05位 ビーバドゥービー(8/16 SONIC STAGE)

Photo: SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.
短めの髪にグレーのトップスを合わせて、足元はブーツという出で立ちだったのだが、まさに大人になった彼女の魅力を堪能できるステージだった。シーンに登場し始めた頃はまだ10代で、ベッドルームから飛び出してきたオルタナ女子という印象だったビーバドゥービーもいまや25歳ということで、特に中盤は落ち着いた印象の曲が多かったように思う。最新作からのリード・シングルである“Take a Bite”に、日本でミュージック・ビデオが撮影された“Ever Seen”、ジャズっぽい雰囲気の“Real Man”など、ロック全開の彼女を期待した人は少し拍子抜けしたかもしれない。けれど、作品を重ねることでより緻密になったそうしたソングライティングの解像度を反映させながら、初期のEP『スペース・カデット』の楽曲やデビュー・アルバムからの“Care”などを披露していった終盤は素晴らしく、なかでも“Beaches”は今の彼女とこれまでのビーバドゥービーらしさがシンプルなポップネスの上で同居していた。
04位 フローティング・ポインツ(8/15 SONIC STAGE)

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ノイズが広がる背景に特徴的なシンセサイザーのアルペジオが入ってくる形でステージは始まった。1曲目は最新アルバム『カスケード』からの“Birth4000”で、ステージには4枚のスクリーンが立てられている。それが会場のヴィジョンと連動する形でライヴ・アートが映し出されていく。アルペジオの音色は変幻自在にその表情を変えていき、力強いビートが入ってくると歓声が上がる。2曲目は“Del Oro”で、美しい電子音が様々なシーケンスと絡むことで曲が展開していき、ダンス・ミュージックの範疇に留まらないカタルシスを描き出していく。なので、サウンドとしての快楽性は非常に高いものの、場内のテンションがたまりにたまっていたところで登場したのが宇多田ヒカルだった。フローティング・ポインツことサム・シェパードは「みなさん、友達が出ます」と紹介して、“Somewhere Near Marseilles”が披露される。最後に披露されたライヴの定番“Afflecks Palace”まで、緊張と快楽が同居する至福の時間だった。
03位 フォール・アウト・ボーイ(8/16 MARINE STAGE)

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今回のツアーは時系列順にアルバムごとに楽曲を披露していくものとなっていて、パトリック・スタンプが楽屋裏で歌い出す形となった1曲目は必然的にデビュー作からの“Grand Theft Autumn/Where Is Your Boy”になる。次はセカンド『フロム・アンダー・ザ・コーク・ツリー』からで、キャリアを代表する“Sugar, We’re Goin Down”や“Dance, Dance”といった楽曲が早々に披露されてしまう。なので、少し不安になったのだけど、杞憂だった。“This Ain’t a Scene, It’s an Arms Race”も、“Thnks fr th Mmrs”も、“The Phoenix”も、“Uma Thurman”も、その時代時代ごとに多くの人の耳に届く楽曲を書いてきたこのバンドの真価を思い知らされる。アルバム・ジャケットにちなんでユニコーンが宙吊りになったり、熊がステージ上に登場する演出もありながら、サマーソニックに5回も出演してきた彼らのキャリアを振り返ることはフェスを振り返ることでもあり、ヘッドライナーらしい一緒に歴史を重ねてきた感慨に溢れるものだった。
02位 ザ・プロディジー(8/15 MOUNTAIN STAGE)

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証明しなければいけないものがあるアーティストのステージだった。赤くステージが照らされる中で始まった“Voodoo People”の一音目を聴いて、そう思った。90年代にヒットを飛ばした大御所アクトというような雰囲気はまったくない。キース・フリントが亡くなってもザ・プロディジーは続いていく。その理由を見せつけなければならない。2曲目の“Omen”で「Now the writing’s on the wall」のシンガロングが起こると、少なからず観客にもそれが伝わっているのを感じる。“Firestarter”では至る所からレーザーが飛ばされる展開もあり、演出面でもぬかりはない。マキシムもMCとして自分が担うべきものを分かっていて、ステージの最前線で観客を煽ってみせる。本編最後の“Breathe”も、アンコールで披露された“Smack My Bitch Up”も“Out Of Space”も勢いが落ちることはない。キース・フリントの存在を生き続けさせるためにもザ・プロディジーの今が一番ヤバくなければならない。そんな矜持を感じたステージだった。
01位 アリシア・キーズ(8/17 MARINE STAGE)

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冒頭の「I keep on fallin’ in」のシャウトを聴いただけで、この声を久しぶりに聴くことのできる喜びが湧き上がる。アリシア・キーズはじっくりとイントロのフレーズを歌い上げ、ステージに照明が入っていくと横向きでピアノに向かうアリシア・キーズの姿が浮かび上がってくる。このオープニングだけで圧倒的だったが、その後も夢のような時間だった。“You Don’t Know My Name”、“Try Sleeping With a Broken Heart”といった今世紀のスタンダードになった楽曲が鉄壁のバンド陣とコーラス陣と共に披露され、大きなハイライトになったのは“If I Ain’t Got You”だろう。多様なラインナップを誇った今年のサマーソニックだが、名曲の前にスタジアムの観客が一つになっていく。大きな話題を呼ぶことになった“Bad B*tch 美学”のパフォーマンスもありつつ、“Empire State of Mind”やラストを飾った“No One”を聴きながら感じていたのはいろんなものを包み込むことのできるアリシア・キーズという人の器だった。
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