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さて、なんて素晴らしい半年間だったろう。確かにまだ1年の半分しか過ぎてはいないのだが、既に素晴らしいアルバムたちで氾濫状態にある。ここで一度、それらのアルバムの歌詞に目を通して、楽曲に耳を傾けてみるというのはいかがだろうか? 素晴らしい時というのは、うん、本当にそう長くは続かないのだから(※今後のリリース・スケジュールを見る限り、そんな時間がこれからも続くことはほぼ確実だけれども)。まあ、とにかく! 愛に満ちたエレクトロニカがいい? 騒々しいパンクは? もしくは、完璧に近いインディー系のシンガー・ソングライターのほうがいい? それとも、政治的なヴェテラン・スカ・バンドがお好み? なんてこった。君はすごく幸運だね。

それではここに、(現時点で!)1月から『NME』のオフィスで大音量でかけられているアルバムの数々をご紹介しよう。

シャロン・ヴァン・エッテン 『リマインド・ミー・トゥモロー』

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ニュージャージー出身のシンガー・ソングライターであるシャロン・ヴァン・エッテンは、『リマインド・ミー・トゥモロー』からの最初の楽曲となる“Comeback Kid”で5年ぶりとなる帰還を果たし、本作では内観(“I Told You Everything”)から獰猛な一面(壮大な“Seventeen”)、ありのままの姿(“No One’s Easy To Love”)に至るまで、代わる代わる新しい側面を見せてくれている。

NMEのレヴュー:「“No One’s Easy To Love”に力強いベースラインやドラム・ビートが織り込まれているかと思えば、身に染みるようなシャロン・ヴァン・エッテンのヴォーカルが原動力の、耳に忍び込むような“You Shadow”は、レイドバックした一際目を引く楽曲になっている……これまでの彼女の作品の中でも、最も中毒性のある見事なアルバムだと言えるだろう」

ジェイムス・ブレイク 『アシューム・フォーム』

Amanda Charchian

Photo: Amanda Charchian


かつて不安定なエレクトロニカに自身のアイデンティティを見出し、多くのアーティストの楽曲にクレジットされてきたことで知られるプロデューサーのジェイムス・ブレイクは、積み重なった層の一つ一つが剥がれていくような大胆で輝かしいアルバムと共に帰還し、メンタルヘルスや新しい交際関係を思うがままに考察している。アンドレ3000が参加した楽曲も素晴らしい。

NMEのレヴュー:「『アシューム・フォーム』でジェイムス・ブレイクはかつてないほどに冴えわたり、焦点が定まっている……本作のオープニング・トラックで灯されるのは、彼が新たに見つけた光だ。かつて彼を南ロンドンから乗せてきた、霞みがかったアンビエントの夜行バスはもういない。そこには彼が見つけた新しい光が広がっているのだ」

スニークス 『ハイウェイ・ヒプノシス』

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これまでの(素晴らしい)ポスト・パンクのアルバム群から見事な跳躍を遂げている。エヴァ・ムールチャンによる通算3作目となる本作は、90年代のレイヴや彼女の出自であるポスト・パンクのシーンの上に描かれた、控えめに言っても最上級の作品である。短く凝縮された楽曲群からなるこのアルバムは、まるでバンガーがゆっくりと逆再生されているような1枚だ。

NMEのレヴュー:「『ハイウェイ・ヒプノシス』はスニークスによる最も長い(わずか28分だが)アルバムであり、細部にまで注意が払われたエレクトロニックの楽器群が何層にも積み重ねられた本作は、スニークス史上最もエモーショナルなアルバムである……自信に満ちたアーティストによる、実にユニークな作品だ」

ブリング・ミー・ザ・ホライズン 『アモ』

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キャリアも15年目に突入し、デスコアを標榜していたキャリアの初期が何光年も昔の話になったシェフィールド出身の彼らは音を探求する長い冒険に出発して、アンビエントやエレクトロ・ポップを取り入れた、ダニ・フィルスも参加したポップ・メタルのアルバムを生み出している。

NMEのレヴュー:「ブリング・ミー・ザ・ホライズンは本作で、自分たちがお咎めを受けることなくやりたいようにやれる力を持ったバンドであることを証明している。このアルバムを聴いた時に感じる驚きほど心が踊るものはないだろう。難しい理屈はないし、ヘヴィ・メタルでもない。ただひたすらにソングライティングが素晴らしいのだ」

