音楽ライターのポール・デュ・ノイヤーは、『NME』の他、『Q』誌や『ザ・ワード』誌でジャーナリストとして、35年以上にわたってポール・マッカートニーへのインタヴューをどの雑誌ライターよりも多く重ねてきた人物だ。最初に2人が交わした会話は、1979年にリヴァプールで開催されたポール・マッカートニーのライヴのバックステージでの会見でのことだった。発売されたばかりの著書『ポール・マッカートニー 告白』の会話の中で説明されているように、ポール・マッカートニーが「正しいキャリアに向かってよろめいた」と気付いたのはこの当時だったという。
ポール・マッカートニーから祝福を受け、イギリスではホッダー・アンド・ストートン社から5月5日に出版されたこの本は、ザ・ビートルズ、ウイングス、そしてポール・マッカートニーのソロの素晴らしい部分がつまった正真正銘の宝の山のような書籍で、彼が世界中から崇拝を集める最高峰のソングライターとして活動してきた50年間を様々な視点から描写している。詳細に読みこんだ後、我々はポール・デュ・ノイヤーから、彼だけが知っているポール・マッカートニーに関する5つのことを聞き出してみた。6月10日に新たなベスト・アルバム『ピュア・マッカートニー』がリリースされた今、彼だけが知っているポール・マッカートニーを語ってもらった。
1.彼は曲の作り方が分かっていない
「ポール・マッカートニーと初めて対面したのは、『NME』の仕事でバックステージで会った時だった。彼は曲作り以外のことなら、なんでも話してくれた。曲をどうやって作るか説明できなかったからさ。彼にとって、まったくの謎だったんだ。『それに関しては全部がマジックだ……』と彼は言っていた。『どこに辿り着くかまったく分からないんだ。だって全部自分で作っているからね。曲作りについて理解して分析している人もいる。俺には分かったためしがないよ。ちょっとしたアイデアがあって、そこにコードを添えたら、壮大に膨らんでいくんだ。手元に飛行機のエチケット袋しか書き取るものがないときもある。それがホテルのメモ帳やトイレットペーパーだったりもする。曲を作る時は、せまい隅っこや戸棚、トイレなど誰も来ない所へ身を隠す。曲作りは毎回が冒険だね。上手くいくかどうかに関しては、ちょっとした謎なんだ」
2.彼は人間観察が好きだ
「リヴァプールでの学生生活の頃から、彼はバスの2階から人を見おろすのが好きだった。そして今でも公共交通機関を使うそうだよ。『ちょっとのぞき趣味があるんだよ』と彼は言っていた。人間観察によって、ポール・マッカートニーは“Penny Lane”や“Eleanor Rigby”、“Lovely Rita”といった曲を書くことができたんだ。ステージ上では、彼はファンにあまりに関心を持ちすぎて曲目を忘れてしまうんだ。そして、ロンドンのオフィスにある大きな窓からは、ランチ時に旅行客や労働者でいつもごった返す広場を眺めているんだ。こう指摘しておこう。もしあなたがポール・マッカートニーに会ったことがなくても、彼はもしかするとあなたを見たことがあるかもしれない……」
3. 彼はたったの74歳だが、音楽的には103歳だ
「ポール・マッカートニーが生まれた時、1942年のことだが、彼の父親は40歳間近で、数十年の経験を持つバンド・リーダーだった。エルヴィス・プレスリーとロックンロールを聴くずっと前に、ポール・マッカートニーは古い時代のイギリスのミュージック・ホールで奏でられた音楽を父親の膝の上で学び、おば達を楽しませるために家のピアノで練習していた。彼がジョン・レノン(彼は音楽狂いの母親からウクレレのコードを学んでいた)に出会うまでに、2人の少年は20世紀初めまで遡る大衆音楽の基礎を身につけていたんだよ。ロックンロールの登場はスリリングだった。だが、このように高度な音楽を習得していた若い2人にとって、すべてスリーコードのスキッフルで出来た音楽はチョロいものだったわけさ」
4. 彼は1955年以来のすべてのヒット・シングルを聴いている
「10代の頃、ポール・マッカートニーは新たに発明されたヒット・パレードというものに取り憑かれていた。初期のザ・ビートルズは、その時ヒット・チャートに入っているどんな曲でも演奏するようにしていて、リバプールやハンブルグでファンを喜ばせていた。ポップ・スターとして、ポール・マッカートニーは負けず嫌いの極みで、自分のライヴァルたちから決して目を離さなかったんだ。これはずっと変わらない彼の習慣だよ。中年の後半にさしかかっても、エミネムやトーン・ロックについてチェックしていた。60代でジェイ・Zやリンキン・パークとライヴで共演した。そして70代の今、カニエ・ウェストやリアーナとレコードを作っている。彼の新しい音楽に対する情熱は本物に見えるが、その深い奥の部分で、彼は絶対に取り残されることを嫌う、ショウビズ界の小競り合い好きなんだよ」
5. 彼の最高傑作はみんなが聴いてない作品かもしれない
「ポール・マッカートニーは、主にロックの分野でレコードをリリースする他に、バレエ音楽からアンビエント・エレクトロニカまで、あらゆるジャンルに挑戦してきた。彼の実験的な作品のいくつかは、プロデューサーのマーティン・グローヴァー(別名キリング・ジョークのユース)と一緒に、半ば非公開のザ・ファイアーマンという名前で作られたものだ。このユニットの音楽は相当に抽象的だ。トライバル・テクノのアルバム『ストロベリーズ・オーシャンズ・シップス・フォレスト』は、もしポール・マッカートニーの実名で売ったらファンが暴動を起こしたかもしれない。だが、彼らの2006年のアルバム『エレクトリック・アーギュメンツ』はポール・マッカートニーならではの巧みな曲作りとなっている――エッジの効いたラグタイムのリズムでありながら、巨大なスタジアムでも揺り動かすに十分な美しい旋律だ。ポールが“Hey Jude”や“Yesterday”を歌うのを聴きに群がるたくさんのファンが、この知られざる美しい音楽を聴くことがないかもしれないというのは、考えてみればおかしなことだ」
