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『トレインスポッティング2』への期待が、『ウォーキング・デッド』やレスター・シティFCをめぐる熱量と同じくらいだという事実は、ダニー・ボイル主演の1996年のオリジナルがいかに決定的な作品だったかを証明している。ドラッグ・カルチャーの大胆な描写、ブリットポップの名作と言えるサウンドトラック、それらすべてが1990年代のイギリス映画を定義づけ、若返らせた。『トレインスポッティング』以前は、冴えない時代劇か、さすらいのダンディ男か、リチャード・カーチスのラブコメだったのが、これ以降、ドラッグを打ち、勝ち取れなかった一切合切を奪い取ろうとするわがままな若者たちに席巻されたのだ。『トレインスポッティング』の影響力を讃え、この映画なくしては恐らく存在し得なかった作品をここで紹介したい。

『ツイン・タウン』(1997年)


ドラッグ漬けのおバカな2人が、とある埃っぽい町の場末を荒らし回って、車を盗んだり、最低なチンピラたちに巻き込まれたりして遂に悲劇が起こる。どこかで聞いたような話だって? 本作品は、ケビン・アレンのブラック・コメディ犯罪もので、リス・エヴァンスのデビュー作となる。早い時期に『トレインスポッティング』の続編を狙った作品だが、それと認めるにはあのトイレにぶっ込むシーン的なものが足りないだけ。


『24アワー・パーティー・ピープル』(2002年)


ファクトリー・レコードの社長であったトニー・ウィルソンの伝記映画。マイケル・ウィンターボトムが監督を務め、スティーヴ・クーガンがトニー・ウィルソンを演じている。野放しの快楽主義、ドラッグ地獄、怪しげな取引、クラクラするようなナイトクラブのシーンなど、『トレインスポッティング』基準を優に満たした作品だ。


『アシッド・ハウス』(1998年)


『トレインスポッティング』のカルト的社会現象なしには、このアーヴィン・ウェルシュ原作の3つの短編がどうでもいい感じで絡み合う映画は作られなかっただろう。隣人を暴行したり、負け犬がハエに変身したり、罵詈雑言を叫びまくる――リアルじゃない――赤ん坊が出てきたりする、ザラザラした気持ちの悪い物語が展開する。


『ヒューマン・トラフィック』(1999年)


『トレインスポッティング』は映画産業に1つの明快なメッセージを送りつけた。それは「人々は本当に若者たちがドラッグをやるのを長時間見たがっている」ということだった。かくして『ヒューマン・トラフィック』が作られた。この作品は、基本的にはおバカな100分間におよぶハイ状態への手引きだ。鎮痛剤とあの「イースト・エンドのオリヴァー」、ムッシュー・ダニエル・“マジギレ”・ダイアーのビッグ・スクリーンへのデビューが見られる。


『家族のかたち』(2002年)


基本的にノッティンガムに現れたベグビーといって差し支えない。垢抜けない地方のドラッグ文化をベースにしたブラック・コメディを連想させる俳優たち――ロバート・カーライル、リス・エヴァンス、シャーリー・ヘンダーソン――の緩やかなアンサンブルが織りなすねじれた三角関係に、裏社会の犯罪事件や覆面強盗などが絡んでいく。


『フットボール・ファクトリー』(2004年)


『ヒューマン・トラフィック』に続いて、2004年のサッカーのフーリガンものからダニー・ダイアの作品をもう1つ。ここでダニー・ダイアが演じるのはコカイン中毒で大酒飲みの女たらし、そしてプレミアリーグのケンカの常連ながらそこから脱出することを夢見ている持て余し者。ヘロインをやる代わりに人の顔を殴っているが、要するにロンドン版『トレインスポッティング』だ。


『アウェイデイズ』(2009年)


ヘロインを再登場させると『アウェイデイズ』が完成する。『トレインスポッティング』的な音楽に溢れたパット・ホールデン監督のストレートなフーリガン映画だ。サウンドトラックの大半は、ザ・ジャム、マガジン、ジョイ・ディヴィジョン、ワイヤー、エルヴィス・コステロといったニュー・ウェイヴのアーティストたちが占めている。ニッキー・ベル演じる主人公はサッカーのフーリガン集団「ザ・パック」のドラッグやセックス、暴力の世界に引きずり込まれていく。おそらく舞台裏では「お前はダニー・ダイアじゃない! お前はダニー・ダイアじゃない!ナ・ナ・ナ・ナ……」という調べが流れていたことだろう。


『フル・モンティ』(1997年)


『トレインスポッティング』に登場するキャラクターの中でも、口ひげのサイコ・ベグビー役は、すぐさまロマンチックな主演俳優へと躍進を遂げるには最も遠い役柄と思われた。しかし、この役でロバート・カーライルは一躍有名になり、翌年に公開された鉄鋼労働者がストリップをする大ヒット作『フル・モンティ』の主役を射止め、絶賛されることとなったのである。さて、“ペニススポッティング”に興味のある方は?


『ザ・ビーチ』(2000年)


『トレインスポッティング』によってダニー・ボイル監督もまた非常に大きなプロジェクトを得た。『トレインスポッティング』の成功がなければ、レオナルド・ディカプリオをタイへ連れ出し、アレックス・ガーランドのカルトな人気を誇る小説『ビーチ』を原作とした映画に主演させるなどということは考えられなかっただろう。のみならず、レオがビデオ・ゲームの中に住んでいるという幻覚を起こすシーンを撮影するということも。


『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(1998年)


ガイ・リッチーの映画監督としてのデビュー作は直接『トレインスポッティング』の影響を受けたものではなく、むしろそこからイギリス・ギャング映画の一分野を築く礎(いしずえ)となったといえる。しかし、コミカルなペテンや強盗、銃の撃ち合いやドタバタの暴力沙汰などが盛り込まれ、ひねりの利いた複雑に入り組んだプロットを持つ本作は、イギリスの下層階級を中心にすえた映画群が新たな脚光を浴びたことによって生まれた、見事なサクセスストーリーの一例であることに間違いはない。

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