ザ・スペシャルズ 『アンコール』

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ヴェテラン・スカ・バンドの現存するメンバーたちが、20年ぶりとなる通算8作目のアルバムの中で、EU離脱や緊縮財政政策、保守党支配、ブラック・ライヴス・マター、メンタルヘルスについて言及している。何という安心感だろう。彼らはメロウなスカやレゲエ、ファンク・ディスコという信頼できる手段を用いて、体制に中指を立てている。

NMEのレヴュー:「これらの楽曲は、社会における悪性腫瘍を切開し、冷酷にもハッキリとそれらを露出させることで、それらを治癒するためのものだ……私たちは今、『アンコール』のような真っ当に歯向かっていくアルバムをかつてないほどに必要としている」

アリアナ・グランデ 『thank you, next』

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ポップ・ミュージック最大のビッグ・ネームの1人となったアリアナ・グランデは、自身のキャリア・ハイとなった『スウィートナー』からわずか6ヶ月後に(ほぼ)サプライズでリリースした12曲からなる本作で、悲劇とトラウマを純粋なポップ・ミュージックの魔法へと変貌させている。

NMEのレヴュー:「とりわけ、『thank you, next』はセルフケアのドキュメントになっている。このアルバムは、未来に希望すら持てないような、悪しき時を切り抜けるためのガイドブックなのだ」

スタッツ 『アザー・ピープルズ・ライヴス』

Robin Pearson

Photo: Robin Pearson


この清々しいレトロ・ポップのコレクションは、スタッツの頭脳であるエド・シードによって監修され、1年間に及ぶジャム・セッションがまるでグルーヴ・アルマダがデヴィッド・バーンをやっているかのような首尾一貫したアルバムとして縫い合わされている。

NMEのレヴュー:「『アザー・ピープルズ・ライヴス』は驚くべきことを成し遂げている。平穏で落ち着いたアルバムでありながらも、その中核は実に不安定で、不安とミステリーで沸き立ち続けているのだ」

AJトレイシー 『AJトレイシー』

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『NME』にロング・インタヴューも掲載されているラドブローク・グローブ出身のAJトレイシーは、UKラップがドリル・ミュージックだけではないことを証明している。AJトレイシーは自らをスターにのし上げたグライムを携え、この喜びに満ちたデビュー作で最先端のヒップホップからガレージまでを飛び回ってみせている。

NMEのレヴュー:「グライムの国際的な爆発に始まり、あらゆる場面で期待を上回ってきた昨今のUKラッパーたちを写した、漠然とした現代のUKラップを記録したドキュメントとなっているAJトレイシーのデビュー・アルバムは、ここ最近における最高の収穫かもしれない」

リトル・シムズ 『グレイ・エリア』

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ノース・ロンドン出身のラッパー、リトル・シムズの前作『スティルネス・イン・ワンダーランド』はコンセプトが難解で、リスナーは高い集中力を要求された。一方、バンガーたちが短くシャープにまとまった最新作『グレイ・エリア』では、激しい音楽に素晴らしく迫力あるリリックが乗り(「私はドレスを着たボスよ!」ー“Boss”)、ヒップホップ黄金時代のプロダクションらしく仕上がっている。

NMEのレヴュー:「彼女はとんでもないレコードを作った。ついに当初の期待に応えたのである。このアルバムは現時点でのラップ・アルバム・オブ・ザ・イヤーだ」

フォールズ 『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート1』

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オックスフォード出身のフォールズは昨年、ベーシストのワルター・ジャーヴァースの脱退を発表し、現在は4人体制で活動しているが、最新作『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート1』においてもリズムの存在感は健在である。2部作の後半も今年中にリリースされるという『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート1』は、人々を躍らせながら、フォールズらしい音をより一層深めることにもかろうじて成功した、良質でファンキーなロック・アルバムだ。

NMEのレヴュー:「本作はまるで、プロテイン・ドリンクを携えた『アンチドーツ(解毒剤)』のようであり、『トータル・ライフ・フォーエヴァー』の反響音のようである……これが『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト』の序章に過ぎないのだとしたら、今年はフォールズの年となることだろう」

