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バンドを再結成する時には、正式に発表する前に和解したメンバーが集まり、リハーサルをこなし、昔の「魔法」がまだ通用するかどうかを確かめることが多い。しかし、90年代を代表するスキャンダラスなバンド、ロイヤル・トラックスは、今月16日のカリフォルニア州サンタ・アナで開催されるバーサークタウン II フェスティバルの最終日で、ヘッドライナーを務める予定となっているものの、バンドのメンバーであるジェニファー・ヘレマとニール・マイケル・ハガティーの2人は、バンドの解散と同時に恋人関係も解消した14年前から一度も顔を合わせていない。実際、この状態は今もなお続いている。

だが、心配には及ばない。ここ数年、ジェニファー・ヘレマはニール・マイケル・ハガティーとメールのやり取りだけはきちんと続けており、ライヴに関して「焦りすら感じていない」と語っている。「2人でセットリストのアイデアも出したし、もう習慣みたいなものだから。実際はどのぐらいリハーサルするかわからないけど……」

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こういった点が、気まぐれで奔放な本来のロイヤル・トラックスらしさを感じさせる。1980年代後半にワシントンD.C.で結成されたロイヤル・トラックスは、ドラッギーかつ知的なサウンドを通して、ローリング・ストーンズを脱構築してみせたが、最終的には他に類をみないほどのハードなロックへと進化していった。グランジ・ミュージックの全盛期に頂点にあったロイヤル・トラックスは、莫大な契約金でヴァージン・レコードと契約を結び、2枚のアルバム(ちなみに、このうち1枚のジャケットには、汚れた便器の画像が使われていた)による多大な貢献を果たした後、レーベルからの支払いが追いつかないまま解散してしまった。1998年にリリースされた『アクセラレイター』の大ヒットにもかかわらず(プライマル・スクリームのボビー・ギレスピーはこのアルバムについて「全編を通して名作だよね。サイキックかつスピリチュアルでありつつも、現実的な要素もあって、すべてが詰まってる」と語っている)、ロイヤル・トラックスは、2001年に「ガス欠」してしまったが、その後もジェニファー・ヘレマとニール・マイケル・ハガティーの2人は、それぞれブラック・バナナズやザ・ハウリング・ヘックスをはじめとする様々なソロ活動を続けてきた。

2011年のアルバムの一部再発の際、2人は別々にインタヴューを受けているが、当時は双方とも再結成を考えていないと答えている。今回再結成した理由について、ジェニファー・ヘレマは次のように語っている。「自分でもわからないのよ! 再結成して、アルバムの曲を演奏するなんて話をしたこともなかった。でも、ニールが再結成に賛成した時、私は『大丈夫だわ。勝手知ったるもんだし。そんなに面倒なことじゃない』って思ったの。別に長々と再結成について考えていたわけじゃなくて、そんなこと望んでもいなかった。ただ、“バン!”って感じで再結成の話が出てきたのよ。あれこれと計画しなきゃいけなかったら、この話はなくなっていたかもしれないわ」

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新生ロイヤル・トラックスでは、ブラック・バナナズのブライアン・マッキンリーがベース、ザ・ハウリング・ヘックスのティム・バーンズがドラムで参加している。トラックリストのプランは、これまでの過去の曲から気まぐれに選んで構成されている。ジェニファー・ヘレマは、「これまでのすべてのアルバムから数曲ずつ選んだの。特にどの時期の曲を入れたいとかそういうのはなかったわ」と語っている。

もちろん最も気になるのは、この予想外の再結成はその後も続いていくのか、ということだが、この件に関してジェニファー・ヘレマは「それはまた別の話よ。当然、その時の気分次第で考えるわ。ニールは旅行嫌いだし、大規模なフェスに出演したがらないこともわかってる。だから、検討の余地はないのかもしれない。でもどうかしら、今の時点で答えるのは難しいわ」とコメントし、レコーディングに関しても同じように未定かという質問にも「ええ、その通りよ」と回答している。

ジェニファー・ヘレマは、ソロでは幅広く活動している。ブラック・バナナズの新しいアルバム制作に加え、ネットフリックスで放送されるジャド・アパトーのプロデュースによる新シリーズのロマンチック・コメディー「Love」への出演など、新たな分野にも挑戦している。ロイヤル・トラックスの再結成がバーサークタウンでの1回きりということになったとしても、それはそれで伝説として残るだろう。ジェニファー・ヘレマは次のように断言している。「ロイヤル・トラックスは、私たち2人――つまり、多くの人々を感動させるようないい音楽を作り、何でも受け入れる広い心を持つ私たち2人そのものよ。だから、できれば続けていきたいわ」

テキスト:サム・リチャーズ

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