50位 サンダーキャット『ドランク』
サマーソルトを決める遊び心溢れるベースラインを聴けば、ケンドリック・ラマーからフライング・ロータスまで、誰もがサンダーキャットことステファン・ブルーナーと共演した経験があることに何ら驚きはしないだろう。独り立ちしたことを強烈に宣言することとなった『ドランク』で、サンダーキャットはハイになった自分の心を、自由なジャズと霧がかったR&Bの中に泳がせてみせる。一見すると23曲という楽曲数は厄介に感じるかもしれないが、ステファン・ブルーナーの魔法とケンドリック・ラマー、ファレル・ウィリアムス、そしてソフト・ロックのレジェンドであるケニー・ロギンスが入ったアルバムが他にどこにあるだろうか? そう、どこにもないのである。
49位 ローラ・マーリング『センパー・フェミナ』
イギリス最高のシンガーソングライターは、5作目の『ショート・ムーヴィー』でのエレクトリック・ギターを使ったスタイルに背を向け、女性について女性の視点から綴った圧倒的な9つの楽曲をもって、自身のフォークのパレットを広げて見せた。それぞれの楽曲の主題ーー萎びた友情、鋭い自己分析ーーにあったプロダクションを用い、極上のヴォーカル(“Nothing, Not Nearly”、“Wild Once”)に多面的なギター・ワーク(“Next Time”、“Don’t Pass Me By”)を陳列させたローラ・マーリングは、人並み外れたメロディー(“The Valley”)を書けることも示してみせた。毎度のことながら、ローラ・マーリングについては一つの疑問が残ってしまう。「次は何が来る?」
48位 ケイトリン・アウレリア・スミス『ザ・キッド』
プロデューサーのケイトリン・アウレリア・スミスの6作目、人間であるということに極限まで取り憑かれたイカしたエレクトロニック・アルバムの『ザ・キッド』は、人生における4つのステージ:生誕、青年早期、成人早期、年の功に分けられたコンセプト・アルバムだ。1枚のアルバムの中で、ケイトリン・アウレリア・スミスは天真爛漫で幼い自由な純心から、頑固な自己過信までを辿っている。クラフトワークのように、シンセと紛れもない素晴らしい機材を使って、彼女は解き放たれた少年のようなサウンドを鳴らしてみせる。まるで、奇妙で不可思議な51分間を通して、一人の成長過程を見ているかのようだ。
47位 キラン・レナード『デレヴォーン・セローン』
数十年後には、彼の初期の作品群が指し示す大胆な思考回路を持った神童としてキラン・レナードは広く名を馳せていることだろう。とりわけそれは、2年前に間もなくオープンするマンチェスター中央図書館でのショウを依頼された時に書かれたという、並外れてゴージャスなアルバム『デレヴォーン・セローン』で顕著に表れている。ライヴでも伝わってくるが、アルバムはキラン・レナードが敬愛する5つの文学作品で構成されている。もしかすると固苦しく、多くの人々によってハイブローだとして見逃されてしまうかもしれないが、そのスタイルと技巧は、キラン・レナードをスフィアン・スティーヴンスへのUKからの回答たらしめていると言える。
46位 ザ・エックス・エックス『アイ・シー・ユー』
エレガントに最小限まで切り詰められたポップによる2枚のアルバムを経て、ザ・エックス・エックスの3人は『アイ・シー・ユー』で自分たちのトレードマークのサウンドにダンス・ミュージックとR&Bを融合してみせた。ジェイミー・エックス・エックスのソロ作『イン・カラー』の要素は健在で、UKガラージのリズムと歓喜に満ちた楽器群のブレイクをかけ合わせてみせる。“On Hold”では、ダリル・ホール&ジョン・オーツによる“I Can’t Go For That (No Can Do)”のジルバ風のサンプリングが使われており、これもジェイミー・エックス・エックス自身のプレイブックからそのまま使われたものだ。これまでバンドの大部分を占めてきた脆弱性やメランコリックな多幸感は失われることなく、強力なビートやクラブ向けのコーラスを手に入れた本作は、よりいっそう楽しい作品になっている。
45位 ザ・ムーンランディングズ『インタープラネタリー・クラス・クラシックス』