ソランジュ 『ホウェン・アイ・ゲット・ホーム』

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ジャジーで捉えづらい本作は、3分にも満たないような短くて酩酊感のある曲が断片的に収録されている。ソランジュの故郷であるテキサス州ヒューストンに捧げられたアルバム『ホウェン・アイ・ゲット・ホーム』は意見を二分するものかもしれないが、類い稀な才能による素晴らしい提言であることは間違いないだろう。

NMEのレヴュー:「『ホウェン・アイ・ゲット・ホーム』は賛美である。女性たちへの賛美であり、黒人文化への賛美である。そしてなにより、音楽への賛美なのだ……2019年にサプライズでリリースされたこのアルバムは、我々が気づかぬうちに求めていたものだったのだ」

デイヴ 『サイコドラマ』

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本名をデヴィッド・オロボサ・オモレギという弱冠20歳のラッパー、デイヴの素晴らしい才能は誰もが知るところだったが、彼のデビュー・アルバムがこれほどまでに素晴らしいものになると予想できた者はほとんどいなかっただろう。本作には文化的アイデンティティを模索する感動的な姿、十分な程のアティテュード、それに感情の爆発と共に起こる静かな内省の瞬間が詰め込まれている。

NMEのレヴュー:「今年リリースされた中でも指折りの大胆さを秘める今作の最大の強みは世界中の騒々しい怒りの中で、静かに熟考する瞬間を集めることができた彼の才能にあるだろう……デイヴから学ぶ教訓は間違いなく記憶の中に生き続けるはずだ」

ステラ・ドネリー 『ビウェア・オブ・ドッグス』

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オーストラリア出身のステラ・ドネリーのデビュー・アルバムは驚くほどに見事だ。これまでにリリースされていた唯一のEP『スラッシュ・メタル』に続く本作で、彼女はフル・バンドと共にレコーディングを行っているが、彼女の代名詞とも言える意地の悪い面白さと、感情が掻き立てられるようなソングライティングは健在である。

NMEのレヴュー:「魅力的な要注目人物であるオーストラリア出身のシンガーソングライターであるステラ・ドネリーのデビュー・アルバムは難解な主題を生意気に、軽いタッチでいなしてみせている」

ビリー・アイリッシュ 『ホエン・ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー?』

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ジェネレーションZを代表するスターであるビリー・アイリッシュは、個性的なデビュー・アルバムが信じられないほどの支持を得て大成功を収めている。ダークなトラップ・ビートに乗った暗く叙情的な楽曲は弱冠17歳のビリー・アイリッシュを世界中に知らしめ、しっかりとその名を刻んでみせた。

NMEのレヴュー:「ビリー・アイリッシュのその破壊的な性質が前面に出た『ホエン・ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー?』は記憶に残る革新的なデビュー作である。これからのメインストリームにおいて本作を模倣した作品が必死になって作られることは間違いないだろう」

オーティス 『カーヴ・オブ・アース』

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本名をサム・スウィンソンというオーティスによるアルバム『カーヴ・オブ・ジ・アース』は制作に15年を要したという。本作では破壊的なやり方で自身のヘロイン中毒との戦いについて語られているが、同時に語られている回復期間にまつわる救済の物語は、誰かにとっての宝物になるだろう。今作以上に正直な音楽というものは滅多にない。

NMEのレヴュー:「暗くも快いオルタナティヴ・カントリー・アルバムになっている本作はヘロイン中毒とそれについての後悔を、息を呑むような美しさで歌っている。この作品は非凡であり、人生を肯定した作品となっている」

フォンテインズD.C. 『ドグレル』

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パンチのあるリリック、急上昇するギターの音、新世代のアンセムたち。ダブリン出身のパンク・バンド、フォンテインズD.C.の乱暴なデビュー・アルバムは初期シングルの持つウィットと情熱を、さらに洗練されたフィルターにかけたような仕上がりである。

NMEのレヴュー:「アイルランド出身の吟遊詩人であるフォンテインズD.C.のデビュー・アルバムは大成功を収めている。ストーリーテラーの語りかける声と若々しい幻滅感の新たな在り方を唸る声が両立して響くアルバムである」

ワイズ・ブラッド 『タイタニック・ライジング』

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本名をナタリー・メーリングというワイズ・ブラッドの通算4作目となるアルバムは、素晴らしいの一言に尽きる。気候変動からもインスピレーションを得たという本作はワイズ・ブラッド史上最も気楽に楽しめるアルバムとなっており、エレクトロニックな風合いを帯びた、重い音像のソフト・ロック調バラードが収録されている。

