10位 フランク・オーシャン『ブロンド』

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フランク・オーシャンの歴史的デビュー作『チャンネル・オレンジ』に続く、2016年最も期待されていた本作のリリースは、まさに青天の霹靂だった。前作よりも繊細でありながら、それでいてパワフルである。ジェイミー・エックス・エックスと制作したアルバム屈指の名曲“Ivy”でフランク・オーシャンはダウンビートを難なくディスコ調に落とし込み、「僕は夢を見てる気分だったんだよ/君が僕を愛してると言ってくれた時はね」と繰り返している。解放的な楽曲“Pink + White”にはビヨンセが参加し、“Skyline To”にはケンドリック・ラマーが参加しているが、両者の存在感はほとんど感じられない。事実、最もインパクトのあったゲストは“Be Yourself”のセリフの中で母親として助言するフランク・オーシャンの友人の母親だろう。


9位 チャンス・ザ・ラッパー『カラーリング・ブック』

Chance The Rapper-Coloring Black
シカゴ出身のラッパーであるチャンス・ザ・ラッパーの2016年は、カニエ・ウェストの“Ultralight Beam”への印象深いゲスト出演で幕を開けたが、それは単に始まりを告げたに過ぎなかった。5月には3作目となるミックステープを自主リリースしている。高揚感溢れるゴスペル調のヒップホップ・アルバム『カラーリング・ブック』は、スピリチュアリティと、パーティ・アルバムとしての安定の信頼感を与えてくれる。前者を求めるのなら“ Blessings”が甘い魂の救済をもたらしてくれることだろうし、後者を求めるのなら、弾むような”All Night”やジャスティン・ビーバーが参加した“Juke Jam”がこの上なくダンスフロアを満たしてくれる。もし感情のすべてを体験したいというのなら、バラードである“Same Drugs”や“Summer Friends”が、少し涙を流したい時のサウンドトラックにふさわしい。


8位 イギー・ポップ『ポスト・ポップ・ディプレッション』

Iggy Pop-Post Pop Depression
多くのレジェンドがこの世を去った2016年、なお堂々とした存在感を放ち続けるイギー・ポップは有難い存在だ。特に、半世紀にもわたる長いキャリアの中でも屈指の精彩を放つアルバムの制作に着手してくれたのは有難い。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オムやディーン・フェルティタ、アークティック・モンキーズのマット・ヘルダースによる、レザーに身を包んだバック・バンドはイギー・ポップをさらなる高みへ導くと、自分たちの洗練されたガレージロックのスタイルを混ぜ合わせ、パンク界のゴッドファーザーのイカした詩の前に差し出した。それは可笑しくてセクシーで、まさに死ぬほどクールだ。まさにイギー・ポップの如くね。


7位 ダイヴ『イズ・ザ・イズ・アー』

DIIV-Is The Is Are
レコーディング・セッションが放置されていた期間に、フロントマンのザッカリー・コール・スミスがヘロイン所持容疑で逮捕され、ドラマーは薬物中毒によって脱退し、ベーシストによる「4chan」への過去の書き込みが暴露された。ダイヴの2枚目のアルバム『イズ・ザ・イズ・アー』の構想期間が長く苦しいものとなったのは当然だろう。ザッカリー・コール・スミスがかつてこのアルバムは「不死への一撃」で、「僕がやろうとしていることの中でとりわけ重要なもの」であると語っていたが、それほどドラマティックなものではないにしても、『イズ・ザ・イズ・アー』は確実に肩を並べる他のどんな作品よりも遥かに素晴らしいものとなった。かつて成功を約束された若いバンドが自己崩壊から道を正そうとしたサウンドである。ダイヴが正しい道を進み続けることを祈る。


6位 デヴィッド・ボウイ『★』

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『★(ブラックスター)』は、まるで芝居かのような最後の眩惑的な芸当で、類い稀なき生涯とキャリアに幕を下ろしていった。デヴィッド・ボウイの27枚目となる最後のアルバムが、最終的にデヴィッド・ボウイのディスコグラフィーという大きなスキームの中でどう位置付けられるのかについて議論するのは大いに結構だが、アルバムの楽曲たちによる感情的な共鳴を否定することは不可能だろうし、ましてや制作過程でなされた入り組んだ計画を称賛せずにはいられないはずだ。歌詞に見られるオカルト染みた言及から、アルバム・ジャケットのアートワークに施された仕掛け、“Lazarus”の心が痛むようなミュージック・ビデオに至るまで、『★』は秘密や手がかり、謎に満ちたアルバムであり、今や天に召されている巨匠からの最後のメッセージにふさわしいものだった。