現実世界に意味を成すものなどほとんどない。だから、聡明な変わり者であるザ・ムーンランディングズが自分たちの宇宙を創りだすことを許してやって欲しい。もしかしたらファット・ホワイト・ファミリーのソウル・アダムチェイスキーとリアス・サウディがいることにお気づきになるかもしれないが、ジョニー・ロケットという架空のバンドの体裁を取る彼らは、『インタープラネタリー・クラス・クラシックス』をもって、奇怪で、限界を超えるプログ・ロックを生み出してしまった。このパラレル・ワールドでは何だって実現可能で、オノ・ヨーコとヒューマン・リーグのフィル・オーキーのコラボレーションだってある。24時間ずっとこの世の終わりみたいに報道しているニュースや差し迫った核による終末にウンザリしてるって? それなら、これを聴いてみて欲しい。
44位 ザ・ビッグ・ムーン『ラヴ・イン・ザ・フォース・ディメンション』
ジュリエット・ジャクソン率いるザ・ビッグ・ムーンによる鮮烈なデビュー・アルバムは今年のマーキュリー・プライズにもノミネートされた。ノミネートが発表された際、彼女らは「すごくクレイジーなことね」とコメントしていたが、彼女らが賞賛に値する理由は誰の目にも明らかだ。ザ・ビッグ・ムーンは、ほとんどあらゆる面で勝利を手にしている。シンガロングできる楽曲(“Sucker”)を書いたし、エネルギーが持つ力を明確に自覚していることも示した(“Formidable”)し、ギター・ラインは快活(“The Road”)だし、そして彼女たち自身が本当に笑わせてくれる。“Cupid”で、如何わしいクソ野郎をいかに野蛮に模写しているか見てみよう:「彼は言ったの。『俺が今夜この地球を揺らしてみせる』。(精液を甘くするという)パイナップル・ジュースによるトロピカルなルビコン川を渡るのよ」
43位 フェニックス『ティ・アーモ』
フランスの4ピース・バンドであるフェニックスは、イギリスのEU離脱を受けて『ティ・アーモ』を制作し、2015年に悲劇的なテロの標的となったパリ中心部のライヴハウス、バタクランから数分の距離にある現在は使用されていない冬のオペラ・ハウスでレコーディングを行っている。彼らはとにもかくにも、煌びやかなシンセと跳ね回るポップに溢れた、ヨーロッパやチーズ、ジェラート、そして愛についての喜ばしい祝賀的なアルバムを作りだしたのだ。政治的な恐怖に楽しさをもって対抗した『ティ・アーモ』は、初めに抱く印象よりも反抗的で、今日的な意味を持っているのである。
42位 プロトマーター『レラティヴス・イン・ディセント』
デトロイト出身のプロトマーターは、今年かつてないほどに精力的だったように感じる。彼らにとって4作目となる『レラティヴス・イン・ディセント』は、現代のアメリカにおける悲劇であるフリント市の水質汚染問題を攻撃する“A Private Understanding”といった怒れる楽曲で幕を開ける。“Male Plague”から“The Chuckler”まで怒りが収まることはなく、フロントマンのジョー・ケイシーが冷笑的で魅惑的なパフォーマンスを見せている。もしも、私たちの今年のムードを集めたものを映し出したアルバムがあるとすれば、それはこのアルバムだろう。
41位 フィーヴァー・レイ『プランジ』
スウェーデンの実験的デュオ、ザ・ナイフが解散して2年が経ち、フィーヴァー・レイとしてソロ・デビューを果たしてから8年が経過した2017年、カリン・ドレイヤーがサプライズ復帰を果たした。『プランジ』は心酔することについてのアルバムで、誰かと恋に落ちる前に「飛び込む(“plunge”)」決断をすることを意味している。一度聴いただけでは、この主題を見つけ出すことは難しい。わずかな変化ではあるが、カリン・ドレイヤーの象徴的なヒンヤリとしたヴォーカルや差し迫る恐怖を暗示するようなエレクトロニクスはいまだ健在である。しかしながらより深く掘り下げると、『プランジ』の心情は、他の誰かに向けられているのだ。
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