NMEのレヴュー:「サマー・オブ・ラブはたくさんの流血とともに幕を下ろした。ワイズ・ブラッドとしての通算4作目となる本作で、ナタリー・メーリングはまるで汚れたプリズムを透かしながら牧歌的なあの時代を眺めているかのようだ」

ヴァンパイア・ウィークエンド 『ファーザー・オブ・ザ・ブライド』

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前作からおよそ約6年が経ち、マルチ奏者のロスタム・バトマングリの脱退を経て発表された新作でフロントマンのエズラ・クーニグは、ハイムのギタリストであるダニエル・ハイムやスティーヴ・レイシーをコラボレーターに迎え、より実験的で愉快な音楽を作り上げている。

NMEのレヴュー:「前作からおよそ6年ぶりに発表された本作はヴァンパイア・ウィークエンドにとって重要な再改革となった。ありがたいことに、そのゆったりとしたファンキーさからは、彼らが復帰作を重く捉えすぎていなかったことが伝わってくる」

リコ・ナスティ&ケニー・ビーツ『アンガー・マネジメント』

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リコ・ナスティの通算7作目となるミックステープであり、プロデューサーであるケニー・ビーツとの初のコラボレーションとなる本作は、リコ・ナスティ史上最も首尾一貫とした、楽しめる作品となっている。カルト・ヒーローのメインストリームへの到達を告げるアルバムだ

NMEのレヴュー:「清々しく中毒性のある本作は、リスナーたちを怒りを鎮めて、受け入れるまでの旅に連れ出してくれる。最終的にもたらされるのは安寧の感覚である。素晴らしいコンセプトであり、素晴らしいアルバムだ」

ケヴィン・モービー 『オーマイ・ゴッド』

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ケヴィン・モービーによる壮大な通算5作目となる本作では神秘と日常とが混じり合っている。音楽的には、彼のこれまでの作品で最も開けた壮大なものになっているが、歌詞の面でいえば、彼は物事を正直に、忠実に伝えている。結果として見事なまでに啓発的な楽曲たちが誕生しているのだ。

NMEのレヴュー:「アメリカ出身のソングライターは通算5作目となる神聖なアルバムで万物に疑問を投げかけ、つらい時期に寄り添ってくれるような見事な作品を完成させている」

スロータイ『ナッシング・グレート・アバウト・ブリテン』

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ノーサンプトン出身のラッパーであるスロータイは、痛烈なデビュー・アルバム『ナッシング・グレート・アバウト・ブリテン』の中で、一つの間違いも犯さなかった。1曲目 “Nothing Great About Britain” の中で、エリザベス女王のことを「クソ野郎」と言ってのけるのだ。何かが始まろうとしている。そうに違いない。

NMEのレヴュー:「ノーサンプトン出身のスロータイによるユニークなデビュー・アルバムは本物で、誠実だ。明るい栄光に満ちていて、今後の彼のキャリアが育っていく無限の可能性を示唆している」

アミル・アンド・ザ・スニッファーズ 『アミル・アンド・ザ・スニッファーズ』

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メルボルンが生んだ最も野生的なパンクバンドによる30分弱のアルバムは、不潔なパブの床に敷かれているカーペットよりもベタベタしているかもしれないが、彼らの楽しみな今後を予感させる危険な囁きを孕んでいる。

NMEのレヴュー:「現時点では『パブ・パンク』かもしれないが、遅かれ早かれ彼らがその次のステージに進出する可能性を大いに感じさせるものだ。ビッグではないし、クレヴァーでもないのかもしれない。しかし、最高にタガが外れているのだ」

タイラー・ザ・クリエイター『IGOR/イゴール』

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突如としてリリースされたタイラー・ザ・クリエイターの最新作であり傑作『IGOR/イゴール』には、2017年にリリースされた『フラワー・ボーイ』が持つオレンジ色のあたたかさはない。本作ではより大胆なビートに乗せて、より強烈な出来事について印象的に歌い上げている。

NMEのレヴュー:「『IGOR/イゴール』を聴くのが初めてでも51回目だとしても、彼のアドバイスを聞こうが聞かまいが、『IGOR/イゴール』は完成された不朽の名盤である。(タイラーが推奨するように)スマートフォンの電源を切り、テレビを消し、全神経を行き渡らせて集中させる価値のある作品だ」

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