カニエ・ウェスト。このお騒がせな人気者が、またやってくれた。彼の新曲“Famous”の10分間のミュージック・ビデオは「think me and Taylor might still have sex / I made famous that bitch faaaaaamous(俺は今でもテイラーとセックスしたいかも/なぜって、あのビッチを有名にしたのは俺だから)」という事実に反する歌詞で既に議論の的となっているが、映像もかなり不快感を催す内容となっている。
このビデオは画家のヴィンセント・デジデリオが2008年に制作した作品『Sleep』にインスパイアされたもので、カニエ・ウェストが、妻のキム・カーダシアンや彼女の元恋人であるレイ・ジェイ(彼らのセックステープは2007年にリークされている)、ドナルド・トランプ、カニエの元恋人であるアンバー・ローズ、そしてもちろんテイラー・スウィフトも含めた数々のセレブリティとベッドを共にしている。彼らはみんな全裸だ。ビデオに登場しているのは、どうやら彼らをかたどった蝋人形などとみられる。
たとえカニエ・ウェストのファンであったとしても、このビデオを擁護するのはかなり難しい。テイラー・スウィフトはこれに震え上がったと伝えられているが、無理もない話だ。カニエ・ウェストは、この“Famous”のビデオを名声の本質に関する芸術的解釈であると述べているが、これは純然たる観淫主義で、他人を騙って利益を得ることそのものに見える。もし、あなたが裸で寝ている姿を誰かに撮影され、そのビデオをインターネットにアップロードされたとしたら、どう感じるだろうか? それが蝋人形だったとしても何の変わりもない。その効果と意図は同じなのだ。これは権力と、それを誰が持つかという問題だ。
しかし、このビデオで衝撃的だったのは観淫主義的な部分だけだったようだ。我々はミュージック・ビデオで裸体を目にすることに慣れてしまった。デュラン・デュランの“Girls On Film”が際どいと認識されていたのは遠い過去の話だ。それでは、ミュージック・ビデオにおけるヌードの略史をおさらいしてみよう。
デュラン・デュラン“Girls On Film”
1981年
嗚呼、1980年代の初めは物事が今よりシンプルだった。この愛らしいナンバーのミュージック・ビデオではちょっとしたトップレスによる泥レスリングが行われ、BBCでは放送禁止となり、MTVでは大幅に編集されたものが放送された。ぼんやりと見過ごしたかもしれないが、見返してみると、相撲を取っている女性はなかなかのインパクトじゃないか?
最も衝撃的な瞬間:そうだな、女性のマッサージ師がレスリングのリングの真ん中で相撲の力士にオイルをかけている場面だろうか? つまり「このアイデアをミュージック・ビデオに採用するのが名案だと思った人物がいること」に対する衝撃だ。
猥褻物のカウント:乳首が12個、尻が1つ。
マドンナ“Justify My Love”
1993年
マドンナのミュージック・ビデオには、ちょっとしたボンデージや同性同士のキスシーンが登場する。MTVはこれを放送禁止にしたので、マドンナはVHSとして発売した。無茶なように感じるが、これはカニエ・ウェストが“Famous”の視聴を最初はタイダルの有料会員のみに限定したのと、あまり変わらないかもしれない。
最も衝撃的な瞬間:ボンデージ・ギアに身を包んだカップルが激しく絡み合っているシーン。しかし、2016年の今になってもこのシーンに衝撃を受けるなら、あなたは少なくとも8000歳くらいだろう。
わいせつ物のカウント:乳首が2個、尻が1つ。
ザ・プロディジー“Smack My Bitch Up”
1997年
2010年、イギリスの演奏権管理団体(PRS)はこれが史上最も物議をかもした曲だと発表した。リリースに際して、「Change my pitch up / Smack my bitch up(ピッチをあげろ/ビッチを殴れ)」という弁解の余地のない歌詞が女性の権利団体から非難を浴びた。でも、このエセックス出身の自由人は、刑務所から自由放免になるためのカードを用意していた。このビデオはある夜の享楽的で不愉快な行動を主観ショットで描写しているが、最後に映る主人公は女性なのだ。
最も衝撃的な瞬間:あなたが選んでくれ。主人公がシンクに吐いているシーンは確かに気分のいいものじゃない。
わいせつ物のカウント:乳首が12個、尻が2つに、女性器が1つ。
ディアンジェロ“Untitled: How Does It Feel”
2000年
ヤバいな、こいつはセクシーだ。ヴァージニア生まれのソウル・シンガーが一糸まとわぬ姿で、とびきりの身体を長回しのワンショットで披露している。彼に力強さがあるとは言え、曲では感情的に、ビデオでは身体的にこれほどすべてをさらけ出している様子には、何か脆さのようなものを感じる。
最も衝撃的な瞬間:どんな基準で見てもこのビデオには衝撃シーンはないが、ディアンジェロの下腹を汗が流れ落ちる様は確かに凄いシーンだ。
わいせつ物のカウント:乳首が2個と、恥骨が少し。
ラムシュタイン“Pussy”
2009年
我々は今、本物のハードコア・ポルノの分野に足を踏み入れている。ラムシュタインは実際には濡れ場を演じておらず、そのダーティな仕事は代役にやらせている。このベルリンのインダストリアル・メタル・バンドは、この曲をレコーディングした時には「You’ve got a pussy / I have a dick… Let’s do it quick!.(お前にはアソコがある/俺にはペニスがある/さっさとやろうぜ!)」という歌詞からして、頭ではなく下半身で考えていたのだろう。まるで大人の幼稚園のような歌詞だ。我々はポルノサイトではないので、ここでは検閲済みバージョンしかご紹介できない。注:スケプタも2011年に“All Over The House”という同じような恥ずかしい曲を発表している。
最も衝撃的な瞬間:あまりに多すぎて挙げきれない。
わいせつ物のカウント:検閲済みバージョンではわいせつ物を1つも発見できなかった。我々は数えてみたんだ、信じてほしい。
ロビン・シック“Blurred Lines”、リアーナ“Pour It Up” etc.
2013年
2013年2月、米『ビルボード』はYouTubeの視聴数もチャートのランキングに反映させると発表した。偶然にも、ロビン・シックはその1ケ月後にチープで露骨な表現のある “Blurred Lines”のビデオを公開した。ビルボードの発表は明らかにミュージック・ビデオの際どさを上げている。その証拠に、リアーナの“Pour It Up”、マイリー・サイラスの“Wrecking Ball”、ニッキー・ミナージュの“Anaconda”はすべてチャートのカウント方法の変更から7ケ月以内にリリースされているのだ。
最も衝撃的な瞬間:この曲は、その「You know you want it(欲しいって分かってるんだろ)」というかなり気の滅入るような歌詞を理由に、多くのイギリスの大学で禁止となった。そして、ビデオでは浅ましい者同士がくっついたカップルのように、服を着たファレル・ウィリアムズとロビン・シックがトップレスのモデルの周りを跳ねまわっており、どうにも救いようがない。背後にバルーン・アートで「ロビン・シックはデカいペニスを持っている」と書かれているのも衝撃的なゲスっぷりだ。
猥褻物のカウント:乳首が63.5個、尻が4つ。
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