10位 エズラ・コレクティヴ(7/25 FIELD OF HEAVEN)

Photo: Hachi Ooshio
2022年発表の『ホェア・アイム・メント・トゥ・ビー』でマーキュリー・プライズを受賞したエズラ・コレクティヴをやっと観ることができたのだけど、ミュージシャンとしてはもちろんのこと、人としていい印象を持った方は多かったのではないだろうか。エゴがない。全員、卓越した音楽家なのだけど、それは技巧や審美に向かうことなく、真っ直ぐ観客へと届けられていく。「幼い頃に楽器を始めると、夢を持つようになる。その夢の一つがフジロックだった。ロンドンの人はみんなフジロックを知っている」という日本人には嬉しすぎる言葉もあったが、この言葉にはエズラ・コレクティヴが地元のユース・クラブで出会った仲間によって結成されていること、人種を超えた音楽的共同体であること、そうした要素が詰まっている。観られた時間は長くなかったのだけれど、メンバーがステージを降りて、観客の目の前で演奏するパフォーマンスも含めて、気持ちの良さを感じさせてくれるステージだった。
09位 ザ・ハイヴス(7/27 RED MARQUEE)

Photo: Ruriko Inagaki
楽器陣の4人が後ろからの照明によるシルエット姿で止まっていると、そこにハンドクラップを煽る形で入ってくるのはハウリン・ペレ・アームクヴィストその人だ。一瞬で観客を掌握するフロントマンシップたるや素晴らしい。オープニングの“Bogus Operandi”に続いて、2曲目では早くも“Main Offender”が演奏される。ステージの後ろにはロックンロール・アニマルへのはち切れんばかりの思いが詰まったかのように、「HIVES」の5文字が一つずつ描かれた5つのバルーンが見える。「19年ぶりだよ」と信じられないというようにペレは語り、“Walk Idiot Walk”に続く“Paint a Picture”ではメンバーの動きが止まり、十分な歓声に達するまで煽ってみせる。19年前もやった曲と紹介されたのは“Hate to Say I Told You So”で、その間には11年間アルバムを作らなかった時期もあったが、最後の“Come On!”と“Tick Tick Boom”まで、ロックンロールから一度もブレなかったバンドの特権と言えるステージだった。
08位 カトリエル&パコ・アモロソ(7/26 GREEN STAGE)

Photo: Masanori Naruse
話題の「タイニー・デスク・コンサート」の映像でもオープニングを飾っていた“Dumbai”からライヴは始まった。カトリエル・ゲレイロとウリセス・ゲリエーロの二人はマッチョを皮肉るかのようにモコモコに膨れ上がったスーツを着ている。“Baby Gangsta”と“Mi diosa”と続いていくが、その音楽性はラテン・ミュージックを土台としながらも、そこに現代のアーバン・ミュージックをかけ合わせたもので、中盤に差し掛かるところではその最新版と言える“Impostor”も披露される。しかし、全曲ヴィジョンに表示されていた歌詞の日本語訳にも顕著な通り、そこで伝統や音楽の機能性に回帰せず、あくまでカトリエルとパコ・アモロソの自我が貫かれているのが素晴らしかった。ライヴでそこに肉体性が加わると、プリンスあたりまでの系譜が頭をよぎる。後半は“Ola mina XD”や“Cono hielo”といったナンバーを交えながら、最新EPより“El día del amigo”も披露され、2025年のオルタナティヴを感じさせてくれたパフォーマンスだった。
07位 リトル・シムズ(7/27 GREEN STAGE)

Photo: Daiki Miura
サッカー日本代表のユニフォームを着て登場したリトル・シムズのステージは終始、フジロックに集まった日本のオーディエンスに対してオープンなものだった。しかし、そのライヴの幕開けを飾ったのは裏切りの曲“Thief”でもあった。最新作『ロータス』より“Flood”がそこに続く。この2曲だけでもラッパーとしてのスキルの高さは明らかだ。名作『サムタイムス・アイ・マイト・ビー・イントロヴァート』からの2曲が終わると、リトル・シムズはサングラスを外して、表情がより分かるようになる。“Venom”ではモッシュ・ピットを作るように求め、中盤でEP『ドロップ7』セクションをもうけた後は“Selfish”でシンガロングも巻き起こる。終盤は再び最新作『ロータス』より“Only”や“Lion”といった楽曲が夕刻に映える。そして、決定打と言える“Free”を経て、女性に捧げられた“Woman”、最後の“Gorilla”まで、自分の信念に従って常に今を生きているからこその強さと晴れやかさを感じさせてもらった。
06位 ヴァンパイア・ウィークエンド(7/27 GREEN STAGE)

Photo: Taio Konishi
まずは全員が白を基調とした衣装を着て、エズラ・クーニグを中心とする3人のメンバーだけがステージに現れる。これが今のヴァンパイア・ウィークエンドを表しているかもしれない。何の色もいらず、サポート・メンバーがいなくても、ギミックなしでライヴを始めることができる。“Mansard Roof”や“Holiday”といったキャリアを彩る名曲がさらりと演奏された後に、最新作からの“Ice Cream Piano”からサポート・メンバーが入ってきて、“Classical”や“Connect”といった同じく最新作の曲が演奏されていく。そこからは“Unbelievers”や“This Time”といったアンセムがライヴに起伏を生み出していき、彼らのステージでは定番の“New Dorp. New York”を経て、“Diane Young”、“A-Punk”、“Oxford Comma”という三連発でピークを描いていくのだけど、バンドとしてのコンセプト、スキル、知性、築き上げたステータスが完成しきっているからこそ、早くも次の季節を期待してしまう自分がいたのも事実だった。
Copyright © 2025 NME Networks Media Limited. NME is a registered trademark of NME Networks Media Limited being used under licence.
関連タグ



