なぜあらゆるロックスターやセレブリティに屈することのないノエルとリアムのギャラガー兄弟も、この男への敬愛については隠すことなく大手を振って口にするのだろうか。その言動から「マッド・リチャード」というアダ名をイギリス中の音楽メディアに付けられることになったその男は、なぜその数年後に『アーバン・ヒムス』という名作に収められた数々の美しく気高い楽曲を書くことになったのだろうか。そう、リチャード・アシュクロフトというフロントマンは常人の感覚では到底計り知れない側面を持っている。それが一番露わになるのが、取材の場で唐突に発せられる彼の発言である。今回はそんなリチャード・アシュクロフトの発言をひたすら集めてみた。その独自の視点と知性に裏付けられた自信は、他人に屈することなく、どの発言でも貫かれている。人生で難局を迎えている方、彼の100万分の1でもその自信を手にすることができたら、未来は明るいものになるかもしれない。
なお、10月に行われるリチャード・アシュクロフトの来日公演は7月9日(土)よりチケットの一般発売がスタートする。
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1993年
「俺は空を飛べるようになる。変かい? 実際、その気になれば飛べるって信じているけど、みんな恥ずかしがって俺にそれを言わせまいとしている。みんな途方もないことを考えるのが苦手だし、未知のものを怖がっているからだ。自分は一体何者なのか、これから何処へ行くのか、そんなことをほんの一瞬考えただけで恐ろしくなってしまうけれども、そういう瞬間はすごく大切だ」
「崩壊や破壊が、創造と同じくらい美しいこともある。俺たちは、自分達の達成したいと思っていることが実現できるとは決して思わない。それは不可能だろう。しかし、それが大事なところだ。もっと遠くを目指すこと。しかし、俺らの年齢や経験にしては、なかなか大したファースト・アルバムを作って、いいスタートが切れたと思うよ」
「俺は探求を続けている。新しい経験を待ち望んでいる。きっと死ぬまでそうやっているだろう」
ザ・ヴァーヴのファースト・アルバム『ア・ストーム・イン・ヘヴン』のライナーノーツより
1997年
「この作品は俺たちにとっても、そして世界中のリスナーにとっても、間違いなく90年代後半における『ネヴァーマインド』になるだろう」
ザ・ヴァーヴのサード・アルバム『アーバン・ヒムズ』のライナーノーツより
「何か新しいものを生み出そうとするときには、悪魔が自分の心に棲みつくことがあるんだ。俺はまさにその悪魔と会見してた」
「一旦新しいスタイルを確立させると、『本物』のほうがコピー集団の中に埋没してしまうんだ。他人のスタイルを分析して寄せ集めて作ったバンドのせいで、おれたち(The Verve)みたいな本物が見失われてしまうんだよ」
「さっき、70年代にこの会場でレッド・ツェッペリンのライヴを見たって奴に会った。今晩は、その夜の再来になるぜ」
「俺のことを”Mad”なんていうマスコミの連中は、じゃあもしスライ&ザ・ファミリー・ストーンのライヴを見たら、なんて言うんだろ?って思ってた」
「“Live Forever”を初めて聴いたとき、客の多くは床に座ってたけど、俺はその場で立ち上がって、ガッツポーズをとった。リアルな瞬間だった。マジでスゴいもんだったよ。だからこうやって、何が起ころうが、あいつらとは死ぬまで分かり合える関係になったんだ。おべんちゃらを超えた、名声とか金とか一切関係ない仲だな」
『Q』誌 134号より
2000年
「自分にとってもっとも大切なのは、俺の嫌いな自分を解決することなんだ。これ、本気で言ってるんだけど、これが俺の最終目標なんだよ」
「俺が作ってるのはパンクなんだよ、このアルバムを聴いてそう思う人は少ないかもしれないけどね。オーケストラが鳴ってたとしてもパンクなんだよ!」
「リングに立たなきゃだめだよ。メジャーな場所にさ、そこに入っていって、お前らのやり方だけが正しいわけじゃないって教えてやるんだ。だって、ヒットして、それでも知性のレベルで通じ合えるレコードってのはできるはずだろ?できなかったら困るよ」
「俺が求めてるのは正真正銘の、最高の、スーパースターなんだ。この時代、本物のヘヴィー級のスターがいない。みんなが次のレコードを待ち焦がれてるようなさ。どこに行っちゃったんだよ? そういう時代はいつ終わっちまったんだ?」
「俺が目指してるのは、見たことも聴いたこともない、なのに何百万人もの心に触れて、でも誰もそれがどんなものか説明できない、そんな音楽を作ることなんだ」
「自分がやるべきことは何か、決めなきゃならない。なんでそれをやらなきゃいけないのか、つまり自分の哲学は、自分の心の中にあるはずだ。誰かに説教されて始めるんじゃない。生まれつき、ある種の考えを持って生まれるんだ」
