世界中のミュージシャンよ、あなたたちには感謝している。あなたたちがしてくれたことすべてに感謝しているし、私たちの生活のあらゆる場面でバック・ミュージックを提供してくれたことをありがたく思っている。ところがだ。おやおや、なかにはのらりくらり活動しているアーティストもいる。アヴァランチーズは本日7月8日に、ようやく16年ぶりとなるアルバム『ワイルドフラワー』をリリースした。彼らのファンでいることは耐え難いだろう。しかし、ファンがニュー・アルバムを期待している傍らで、ゆっくり時間をかけて気ままに活動しているミュージシャンはアヴァランチーズだけではない。では、こちらが世界で最も気ままに活動しているバンドたちだ。
1. ザ・ストーン・ローゼズ
このマッドチェスターのバンドには、1989年にリリースされた、圧巻のデビュー・アルバムに続く『ザ・セカンド・カミング』のリリースまで5年も待たされた。しかも、1994年以来リリースしたシングルはたったの2枚だけ。イアン・ブラウンと仲間たちが2012年に地元マンチェスターのヒートン・パークで行った3日間に及ぶ派手なライヴ――14分間で150,000枚のチケットを販売した――は、若年層が彼らを知るきっかけとなり、本格的なカムバックを果たした。さらに、バンドが訴訟と混乱を経て解散し、15年後に再結成を果たした様子を描いたシェーン・メドウス監督のドキュメンタリー映画『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』は、バンドにとってさらなる宣伝となった。最近のシングル曲“All For One”と“Beautiful Thing”は、幸いなことに、アンセムとも言うべきバンガー・ミュージックで、ニュー・アルバムへの期待を高めてくれる。ロンドン北部にあるスタジオの外でイアン・ブラウン本人にも取材したしね。
2. モデスト・マウス
耳障りなインディー・ロッカーの最新アルバム、2015年リリースの『ストレンジャーズ・トゥ・アワセルヴズ』は色々な曲の寄せ集めだった。しかし、8年前にリリースされたオリジナル・アルバム以来の作品だったのでファンには受け入れられた。なぜなら、2007年の『生命の大航海』以来リリースされたのは、EP1つ(2009年リリースの寄せ集めのコンピレーション『ノーバディズ・ファースト・アンド・ユー・アー・ネクスト』)だけだったからだ。「バズフィード」のインタヴューで、フロントマンのアイザック・ブロックは行き過ぎた自分の完璧主義に待ったをかけた。「あらゆるシミを拡大鏡で見てみるようなものだった。だけど、そのあと、クソ高い山のてっぺんから見るみたいに広い視点で見ないといけないとわかったんだ」
3. ザ・ヴァーヴ
1997年のアルバム『アーバン・ヒムス』は壮大なブリット・ポップの傑作だった。それなのに一体なぜ、4作目のアルバム(その名も4番目を意味する『フォース』)まで11年も待たされたのだろう? その理由は、ザ・ヴァーヴがバンド内の不仲を理由に2000年から2006年まで解散していたからだ。再結成にあたって、そもそも解散の原因となったプレッシャーから逃れるため、マルチ・アルバム制作の契約を拒否したのだが、それが功を奏した。『フォース』はUKチャートで1位を獲得し、『NME』でも10点満点中8点を得た。『NME』のレヴューではこう書かれている。「リチャード・アシュクロフトの聖歌を思わせる声がギタリストのニック・マッケイブの実験的な演奏と美しく絡み合っている」。これがザ・ヴァーヴの最後のアルバムとなったが、フロントマンのリチャード・アシュクロフトは最近素晴らしいソロ・アルバムをリリースしている。
4. ダフト・パンク
ダフト・パンクは『ランダム・アクセス・メモリーズ』のリリースまでファンを8年も待たせた。それほど待つ甲斐のある作品だったのだろうか? 読者のみなさん、これはその甲斐のある作品だった。10点満点中10をつけた『NME』のレヴューが「野望を感じられる傑作」と明言した通りだ。アルバム制作以外の時は、ギ=マニュエルとトーマ・バンガルテルはSF映画『トロン』(1982)の続編『トロン:レガシー』(2010)のサウンドトラックを手掛け、シンセとディスコの巨匠ジョルジオ・モロダーと親交を深めた。ジョルジオ・モロダーとは『ランダム・アクセス・メモリーズ』で共作している。その分の時間は報われ、このアルバムは2013年のUKで最速で売れたアルバムとなった。
5. ガンズ・アンド・ローゼズ
究極に怠惰なバンドだ。アクセル・ローズと彼の仲間たちによって、2008年の『チャイニーズ・デモクラシー』のリリースまでファンは苦悩の14年を送ることになった。今にして思えば悪くない作品と言えるが、期待が高すぎたせいか、このアルバムはその重圧に押しつぶされてしまったと言える。アルバムの制作にとりかかった時、アクセル・ローズは31歳だったが、リリース時には46歳になっていた。『チャイニーズ・デモクラシー』は制作に1300万ドル(現在のレートで約14億円)を費やし、携わった数多くのミュージシャンやテクニシャンは当時の給料の支払いを待たされていた状態だった。また、クリエイティヴィティを活発にするためにスピリチュアル・セラピストまで雇われていたという。アクセル・ローズは現在AC/DCに参加している。ファンの期待をどこまでも裏切ってくれる男だ。
