる手段を尽くして岩肌を這い上がっていった。次の2枚のアルバムではケーブルカーで快適に見事に辿り着いてみせた。『ゲット・ビハインド・ミー・サタン』は深く暗い森を彷徨いながら山頂を目指すアルバムとなっている。

『エレファント』で比類なきガレージ・ブルースをリヴァイアサン・レベルまで引き上げたバンドが次の機会に別の道に進もうとしたのも当然のことだった。ブランシェ、ロレッタ・リン、T・ボーン・バーネット(2003年発表の映画『コールド・マウンテン』のサウンドトラック)との仕事でジャック・ホワイトはゴシック・アメリカーナの意匠を文脈的なフレームワークとして使ったが、バンドはこのアルバムをその型に嵌めようとはしなかった。

リリース前の警告としてより静かな作品になると言われていたが、アルバムの幕を開けるのは未来的な騒々しいナンバー“Blue Orchid”だった。光沢のあるメタリックなディストーションが“The Nurse”のマリンバに道を譲ると、さらに事は面白くなり、魅力的な迂回路を探す冒険心がもたげてくる。

“My Doorbell”はバンドの楽曲でも最高の楽曲の一つであることをその時間を使って宣言してみせるが、すぐにそのライバルとなる“Forever For Her (Is Over For Me)”が登場する。そして、すべては残りのアルバムを打ち負かす非常に愛らしい“I’m Lonely (But I Ain’t That Lonely Yet)”へと収斂していく。『ゲット・ビハインド・ミー・サタン』はそれまでの4作に較べて迂回路かもしれないが、息をのむほど美しい眺めへの正しい道筋となっているのだ。

リリース詳細

WhiteStripesGreatest
『ザ・ホワイト・ストライプス・グレイテスト・ヒッツ』
12月4日配信スタート
全26曲収録
日本盤CD
2021年2月12日発売
※CD価格:¥2,500+税
※Blu-spec CD2仕様、歌詞対訳付き
1. レッツ・シェイク・ハンド | Let‘s Shake Hands ※1st AL『The White Stripes』収録
2. ザ・ビッグ・スリー・キルド・マイ・ベイビー | The Big Three Killed My Baby ※1st収録
3. フェル・イン・ラヴ・ウィズ・ア・ガール | Fell In Love With A Girl  ※3rd AL『White Blood Cells』収録
4. ハロー・オペレーター | Hello Operator ※2nd AL『De Stijl』収録
5. アイム・スローリー・ターニング・イントゥ・ユー | I‘m Slowly Turning Into You   ※6th AL『Icky Thump』収録
6. ザ・ハーデスト・ボタン・トゥ・ボタン | The Hardest Button To Button ※4th AL『Elephant』収録
7. ザ・ナース | The Nurse ※5th AL『Get Behind Me Satan』収録
8. スクリュードライバー | Screwdriver ※1st収録
9. デッド・リーヴス・アンド・ザ・ダーティー・グラウンド | Dead Leaves And The Dirty Ground ※3rd収録
10. デス・レター  | Death Letter ※2nd収録
11. ウィ・アー・ゴーイング・トゥ・ビー・フレンズ  | We‘re Going To Be Friends ※3rd収録
12. ザ・ディナイアル・トゥイスト | The Denial Twist ※5th収録
13. アイ・ジャストドント・ノウ・ホワット・トゥ・ドゥ・ウィズ・マイセルフ | I Just Don’t Know What To Do With Myself ※4th収録
14. アストロ | Astro ※1st収録
15. コンクエスト | Conquest ※6th収録
16. ジョリーン | Jolene ※3rd収録
17. ホテル・ヨーバ | Hotel Yorba ※3rd収録
18. アップル・ブロッサム | Apple Blossom ※2nd収録
19. ブルー・オーキッド | Blue Orchid ※5th収録
20. ボール・アンド・ビスケット | Ball And Biscuit ※4th収録
21. アイ・フォート・ピラニア | I Fought Piranhas ※1st収録
22. アイ・シンク・スメル・ア・ラット | I Think I Smell A Rat ※3rd収録
23. イッキ―・サンプ | Icky Thump ※6th収録
24. マイ・ドアベル | My Doorbell ※5th収録
25. ユー・アー・プリティ・グッド・ルッキング  | You‘re Pretty Good Looking (For A Girl) ※2nd収録
26. セヴン・ネイション・アーミー | Seven Nation Army ※4th収録

Copyright © 2024 NME Networks Media Limited. NME is a registered trademark of NME Networks Media Limited being used under licence.

関連タグ