ニック・ケイヴといえば、次のようにレッド・ホット・チリ・ペッパーズをこき下ろしたことで知られている。「俺は『このゴミは一体なんだ?』なんてステレオタイプな発言をする奴じゃない。そして、その答えはいつもレッド・ホット・チリ・ペッパーズだ」。通算11作目となるスタジオ・アルバムが今月リリースされるのを受けて、意見を真っ向から異とするライター2人が挙げた、彼らが地球上で最も偉大なバンドだと思う理由と、最低のバンドだと思う理由を御紹介しよう。
レッド・ホット・チリ・ペッパーズを愛する5つの理由
1. レッチリはすべてセックスからできている
まあ、少なくとも96.4%はそうだろう。彼らはカリフォルニケイションの住人なのだ。彼らは、少なくとも片っぽのスポーツソックスを常に身に付けねばならないと公序良俗を定めた法律を定期的に破っている。そして、曲ではラッセル・ブランドをまるで冴えないマクラビン(映画『スーパーバッド 童貞ウォーズ』に出演)のように変えてしまう。ママへの奉仕の言及が多く、“ゼファー”の暗示が続くので、きっとポルノサイト「Babestation」から文章をそのまま持ってきて歌詞にしたんじゃないかとあなたは思うかもしれない。化粧を落としたジーン・シモンズのように彼らは恥知らずの性豪で、それが彼らのライヴを野性的で、根源的に赤裸々なものにしている。これは、すべての欲情した輩たち――それは君や君の友達だってことに向き合おう――に関連してくる体験だ。結婚を前提としたパートナーを5回以下のデートで連れていってしまってはいけない。そんなことをすれば、彼女は逃げ出すだろう。
2. レッチリは世界をよりよい場所にしている
オリンピック規模のベッド事業を展開している裏で、レッド・ホット・チリ・ペッパーズは善という点において社会的・政治的な力となり続けている。例えば、『カリフォルニケイション』はハリウッドに蔓延する、完璧さに対する偽りのファンタジーについて、デイヴィッド・ドゥカヴニー出演のネットフリックスの番組なんかを観てくつろいでいるのよりも、より多くのことを教えてくれる。ロサンゼルスの大半の人々はネットフリックスを観ているわけだが、レッチリはそうした問題提起の血が活動家の支持へと繋がっているのだ。彼らはバラク・オバマやバーニー・サンダースの支援団体の筆頭をつとめ、アメリカの銃規制に賛成し、ネイティヴ・アメリカンの問題に声を挙げ、癌の原因追究やハリケーン・カトリーナの被害者のためにチャリティ・ライヴを行う。そう、その性と善の飛距離は、出会い系アプリ「Tinder」で部屋を飛び出して投票に行くようなものだが、でも、我々はだからこそ彼らに敬意を表するのだ。
3. レッチリはいまだにヒットを叩き出している
オアシスと同じく、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのアルバムにはメガ・ヒットが少なくとも1曲は収録されている。“By The Way”、“Dani California”、“The Zephyr Song”など、結成から30年近くを迎えた「難しい」時でも、そのシングルのクオリティは彼らの性的衝動と同様に落ちることはなかった。ニュー・アルバム『ザ・ゲッタウェイ』からのファースト・シングルで、シックのような楽曲である“Dark Necessities”ですらレッド・ホット・チリ・ペッパーズの名曲の香りがあり、そのディスコ風のグルーヴがミドルエイトでビートルズ風になることから、彼ら流の“A Day In The Life”を目指していたと考えるかもしれない。いや、むしろ“A Day In Your Wife(お前の奥さんの中にいたある日)” なんだろうか。
4. レッチリは自分たちの限界を試している
1カ月に及ぶようなレッド・ホット・チリ・ペッパーズによるフェスティバルでのジャム・セッションでもずっと座っていることができて、緩やかな安楽死を夢見ているような人であれば、このバンドがファンク・ロックのマンネリにハマっていると考えるかもしれない。しかし、そんなことはないのだ。新作『ザ・ゲッタウェイ』でもフリーがスノーボード中に腕を骨折したことから、8ヶ月に及んだデンジャー・マウスを迎えた苦行を乗りきっている。「俺たちが今回の作業で考えていたのは」とアンソニー・キーディスは語っている。「彼を信頼して俺たちの古い発想や古いやり方を消し去って、『もしこれが上手くいったら、俺たちは崖に身を投げて結果を見るまでだ』ということだったんだ」。バンジー・ファンクだ。誰かやりたい人はいる?
5. レッチリにはあなたの気持ちが分かる
愛する人を失った? 『ワン・ホット・ミニット』収録曲の半分は、カート・コバーンやリバー・フェニックスのような人々に捧げられている。ドラッグやアルコールで自分を蝕んでいる? 残りの半分を聴いたらいい。愛やリハビリ、絶望の深みにいる時も、性交のエクスタシーで昂っている時も、レッド・ホット・チリ・ペッパーズは傍にいて、それを描いてみせる。彼らは概して、引火性のライムによる対句であなたの人生全体を歌っている。さあ、聴いてくれ。
<ここまでマーク・バーモント>
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