6. ポーティスヘッド
このUKのトリップホップ・グループは、1994年にデビュー・アルバム『ダミー』でUKのダンス・シーンに旋風を巻き起こした。このアルバムに続く1997年のセルフタイトルの2作目はすぐにリリースされたが、3作目のタイトルは確か『サード』で、2008年にようやく発売された。このタイトルを考え出すのに、11年もかかったのだということを覚えておいてほしい。モデスト・マウスの『ストレンジャーズ・トゥ・アワセルヴズ』のように、制作の進行に時間がかかったのは、細部まで徹底しようとする姿勢のためだ。ポーティスヘッドはきっと、それぞれの技術的なアレンジを際限なく議論していたのだろう。メンバーのエイドリアン・アトリーは『ガーディアン』紙に語っている。「僕たちが議論しない部分なんて1つもないんだ。何となくでいいことなんて何もない。使い捨てじゃないからね。この考え抜いた時間、日々、年月によって人生が構築されるんだ。結婚みたいなものだよね? 妥協とお互いへの思いやり、そして他人の深い知識でできているんだ」
7. マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン
ダブリン出身のうつむきがちなバンドが、『ラヴレス』に続く3作目『mbv』を発表した2013年まで、22年も待たされることになった。ありがたいことに、美しく、陶酔感のあるサウンドが連続する作品に仕上がっている。彼らは2008年にベスティバルに出演したものの、しばらく目立たない存在だった。2012年にニュー・アルバムのプロモーションの際、ヴォーカルのケヴィン・シールズは『NME』にこう語っている。「この作品を耳にしたごくわずかの人たち――エンジニアにバンドメンバー、そのくらいかな――を参考にすると、『ラヴレス』より不思議な感じがすると思う人もいるかもしれない。だけど僕はそう思わない。この作品で僕たちは解放されたし、もっと大きな視点で言うと、この作品は100%必要不可欠なものなんだ」
8. ザ・ローリング・ストーンズ
ミック・ジャガー、キース・リチャーズたちが2005年に最後のアルバム『ア・ビガー・バン』をリリースしてから11年が経つ。しかし、『ア・ビガー・バン』も1997年発表の前作『ブリッジズ・トゥ・バビロン』から8年が経過していた。ザ・ローリング・ストーンズは1997年から2005年までツアーをし続け、バンドのキャリアを俯瞰するベスト・アルバム『フォーティー・リックス』のツアーも行った。このツアーの様子は、ライヴDVD『ライヴ・リックス』に収録されて締めくくられた。これでバンドはニュー・アルバムの準備ができたのだった。もちろん、『ア・ビガー・バン』でもザ・ローリング・ストーンズはサウンドを再発明しようなどとはしておらず――そうする必要もないだろう――ミック・ジャガーの女たらしのヴォーカルとキース・リチャーズのグルーヴのあるリフによるハードにロックする組み合わせを見せつけている。どうやら現在はエリック・クラプトンとコラボしてニュー・アルバムの制作に取りかかっているらしい。
9. ニューヨーク・ドールズ
宇宙のどこか(きっとすごくセクシーで男女両性の惑星だと思う)からやってきたかのように、ニューヨークのパンク・シーンの直前に舞い降りたニューヨーク・ドールズは、ハードなロックンロールのライフスタイルを体現してみせた。おそらくそのせいで1974年の『悪徳のジャングル』から2006年の『反逆という名の伝説』まで32年も空白があったのだろう。黄金期のメンバーのうち、2人だけ――ギタリストのシルヴェイン・スルヴェインとヴォーカルのデヴィッド・ヨハンセン――がまだ生きている。悪名高きギタリストのジョニー・サンダースは何年も前に亡くなっているので、オリジナル・メンバーに戻ることがあれば奇跡だっただろう。確かに、『反逆という名の伝説』はニューヨーク・ドールズのトレードマークともいえる輝きやエネルギーに欠けているが、それでも大人になることを拒む彼らの姿を見るのは気持ちよい。
10. ザ・ストゥージズ
イギー・ポップは今やあちこちに姿を見せている。映画『ブラッド・オレンジ』では初主演を務め、あっと言わせるほど素晴らしいニュー・アルバム『ポスト・ポップ・ディプレッション』のツアーをアークティック・モンキーズのマット・ヘルダース、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オムや他のメンバーらと行っている。しかし、彼のバンド、ザ・ストゥージズは1973年の『ロー・パワー』のあと、2007年に『ザ・ウィヤードネス』をリリースするまで34年間も姿を消していた。もちろん、イギー・ポップはその期間に14作のスタジオ・ソロ・アルバムをリリースしているから、彼のことを怠けていると言うのはフェアではない。しかし、彼とザ・ストゥージズが一緒にやるまで時間がかかりすぎたことは間違いないだろう。『ザ・ウィヤードネス』について我々は「性急で現代的サウンドを持ったロック・アルバムで、ザ・ストゥージズ・チルドレンが40年かかっても敵わないほど生命力に溢れている」と評している。
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