「(ザ・ヴァーヴの)1枚目のシングルをレコーディングしたとき、俺の考えでは、俺たちはもう勝利していた。あの時点でもう、金や成功では手に入らない、タイムレスなものを俺たちは作っていたんだ」
「2枚目のシングルは、ラジオで絶対かけてもらえないくらい長たらしいもんだった。あれは、俺たちが、自分たちに、それとレコード会社と周りのスタッフに言い聞かせるためだったんだ。『お前らが仕事してるのは、そんじょそこらのバンドとは違うんだよ』ってことを」
「俺が音楽業界で求めてるものは、他の連中が求めてるものとは違うんだって、わかってた。俺が欲しかったのは、音楽で……俺達の作品で心が満たされること。それが俺が一番求めてたものだ」
「だからさ、バンドを始めようと思ったら、まずビートルズの伝記を読んで、最後の2章をしっかり頭に入れることなんだ。6年か7年か10年か後に、自分がまさにそこを追体験することになるんだからさ」
「俺は、エルヴィスをはじめとして、いろんな人からいろんな点で影響されてるし、そのことをしっかりわかってる。でも、俺は完全コピーってのができないもんだから、影響されても逆に全然違うものになれる。俺なりの方法論が生まれる余地があるっていうかな。だから、いつだって俺の曲は、俺の匂いがプンプンするものだった」
「ザ・ヴァーヴが苦しんだのは、あれだけの兵力を持ちながら、自分たちの潜在力に圧倒されそうになったってことだと思う」
「(デビュー時に)俺はとにかく喋りすぎた。単純に若くて周りが見えてなくて、無我夢中だったんだ。怖いもの知らずで話しまくったのは、俺たちが出てきた頃、まわりはひ弱なロッカーばっかりだったからだよ」
「デビューの頃、マッドチェスター、ネオ・グラム、シューゲイザーの尻尾の方にくっつけられて、ブリット・ポップ呼ばわりだけは辛うじて逃れられたのに……で、今度は俺たち、”ブリット・ロック“だって? レッテルなんて、俺、関係ねえっての」
「埋もれた天才でいる方が、見いだされた天才でいるよりずっと簡単なんだ」
「結局、カート・コバーンの言った通りだよ。『あと10万ドル銀行口座に振り込まれたって、何も変わらない。もう一枚白いTシャツを買うだけだ』っていうさ。でも、俺は、自分が生き残るって確信してた」
「18、19歳のときに、ローリング・ストーンズの伝記を読んだ。キースが家の庭でネズミを撃ってたっていう、あれだ。俺もいつかはネズミを撃つんだろうなと思ってたよ。グレイト・ファッキンなバンドをやって何百万枚レコードを売っても、いくつくところはそれしかない。俺はそれを学んでたんだ」
「間違いなく、『アーバン・ヒムス』が出る直前の、オアシスのアールズ・コートでのギグ(97年9月)をサポートしたことは貴重だった。ノエルが俺たちのために扉を開いてくれて、それにはもう感謝してる。ただ、あいつの行動は妥当だと思うよ。もし逆の立場だったら、俺もそうしたと思うし。ノエルがなぜ声をかけてくれたかって、それは疑問の余地がないよ。逆に俺たちを出さないほうがおかしいだろ?」
「『アーバン・ヒムス』が出たときに、『”Urban Hymns(都市の聖歌)”? なんて偉そうなタイトルだ』って散々言われたさ。で、俺は、『じゃあ、本当に都市の聖歌になるまで待ってろよ。話しはそれからだ』と言ったんだ」
「正しい理由で音楽を作ってる連中、ロックンロールの本質を手に入れて、歴史なんかに押しつぶされないやつ……そういう連中が出てくる時代がくるよ、間違いなく」
「来世紀にはできれば誰も説明できないような音楽を作れるようになりたい。グルーヴがあって、エモーションがあって、歌があって、顔が見えて、人間が見えて、ソウルがあって……要は、偉大な曲には必ずある要素が全部組み合わさった曲だ」
『NME』2000年1月8日号より
2002年
「世界は虚無感や絶望感や攻撃性ばかりで占められているわけじゃない。俺達みたいな表現者にできることはポジティヴで建設的な人間の側面に気づいてくれるような歌を書くことだと思ってるんだ。憎悪は必ず愛と背中合わせになっていて、絶望は必ず悲観しつつも、希望と背中合わせになってる……そういった面に気づいてもらえるような歌……そんな歌に挑戦し続けることがロックンローラーとしての俺の役割の一つだと思ってるんだよね。(このアルバムを聴いて)『世界ってのは思ってたほど残酷でも醜悪なものでもなく、こんなにシンプルで感動的な側面もあったんだ』ってことに気づいてもらえたら、そしてそれぞれの楽しみ方をしてくれれば、俺としてはもうそれで充分なんだ」
リチャード・アシュクロフトのセカンド・アルバム『ヒューマン・コンディションズ』のライナーノーツより
2006年
「俺達は、不安と倦怠感の中で生きているんだよ。スポーツと音楽以外に、人々が心から信じているものなんて一体何があるっていうんだ?」
