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アークティック・モンキーズの通算6作目となる最新作『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』がバンド史上最も濃密なアルバムであることに疑いはない。月に建設されたレジャー・リゾートを舞台にしたコンセプト・アルバムである本作に織り込まれている、難解で予測不可能な様々な影響の数々は、同時に同じくらい興味深いものとなっている。ここに紹介するのは、アレックス・ターナーが本作で突入した成層圏に行くために、必要不可欠なアルバムや書籍、映画のリストである。

ザ・ビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』

形式:アルバム
発表された年:1966年
作品概要:カリフォルニア出身のバンドであるザ・ビーチ・ボーイズが生み出した間違いなく最高の瞬間であり、ザ・ビートルズに影響を与え、リリースと共にそのポップ・ミュージックを世に知らしめることとなった。
本作との繋がり:バンドを率いるブライアン・ウィルソンがセッション・ミュージシャンと共に作り上げた(他のバンド・メンバーはツアーに出ていた)レコーディング技術は、『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』に大いに影響を与えている。アレックス・ターナーはインタヴューの中で、アルバム制作中のセッションで「『ペット・サウンズ』をライヴ演奏で再現」したことを明かしている。


パルプ『ディス・イズ・ハードコア』

形式:アルバム
発表された年:1998年
作品概要:シェフィールド出身のバンドによる通算6作目の暗いアルバムで、しばしば本作がブリットポップの終焉をもたらしたと考えられている。
本作との繋がり:アークティック・モンキーズと同様、パルプは最も成功したアルバムとなった『コモン・ピープル』に続く作品として、期待を裏切るような物憂げで内省的な奥行きのないアルバムを発表し、ブリットポップに漂っていた「クール・ブリタニア」の風潮に水を差すこととなった。


『ブレードランナー』

形式:映画
発表された年:1982年
作品概要:80年代における最大のSF映画の一つで、ハリソン・フォードが主演を務め、リドリー・スコットによって監督されている。
本作との繋がり:アルバムの1曲目に収録されている“Star Treatment”で、アレックス・ターナーは映画オタクたちをからかうように「どういう意味だい、『ブレードランナー』を観たことがないなんて?」と歌っている。彼はこう言われたことを気に入ったそうで、「まだ数回しか遭遇したことはないんだけど、さらにその上を行くこともあるんだ。『どういう意味だい、『ブレードランナー』を一度も観たことがないなんて?』から、『なんてこった、君が羨ましいよ!』っていう領域というね」とアレックス・ターナーは『NME』に語っている。


キャム・エイブリー『ライプ・ドリームス、パイプ・ドリームス』

形式:アルバム
発表された年:2017年
作品概要:テーム・インパラのベーシストによるゴージャスなソロ・デビュー・アルバム。
本作との繋がり:アレックス・ターナーの近しい友人であるキャム・エイブリーは、『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』に参加しているのみならず、彼らが現在行なっているツアーにも帯同して新曲を共にパフォーマンスしている。キャム・エイブリーのソウルフルなポップがアークティック・モンキーズになぜこれほどまでにフィットしたのかについては、『ライプ・ドリームス、パイプ・ドリームス』を聴けば明白である。


レナード・コーエン『ある女たらしの死』

形式:アルバム
発表された年:1977年
作品概要:伝説的なクルーナーがフィル・スペクターをプロデューサーに迎えて作り上げ、評価が割れることとなったアルバム。
本作との繋がり:アークティック・モンキーズは本作のレコーディング中にフィル・スペクターによる壮大な「ウォール・オブ・サウンド」に耳を傾けている。「第一に僕がそれらのアルバムが大好きだっていうのがあって、自分のアルバムもそういうものにしたかったんだ」とアレックス・ターナーは『NME』のインタヴューで語っている。


ニール・ポストマン『愉しみながら死んでいく – 思考停止をもたらすテレビの恐怖』

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形式:書籍
発表された年:1985年
作品概要:文化が大衆に与える影響について、オルダス・ハクスリーとジョージ・オーウェルにテレビ社会などを結びつけるように綴ったこの書籍は、多くの人々に影響を与えることとなった。
本作との繋がり:アルバムの“Four Out of Five”には、本書に登場する「情報と行動の比率」という言葉が引用されている。「情報と行動の比率」とは、テレビなどのメディアから流入してくる情報をいかに消費し、私たちがいかに頻繁に与えられた情報に基づいて行動しているかについて示した言葉である。「あのフレーズを気に入っている理由の一つとしては、それを見れば誰もがすぐに言葉の意味するところが分かるっていうことなんだ」とアレックス・ターナーは『NME』に語っている。


ディオン『ボーン・トゥ・ビー・ウィズ・ユー』

形式:アルバム
発表された年:1975年
作品概要:洗練されたロックンローラーによる最も興味深い作品だとされ、ブルース・スプリングスティーンやプライマル・スクリーム、スピリチュアライズドのジェイソン・ピアースらに影響を与えてきた同作は、新たにアレックス・ターナーにも影響を与えることとなった。
本作との繋がり:アルバムに収録された8曲のうちの6曲をフィル・スペクターがレコーディングしている。また、アレックス・ターナーは2009年に『ボーン・トゥ・ビー・ウィズ・ユー』に収録されている“Only You Know”をカヴァーしている。


『8 1/2』

形式:映画
発表された年:1963年
作品概要:SF映画を作ろうとして不運に苛まれる有名な映画監督を描いた、1960年代を代表するメタフィクション。
本作との繋がり:『NME』の記者であるケヴィン・EG・ペリーは『8 1/2』について次のように綴っている。「アレックス・ターナーがいかにして『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』に辿り着いたのかを知りたければ、『8 1/2』はそれを解く鍵になる…言葉にしようと彼が躍起になっていたあらゆることが『8 1/2』には詰まっていたのだ。自分自身のスランプや、若かりし頃の思い出、そしてSF的なボキャブラリーは、自分を晒け出しすぎることなく突き進む手助けになった」


『インフィニット・ジェスト(原題)』

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形式:書籍
発表された年:1996年
作品概要:アメリカ出身のSF作家のデヴィッド・フォスター・ウォレスが著した革新的で風刺的な小説。
本作との繋がり:アレックス・ターナーはザ・ラスト・シャドウ・パペッツとしてのツアーを終えた後に『インフィニット・ジェスト』を読み始めたと語っており、同書の自己反映的な手法が本作のソングライティングに影響を与えたことを明かしている。

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