5位 ケイトラナダ『99.9%』

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カナダ育ちのプロデューサーであるルイ・ケヴィン・セレスティンことケイトラナダは、ヒップホップとハウスを融合した摩訶不思議なデビュー作で、J・ディラからオールド・スクール・ディスコに至るまであらゆる要素を取り入れている。超スムースな”Got It Good”において、クレイグ・デイヴィッドはデビュー作の『ボーン・トゥ・ドゥ・イット』以来、最高の客演仕事をやってのけた。他にも、グリッチ・ハウスのポップなアンセム“You’re The One”ではジ・インターネットのシドのヴォーカルが軽やかに舞い、“Glowed Up”ではアンダーソン・パックの歌声が溶け込む。ケイトラナダはコラボレーション好きであるが、ソロとして彼自身にも輝ける多くの見せ場を残している。ブラジルのシンガーであるガル・コスタのトロピカリア的な楽曲“Pontos De Luz”では、いくらか太いビートを加えて生まれ変わらせることで、2016年にふさわしい形にしっかりと落とし込んでいる。喜ばしいことだ。


4位 スケプタ『コンニチワ』

Skepta-Konnichiwa
正当な評価を受けてマーキュリー・プライズを獲得したスケプタの通算4作目となるアルバム『コンニチワ』は、グライムの歴史において重要なリリースであった。UKシーンにはワイリーからノヴェリストに至るまで大御所や新人が名を連ねており、その中にはチップやジェイミーなどの中堅どころもいるが、スケプタはグライム・シーンにおける真のスターであり、有り余るほどのウィットに富んだラップを武器に、徹底的な洞察力を披露している。“Man”、“Shutdown”、“That’s Not Me”という完全無欠の3曲が、このアルバムの中央に堂々とそびえ立っているが、これは戦闘準備命令であり、意思表明でもあった。2016年、グライムはこれまでで最も力強く影響力のあるシーンとなり、スケプタはその頂点にいる。


3位 クリスティーヌ&ザ・クイーンズ『ぬくもり(シャルール・ユメンヌ)』

Christine And The Queens
『シャルール・ユメンヌ』におけるエレクトロ・ポップの優美さと、酔っ払った観客を驚嘆させたグラストンベリー・フェスティバルでのカリスマ的ライヴ・パフォーマンスによって、2016年は、母国フランスでは既にスターであったエロイーズ・ルティシエの名を世界へと広める年となった。エロイーズ・ルティシエのデビュー作は洗練されていて繊細であり、各楽曲におけるフックと同じくらい寛大な心を持った、クールで全性愛的な表現に満ち溢れている。このアルバムは優美さや上品さを備えながらも、2016年の重要なトピックであった、クィア(多様)なアイデンティティやジェンダー・ポリティクスについて取り上げている。エロイーズ・ルティシエは『NME』に対して、次作は「セクシーさの意味を再定義することになる」だろうと語っている。


2位 カニエ・ウェスト『ザ・ライフ・オブ・パブロ』

Kanye West-The Life Of Pablo
20曲入りの大作となったカニエ・ウェストの通算7作目となるアルバム『ザ・ライフ・オブ・パブロ』は、”Famous”におけるレゲエ界の偉大なるシスター・ナンシーから、”30 Hours”における前衛的なソングライターのアーサー・ラッセルまで、そのサンプリング・ネタによってカニエ・ウェストがなお素晴らしい耳を持っていることを示している。さらに、ゲストとしてリアーナ、ケンドリック・ラマー、アンドレ・3000、チャンス・ザ・ラッパーが登場しており、メジャー・リーグ級のミュージシャンらを惹きつける彼の魅力も証明している。さらに論争を巻き起こしたテイラー・スウィフトについての歌詞と、火に油を注ぐような彼の一貫した反応のおかげで、カニエ・ウェストはニュースのトップを飾り続けながら、このアルバムのマイナー・チェンジと再リリースに2016年を費やした。確かに普通ではないが、実にカニエ・ウェストらしくもある。


1位 ザ・1975『君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。』

The 1975-I Like It When You Sleep...
どんなアルバムもこんな長すぎて手に負えないタイトルが付いていたら、アルバムそのもののバカらしさを明らかにするようなものだが、このアルバムを聴くと、そんなバカらしさによってザ・1975は成功を収めていることがわかる。17曲入り74分にわたる超大作であるザ・1975の通算2作目のアルバムとなるこの作品には、ポップからポスト・ロックに至るまで、そしてその間のありとあらゆる幅広いジャンルが結集されており、フロントマンのマット・ヒーリーの並外れていて、かなり捻くれた人間性――自己中心的だが内向的、大衆迎合的でありながらも尊大で悪びれず、自信がないが注目を浴びたがっているという性格――が、魅力的に映し出されている。「世界はこのアルバムを求めている」と、マット・ヒーリーは『NME』に語っているが、世界のこのアルバムへの反応は、大西洋の両岸でチャート1位に君臨した事で、彼の発言が正しいことを証明している。

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