1975

Photo : JENN FIVE/NME

ザ・1975を過激で実験的なサウンドで知られるサクラメント出身のヒップホップの猛者、デス・グリップスと一緒にすることはほとんどないだろう。少なくとも僕はそう思っていた。そんな矢先の5月末にこの週のイギリス音楽界一といえるニュースが飛び込んできた。ザ・1975のヴォーカリスト、マット・ヒーリーが5月31日に、「人間関係において一番難しいのは別れを告げることだ」と謎めいたマンガと共にツイートし、売れ線狙いのインディ界の怪物とも言えるこのバンドの解散を匂わせたのだ。「同じところに留まっていたいと思うけど、人生において変化は避けられない。永遠に同じところにとどまって、何の進化もせずに居続けることなんてできないだろう? だから僕たちは『愛している』と告げて行かなくてはならない。実際、僕たちはもういないんだ」。多くのファンはバンドが解散するのかと心配することになった。だが、デス・グリップスが昨年解散を発表した後、脳破壊的なホラーラップの混乱と無秩序を反映するかのような、そうした動きの中で、新ツアーの日程と新たな音楽の構想を練ったのと同じように、ザ・1975のニュースの後には、すぐさまイギリスツアーの日程と、2013年にベストセラーとなったデビュー・アルバムに続くセカンド・アルバムに先駆けた彼らの「新しいアイデンティティ」が発表されたのだ。解散のニュースは思わせぶりな前フリだったというわけだ。

要するに、ザ・1975のニュースはかなり分かりやすい話題作りだったといえる。デビュー・アルバムがイギリス・チャートでナンバーワンとなったおかげで、イギリスで一番有名な新人バンドの一つとなり、同時にヒーリーはティーンの人気ポスターの顔となった。それをすべて放り出すというのはまずありえない。だから、前出のマンガがウェブ上に載った時――昨年、読者投票でNMEアワーズのワースト・バンドに選ばれたことから、『NME』を当てこするなかなか面白いセリフ付きだったけれど――ほとんどの人間はだまされなかった。仕組まれた感じがあったのだ。バンドのメンバーか、レコード会社のマーケティングの誰かが、単に「ザ・1975の新ツアー」というのではなく、大々的に、より効果的なヘッドラインを狙ったかのように。

それ以上に興味深いのは、これまでの彼らの明るく洗練されたポップ・ミュージックの下に、別の顔があるのかもしれないという点だ。特にヒーリーは、フェニックスが最近の傾向のエモ風ラジオ・ヒットをやったような“The City”や“Chocolate”といった曲からは想像つかないほど幅広い音楽の指向を持っている。昨年ヒーリーはスポティファイのプレイリストにマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、シンセサイザーがトレードマークの1980年代のグラスゴー出身の実験的グループであるブルー・ナイルなどを挙げているが、ソーシャル・メディアでのヒーリーはUSヒップホップの注目株であるボビー・シュマーダやオー・ジー・マコといったトラップ・ミュージックの重低音からロンドンのカルト的な瞑想的フォークのマリカ・ハックマンまで、あらゆることにコメントしている。2014年のインタヴューで、もし世界でたった一つの曲を選ぶとしたら何か、という質問に対して、ヒーリーはブライアン・イーノのアンビエント・チル・トラック“An Ending”と答えている。

もちろんこれらは深い意味のない発言かもしれない――批評家たちに彼自身の音楽について見直してもらうために、トレンディでよく知られたアーティストの名前を挙げているに過ぎない可能性もある。だが、僕はそうは思わない。彼が好きなアルバムとして10月に『ガーディアン』紙に語った、マイケル・ジャクソンの『バッド』、ピーター・ガブリエルの『ソー』、フィル・コリンズの『フェイス・ヴァリュー』は、恥ずかしいほどに大衆的だが、何が悪い? ヒーリーにも影の部分はあるのであって、次にバンドがしようとしていることを掘り下げてみたら、非常に興味深いものになるかもしれない。ヒーリーは「僕はヘロイン中毒になったことはない。ヘロインに溺れたことはない」と先の『ガーディアン』紙で彼は述べている。「だけど、ひどいコカイン中毒だった。18歳の時で、何にでも手を出してみたかった。ジャック・ケルアックに憧れていたんだ。そのぐらい自分がデカダンだと思っていたんだ。」

今、僕たちは憶測するしかない。ザ・1975は次にどこへ行くのだろう? ケヴィン・シールズばりの透明感あふれるヒステリックなギターの渦に巻き込まれるのか? シカゴ・ドリル・シーンの重低音ベースを取り入れたカムバック・シングルがあるのだろうか? 「レッテルを貼られた僕たちのアイデンティティは、ヴィジュアルだけでなく哲学的にも変わらなければならない。それをどうやっていけばいいのだろう?」と、先日のマンガは問いかけている。「まず僕たちはアイデンティティを取り戻し、コントロールし直さなければいけない…それまではポップ・ミュージックもロングヘアを振り乱してのダンスもなしだ」とも。これらはすべて戯言に過ぎないのかもしれない。彼らのセカンド・アルバムはデビュー・アルバムのにやついたチャラチャラとしたサウンドを繰り返し鳴らすだけで、それがまた大量に売れるかもしれない。今週の彼らのソーシャル・メディアの言動は見え見えで、シニカルとも取れるだろう。しかし、ファースト・アルバムと変わらない曲を喜んで受け取るだろうレコード会社の重役たちに対し、おそらく冷笑で迎えられるであろうアイデンティティの再構築をしてみせることには、称賛と拍手を送りたい。ザ・1975が具体的に何をしようとしているのかは、11月のイギリスツアーで明かされることだろう。その頃にはおそらく新しい音源もリリースされていることだろう。ひょっとしたら、デス・グリップスのMC・ライドがゲスト参加ということだってあるかもしれないんだから。(アル・ホーナー)

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