先日、パンクの仕掛人マルコム・マクラーレンとヴィヴィアン・ウエストウッドの息子であるジョセフ(以下ジョー)・コーは、“反逆”の血筋が親から受け継がれていることを証明してみせている。パンクの誕生から40周年を祝う「パンク・ロンドン」のイベント、ギグ、映画上映、トーク、展示会などが開催されていることへの抗議として――ジョー・コーに言わせれば、イベントは女王が支持している――今年11月26日のザ・セックス・ピストルズの“Anarchy in The UK”リリース40周年の日に、総額500万ポンド(約8億円)相当のパンクに関する自身のコレクションを燃やす計画を発表したのだ。『NME』は詳しい情報を得るためロンドンの彼の元を訪ねた。
「パンク・ロンドン」の何が問題で、ご自分のコレクションを燃やすのですか?
「なぜ40年が25年や50年、あるいは10年よりも重要なのか、僕には分からないね。どうせ、ただの気まぐれな理由だろ、体制側のお墨付きのね。きっとひと握りの白髪を立てたジジイ共が、名前を聞いたこともないようなバンドを集めて、いろいろとイベントを開催したり、パブをハシゴしたりするんだろうね。もし、そうなるなら本当に悲しいよ。意味もないしね」
「人々は僕が燃やすものが何なのか、どんな意味があるのかよりも、それらの金銭的価値の方に興味があるわけでさ。僕の行為はKファウンデーションの伝統――ザ・KLFのジミー・コーティとビル・ドラモンドが(1994年に)100万ポンド(約1億6000万円)の現金を燃やした――を引き継ぐ行為であり、同時に1つの声明でもあるんだ。これらの品々は、それ自身には価値なんてないんだという声明なんだよ。僕はセディショナリーズ(マクラーレンとウエストウッドによるブティック)の衣料品など、僕の家族の財産であるものを大量に燃やすわけだけど、パンクの素晴らしいところは衣装なんて何もいらなかったというところ――安全ピンが1パッケージあれば、それで十分だったんだよ」
「今の時代、みんなにとってはもうほとんど(BBC番組の)『アンティークス・ロードショウ』の世界なんだよ。『あのボンデージ・パンツを取っておけばよかった。今なら高値で売れただろうに』という具合でね。そこに一体何の意味があるというんだよ? これがパンク・ロックなんて死に絶えたっていうのが妥当だと思う理由だね。そうでなければ、終いにはハードロック・カフェみたいな土産物ショップか何かになっちまうよ。ガラス・ケースの中に、バッキンガム宮殿をバックに安全ピンを鼻に刺した女王がプリントされた“God Save The Queen”のマグカップなんかを陳列して売るような店にね。1970年代にはパンク・ロッカーが嫌われていたことをみんな覚えていないんだ――彼らは一般大衆の一番の嫌われ者だったのに。僕も若い頃、パンク・ロッカー風の身なりだということで、大人の男たちから顔に唾を吐きかけられたわけでね。僕らが反体制だという理由で、イギリス国民戦線がやってきては家の窓を全部ぶち壊していったんだ。毎日、方々からの攻撃を受けなければならなかったんだよ」
あなたは女王が「パンク・ロンドン」のイベントを祝福していると言っていましたが?
「イギリス観光局が毎年、力を入れる分野について協議したり許可を出したりしてるんだよね。王室はその年の公式の観光アトラクションを決めるのに深く関わっているんだよ。女王が個人的に関わっているのかどうかは知らないけどね。僕が女王って言う場合、それは体制という意味を指してるんだ」
衣類の他には何を燃やすのですか?
「くだらないものがたくさんあるんだ。一体何を思って、こんなものを集めていたのか自分でも不思議だけどね。キングスロードのSEX(マクラーレンとウエストウッドのブティック)のドアノブや、“Anarchy in The UK”の1枚目のレコード、これはアセテート盤だね。そういった類のものだよ」
あなたにとって、どれも感傷的な価値はないのですか?
「あるよ、もちろん。それにしても……少し悲しいんだよね。なぜなら、これらを所有して、棚に並べてあるのを時おり見て、こう思う――このくだらないものを自分は一体どうする気なんだ?ってね。僕や家族にとって大事なものであったことは確かだけど、燃やしてしまうのが一番だと思ったんだ」
燃やすイベントは11月にカムデンで行われるそうですが、具体的な場所は?
「ステイブルズ・マーケットの人が場所を提供したいと申し出てくれたので、そこが一つの選択肢だね。それから、テムズ川の船着き場も検討してるよ」
この計画にはどんな反応が返ってきていますか?
「今のところ、『燃やさないで、売却してそのお金をください』とお願いしてくる手紙ばかり受け取ってる。人々には『駄々っ子みたいな行動だ』とか、『素晴らしい、最高だ、なんて良いアイデアだ』とか言われたりね。偏った意見ではあるけど、自分では本当に素晴らしいと思ってるんだ。何はともあれ、人々は今回のことについて意見をぶつけ合っている。それが本当に嬉しいんだよ。そうでなければ、全部が年寄りパンカーと数人の困惑した旅行者のためのイベントみたいになってしまうから。体制側が用意したパンク・アイデアに乗っかるなんて……パンク・ロックはそんなことを絶対にしないよ」
このアイデアを母親に話しましたか?
「うん、話したよ。彼女はいいアイデアだと思っていて――彼女はさらに何を加えられるか、何を意見できるかを考えてくれてるね。まだ話し合っているところだけど、時間はまだあるからね」
売却してそのお金を慈善活動に寄付して欲しいという意見についてはどう思っていますか?
「今回、僕が何をやったところで、何も変わりやしないよ。このクソみたいなパンクの記念イベントに費やすお金を全部ホームレスにやればいいんじゃないの? なんで女王やイギリス観光局はホームレスに金をやらないんだよ? 何に価値を置くか、我々が疑問を投げかける時なんだよ。ザ・KLFが100万ポンドを燃やした時に人々はまったく同じことを言ってたけど、的外れなんだよね。僕らが祈りを捧げるのはその祭壇ではない。僕らはお金を祭った祭壇なんかに祈りを捧げないんだよ」
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