「1つの曲が、1人の人間の人生を根本的に変えてしまうことだって可能なんだ。それ(=曲のもつ力)がどれほど強力なものなのか、人々が本当に理解しているとも、その真価をちゃんと認識しているとも、俺には思えないんだよな」
「俺は、ソングライターになるべくして生まれたと思ってるよ」
「名声だとか成功だとか、そういうものに俺の気持ちが駆り立てられることはない(俺はすごくシャイで内向的な人間だし、すぐにどこにいるかわからなくなってしまうような、影が薄いタイプなんだよ。)。だけど、俺は、曲を書きたいという思いには強く駆り立てられるんだ。俺にとって創作っていうのは、ほとんどセラピーみたいなものでさ、俺の曲は、聴き手を、俺の心の中の一番無防備な弱いところへと連れて行くんだ。そしてそこには、ダークな部分もある。もし俺がロサンゼルスに住んでいたりしたら、誰かカウンセラーとかセラピストとかに、それこそ毎日、1日3回は診てもらいに行ったりするんだろうね。けど、俺は、自分のやり方で自分の抱えてる問題と取り組む、北イングランドの男だってことさ」
「60年代半ばのソングライターたちは、ボブ・ディランに影響を受けていて、もっとせせら笑うような態度というか、歪んだ見方で物事を扱っていたんだ。だけど、彼らは、それでも依然として人々の脳裏に焼き付いて離れないような曲を書いていたんだよね。それが、俺の目標としているところなんだ。俺にとっては、やはりメロディーこそが一番大事なものなんだよ」
「(一定の成功を得た)今の状況のみについて曲を書いてるわけじゃない。自分が子供の頃から抱いてきた『どうしても自分では折り合いがつけられない自分の中にある部分』、いくら富や名声や幸福な家庭を得ようが、帳消しにはならない部分について書いている。俺が今でも、歌を書くときに、人々のダークサイド、ヘヴィな題材に惹かれるのは、過去に受けた傷がいまだに口を開けてるからなんだと思う。現時点に至るまでの自分が抱いてきた怒りや抑圧や懺悔、罪悪感ってのは、自分の周りの環境が変わったからって、すぐ自動的に払拭されるわけじゃないからな」
「いわゆる『アーバン・ヒムス』シンドローム、みたいな病状が一番ひどかったのは、あのバンドが解散する直前だったな」
「『最先端シーンの流行とは無関係だけど、人々の心を打つ普遍的な作品を数年おきに発表するソロ・アーティスト』としてのポジションは、俺にとっても凄く理想的なんだ」
リチャード・アシュクロフトのサード・アルバム『キーズ・トゥ・ザ・ワールド』の全曲解説より
2008年
「リチャード・アシュクロフトって人間、もしくはザ・ヴァーヴ、もしくは俺が関わることすべてに言えることだけど、俺は、世間一般の規準に即して生きてるわけじゃないんだよ。つまり、俺が他のアクトと同じようなことをするなんて期待しないでくれってことだよ」
「ザ・ヴァーヴが日本に来なかったのは、ザ・ヴァーヴが本物のバンドだったからだよ。本物のバンドは、ずっと一緒にはいられないんだ。ずっと一緒にやってるなんてリアルじゃないんだよ」
「俺は常にやるべきことをやっているだけなんだよ。そして本気でそれをやってるんだ。魂を込めてね。つまり俺の音楽はソウル・ミュージックだってことだ。」
「パフォーマンスすることが出来るやつがいて、出来ないやつがいて、最高の曲を作れるやつがいて、作れないやつがいる。俺は幸運にも素晴らしい曲が書けるんだ」
「俺の曲や(ザ・)ヴァーヴの美しいところは普遍的だってことだよ。愛や苦しみっていうのは普遍的なものだからね。それを表現するかどうかは、自分次第なんだ」
(今後の活動の抱負とファンへのメッセージを聞かれて)「俺が何かやるのをまってないで、何でもいいから自分のやるべきことをやれよ。自分でバンドを組むでも、自分の絵を描くでも、自分の映画を撮るでもいい。自分でやりな」
ザ・ヴァーヴでのサマーソニック来日時のオフィシャル・インタヴューより
最新作『ジーズ・ピープル』の『NME』によるロング・インタヴューはこちらから。
https://nme-jp.com/feature/20116/
来日公演詳細
NME JAPAN presents リチャード・アシュクロフト ジャパン・ツアー2016
大阪
10月4日(火) ZEPP NAMBA
OPEN 18:00/START 19:00
TICKET:1Fスタンディング¥8,500、2F指定席¥9,500(税込・1ドリンク代別)
東京
10月6日(木) ZEPP TOKYO
OPEN 18:00/START 19:00
TICKET:1Fスタンディング¥8,500、2F指定席¥9,500(税込・1ドリンク代別)
10月7日(金) ZEPP TOKYO
OPEN 18:00/START 19:00
TICKET:1Fスタンディング¥8,500、2F指定席¥9,500(税込・1ドリンク代別)
公演の公式サイトはこちらから。
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