リリース詳細
ポール・マッカートニー
『ピュア・マッカートニー~オール・タイム・ベスト』
通常盤2SHM-CD:UCCO-3062/3 3,780円 (税込)
デラックス・エディション 4SHM-CD:UCCO-8003/6 7,560円 (税込)
2016年6月10日発売
通常盤 (全39曲収録) UCCO-3062/3
Disc 1
01. メイビー・アイム・アメイズド*
02. 故郷のこころ*
03. ジェット*
04. やさしい気持*
05. あの娘におせっかい*
06. ディア・ボーイ*
07. 心のラヴ・ソング*
08. ザ・ソング・ウィ・ワー・シンギング**
09. アンクル・アルバート~ハルセイ提督*
10. アナザー・デイ*
11. シング・ザ・チェンジズ
12. ジェニー・レン
13. セイヴ・アス
14. ミセス・ヴァンデビルト*
15. 夢の旅人**
16. 幸せのノック*
17. レット・ミー・ロール・イット*
18. 1985年*
19. エボニー・アンド・アイヴォリー*
Disc 2
01. バンド・オン・ザ・ラン*
02. アロウ・スルー・ミー**
03. マイ・ラヴ**
04. 007 死ぬのは奴らだ**
05. トゥー・マッチ・レイン
06. グッドナイト・トゥナイト**
07. セイ・セイ・セイ(2015リミックス)[ラジオ・エディット]*
08. マイ・ヴァレンタイン
09. ザ・ワールド・トゥナイト**
10. パイプス・オブ・ピース*
11. ダンス・トゥナイト
12. ヒア・トゥデイ*
13. ワンダーラスト*
14. グレイト・デイ**
15. カミング・アップ*
16. ひとりぼっちのロンリー・ナイト**
17. オンリー・ママ・ノウズ
18. しあわせの予感(DJエディット)**
19. ホープ・フォー・ザ・フューチャー
20. ジャンク*
*アーカイヴ・コレクション再発時のリマスター採用 **2016年最新リマスタリング
デラックス・エディション (全67曲収録) 44ページ豪華ハードカヴァー・ブック仕様 UCCO-8003/6
Disc 1
01. メイビー・アイム・アメイズド*
02. 故郷のこころ*
03. ジェット*
04. やさしい気持*
05. あの娘におせっかい*
06. ディア・ボーイ*
07. 心のラヴ・ソング*
08. ザ・ソング・ウィ・ワー・シンギング**
09. アンクル・アルバート~ハルセイ提督*
10. アーリー・デイズ
11. ビッグ・バーン・ベッド**
12. アナザー・デイ*
13. フレイミング・パイ**
14. ジェニー・レン
15. トゥー・メニー・ピープル*
16. レット・ミー・ロール・イット*
17. NEW
Disc 2
01. 007 死ぬのは奴らだ**
02. イングリッシュ・ティー
03. 夢の旅人**
04. セイヴ・アス
05. マイ・ラヴ**
06. ビップ・バップ**
07. 幸せのノック*
08. 1985年*
09. カリコ・スカイズ**
10. ハイ・ハイ・ハイ**
11. ウォーターフォールズ*
12. バンド・オン・ザ・ラン*
13. アプリシエイト
14. シング・ザ・チェンジズ
15. アロウ・スルー・ミー**
16. エヴリナイト*
17. ジュニアズ・ファーム*
18. ミセス・ヴァンデビルト*
Disc 3
01. セイ・セイ・セイ(2015リミックス)[ラジオ・エディット]
02. マイ・ヴァレンタイン
03. パイプス・オブ・ピース*
04. ザ・ワールド・トゥナイト**
05. スーベニア**
06. ダンス・トゥナイト
07. エボニー・アンド・アイヴォリー*
08. ファイン・ライン
09. ヒア・トゥデイ*
10. プレス**
11. ワンダーラスト*
12. ワインダーク・オープン・シー**
13. ビューティフル・ナイト**
14. ガールフレンド**
15. クイーニー・アイ
16. ウィ・オール・スタンド・トゥゲザー**
Disc 4
01. カミング・アップ*
02. トゥー・マッチ・レイン
03. グッド・タイムズ・カミング~フィール・ザ・サン**
04. グッドナイト・トゥナイト**
05. ベイビーズ・リクエスト**
06. しあわせの予感(DJエディット)**
07. リトル・ウィロー**
08. オンリー・ママ・ノウズ
09. ピンチをぶっ飛ばせ**
10. バック・シート*
11. ひとりぼっちのロンリー・ナイト**
12. グレイト・デイ**
13. ヴィーナス・アンド・マース~ロック・ショウ**
14. テンポラリー・セクレタリー*
15. ホープ・フォー・ザ・フューチャー
16. ジャンク*
*アーカイヴ・コレクション再発時のリマスター採用 **2016年最新リマスタリング
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