10位 ピンクパンサレス『ファンシー・ザット』

Photo: Charlie Engham
1曲目の“Illegal”で「My name is Pink and I’m really glad to meet you(私の名前はピンクです。あなたにお会いできて嬉しいです)」と挨拶した瞬間から彼女は離陸する。『ファンシー・ザット』はポップ・ミュージックの過去と現在を軽快に行き来しながら、ピンクパンサレスの魅力を最も自信にあふれた形で抽出している。甘いビートに、鋭く選ばれたサンプリング、日記のような切なさ、すべてがキッチュさとキス
で封をされている。
09位 ヘイリー・ウィリアムス『エゴ・デス・アット・バチェロレッテ・パーティー』

Photo: Post Atlantic
カタルシスに満ちながらも深くパーソナルな『エゴ・デス・アット・バチェロレッテ・パーティー』は時折ヘイリー・ウィリアムスのセラピー・セッションを覗き見しているかのように展開していく。ついに数十年に及ぶレコード契約から解放されたパラモアのリーダーは万華鏡のようなサード・アルバムを完成させ、それはこれまででも最もクリエイティブで活力に満ちた作品となった。
08位 ターンスタイル『ネヴァー・イナフ』

Photo: Atiba Jefferson
文字通りシネマティックばヴィジョンによってターンスタイルは、形勢を一変させた『グロウ・オン』の勢いもそのままに通算4作目でハードコアをワイドスクリーンで展開してみせた。強烈なタイトル・トラックからスウィンギンなニュー・ウェーヴの“I Care”、トランペットを響かせるファンファーレとなった“Dreaming”まで、『ネヴァー・イナフ』では壮大な野望が余すところなく実現されている。
07位 ロザリア『ラックス』

Photo: Noah Dillon
今年10月に“Berghain”がリリースされた時にロザリアの次のアルバムが予測不可能な野心作になることは明らかだった。しかし、『ラックス』というアルバムはそんな言葉では足らないような作品になった。世界中の女性聖人からインスピレーションを受け、多言語の物語を紡ぐこのアルバムは大きな対象領域と美を兼ね備えている。
06位 オーケールー『チョーク・イナフ』

Photo: True Panther
オーケールーにとってブレイクスルーとなったデビュー・アルバムは、礼儀ではなく、そもそも気づかれないために、隣人を起こさないように気を遣っている人たちのための、水のようなクラウド・ポップだ。『チョーク・イナフ』を聴くことは、窓のない部屋に突然澄んだ空気が流れ込むような感覚に似ている。静寂の中でそれは爽やかでありながら、人の心をつかんで放さない。
05位 バッド・バニー『デビ・ティラル・マ・フォトス』

Photo: Rimas Entertainment
「もっと写真を撮っておけばよかった」バッド・バニーの通算6作目のスタジオ・アルバムのタイトルはそんな後悔が込められたものとなった。プエルトリコ出身のスーパースターは『デビ・ティラル・マ・フォトス』ですべてのショットをものにしている。サルサ、ボンバ、プレナ、レゲトンなど、様々なラテンのスタイルやジャンルを軽やかに操り、壮大なストーリーテリングを盛り込むことで、息を呑むような一大傑作となっている。“Baile Inolvidable”では長年の失恋について歌い、ディアスポラのアンセム“DtMF”では優しく後悔を振り返り、“Bokete”や“Turista”では元恋人への意地悪な皮肉をぶつけ、“‘Lo Que Le Pasó a Hawaii”では鋭く重い政治的考察を歌い上げる。絶頂期にあるアーティストによる傑作と言えるだろう。
04位 CMAT『ユーロ・カントリー』

Photo: AWAL Recordings
異性に受け入れられるために肉も切ったし、パンも焼いた彼女は“Take A Sexy Picture Of Me”で悪質なオンラインの悪口を世界的なブレイクのきっかけに変えた。サード・アルバム『ユーロ・カントリー』でCMATは世代を代表する才能としての地位を確立している。根深いアイルランドのトラウマを掘り上げながら、同じ50分間の中でジェイミー・オリヴァーについての資本主義的なメタファーをでっち上げてみせる。時に笑えて、辛辣で、怒りと誇りに満ちた『ユーロ・カントリー』はその複雑さと幅広さによってアーティストが自分らしくいられる空間を与えられると起こる魔法を如実に示している。もちろん、そのアーティストがシアラ・メアリー=アリス・トンプソンのように知的なソングライターであることが一役買っている。
03位 FKAツイッグス『ユーセクシュア』

Photo: Young
「『ユーセクシュア』とは状態である」とFKAツイッグスは超越的な通算3作目のアルバムのタイトル曲をリリースした際に宣言している。プラハのテクノ・クラブでの自身が変わるような体験から生まれた、「陶酔感(euphoria)」と「性的(sexual)」を組み合わせた造語だ。目を引くような弱い部分とケミカルな衝突による涅槃の瞬間といったエンドルフィンが駆け巡る数々の啓示を通して、FKAツイッグスは自身を再発見する。“Perfect Stranger”における匿名的な征服から、“Wanderlust”の闘志に満ちた決意まで、『ユーセクシュア』はダンスフロアの共同体の力を宣言する聖典のように展開していく。求められるのは彼女のいるその場に加わることを自分に許すことだけだ。
02位 アディソン・レイ『アディソン』

Photo: Ethan James Green
アディソン・レイは特定のサウンドを参照するのではなく、色彩と漠然とした感情のムードボードから『アディソン』というアルバムを夢見るように形にしてみせた。この雰囲気をベースにしたアプローチから近年の記憶でもポップ・ミュージックにおける最高のデビュー作の一つが生まれることになった。そこでは享楽主義的な精神が求められる時代に愛、名声、金といったものが謎を伴う空想的な視点で描かれている。デジタル世代の『スター誕生』のような上昇気流に乗って、アディソン・レイはピンクがかったスポットライトの中に足を踏み入れ、奪い去ってみせる。“Times Like These”で彼女は「Let’s see how far I go(どこまで行けるか見てみよう)」と物憂げに問いかけている。アディソン・レイは長く実りある旅路を運命づけられているかのようだ。
01位 ギース『ゲッティング・キルド』

Photo: Partisan Records
「There’s a bomb in my car!(俺の車には爆弾がある!)」とキャメロン・ウィンターは叫んでいる。2025年に暮らす錯乱状態のパニック発作の世界へ、ようこそ。ギースの『ゲッティング・キルド』はその完璧なサウンドトラックだ。
ジャズ、ロック、ノイズが詩的な形で不条理に爆発する、このアルバムは誰が命じたものなのだろう。そこではレディオヘッド、ブラック・ミディ、ザ・ストロークス、ヴァン・モリソン、ウクライナの合唱団のサンプリングが気取った雰囲気に押しつぶされることなく、衝突する。それは狂気の中にメロディーが、混沌の中に統制が宿る予測不可能で稀有なレコードとなっている。まさにスリル満点だが、キャメロン・ウィンターが“100 Horses”で歌うように、「戦時中こそ人々は皆、笑わなければならない」のだ。
『ゲッティング・キルド』は人々を、疲弊したノスタルジアから目覚めさせ、ニューヨーク、そしてギター・ミュージック全体が今なお生き生きと、自分たちの家のドアを蹴破ろうとしていることに気づかせるに十分なアルバムだ。少なくとも本作が間違いなく今年最高のアルバムだ。ワイルドなまま、進み続けてくれ。
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