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NME Japanでは今年のサマーソニック幕張会場&ソニックマニアでベスト・アクトの1~20位を選んでみました。とはいっても、多くのアーティストが出演するサマーソニック&ソニックマニアです。すべてのアーティストを観ることはできません。なので、観られた範囲の中で、あくまで独断で、編集部で観たいと思ったアーティストのなかから、議論を重ねて、このランキングを作成してみました。みなさんのベスト・アクトとぜひ較べてみてください。

20位 グレタ・ヴァン・フリート(8/18 MARINE STAGE)

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爆音でアートなロックンロールを炸裂させていたイヴ・トゥモアから駆けつけると、マリン・スタジアムには最新作『スターキャッチャー』からの“The Falling Sky”が鳴り響いている。2019年1月の初来日公演以来、約5年半ぶりの来日となったグレタ・ヴァン・フリートだが、その間に変わったこともあった。セカンドとサードというアルバム2枚分のキャリアを重ね、フロントマンのジョシュ・キスカはLGBTQ+のコミュニティであることを公表した。しかし、変わらないのはそのサウンドだろう。初期の楽曲“Safari Song”はもちろんだが、最新作の“Meeting the Master”でも荒唐無稽と評されてもおかしくない壮大なクラシック・ロックを聴かせてくれる。世間ではソーシャル・メディアを意識して3分前後の曲が多くなっているにもかかわらず、そんな風潮はどこ吹く風、50分8曲あまりというセットリストは灼熱のスタジアムという環境もあって、時間軸のまったく違う世界に紛れ込んだような感覚に包まれることとなった。

19位 スティーヴン・サンチェス(8/17 MOUTAIN STAGE)

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古き良きポップ・ミュージックを2020年代に蘇らせる魔法の使い手にして、エルトン・ジョンの寵愛を受ける正統派ソングライターということで、かなり期待を寄せていたのだが、この日は少し合わなかったのかもしれない。昨年リリースのデビュー・アルバム『エンジェル・フェイス』に収録の“Evangeline”からライヴは始まったのだが、この日はベース、ドラムというリズム隊を前面に押し出した格好で、「ワタシはスティーヴン・サンチェスです」という日本語のMCを挟んで、“Only Girl”、“Emotional Vacation”、“The Other Side”と続いていくが、サウンドの傾向は変わらない。凛々しいスティーヴン・サンチェスのリッケンバッカー姿には心を掴まれつつも、“Oh, Pretty Woman”のカヴァーを挟んで、“Howling at Wolves”といったアップテンポの曲ではやはりロック・サウンドの印象が強くなる。けれど、さすがはヒット曲“Until I Found You”は素晴らしいサウンドで、もう一度観てみたいと思わずにはいられなかった。

18位 レイヴェイ(8/17 SONIC STAGE)

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マディソン・ビアーのあまりに長い手足を瞼に焼き付けつつ向かったのがSONIC STAGEのレイヴェイだった。レーベルからの紹介文によれば「ジャズクラ界のニュースター」とも称される彼女だが、そんな肩書きよろしく、ドビュッシーの“Clair de Lune”によるイントロからステージに登場して“While You Were Sleeping”に入っていく。“Valentine”で展開されたウッドベースのソロで、メンバーのプレイヤビリティについては盤石過ぎることが早くも証明され、続く“Dreamer”ではそれがポップ・ミュージックとしての広がりも兼ね備えていることが白日の下となる。名曲“I Wish You Love”のカヴァーで様々な文脈を踏まえつつ、後半白眉だったのは今年リリースされた“Goddess”で、レイヴェイその人の魅力も存分に発揮されて、様々な境界がさらに広がっている今を一つ象徴するようなパフォーマンスだった。

17位 AJR(8/18 SONIC STAGE)

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アダムはシカゴで開催された民主党全国大会に気候問題の取り組みで出席のため不在ということで、実に多才さを発揮する彼ららしいが、ステージのほうもジャックとライアンの2人ながらAJRの魅力が全開で発揮されたものだった。最新作の“Maybe Man”から始まったステージはすぐに“Sober Up”へとなだれ込み、風通しのよいメロディーがステージを包んでいく。彼らの代名詞になった“I’ve Got No Strings”のリミックスを挟んで、嬉しかったのは18年前にニューヨークのストリートで活動を始めた時のことを振り返りながらのスマッシュ・マウスの“All Star”のカヴァーだった。素朴なルーツに立ち返りながら、ここからは鉄板の流れで、“World’s Smallest Violin”から“Burn the House Down”というそのキャリアを彩ってきた楽曲が披露され、最後は彼らの曲作りのプロセスをそのままステージで再現するような“Bang!”から“Weak”で、誰しもが楽しめるようなテーマパークの如きポップ・ワールドが広がっていた。

16位 アルカ(8/16 PACIFIC STAGE)

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ステージに着くと、早速アルカならではの世界が広がっている。ステージ上手側にはデジタル機材が設置されているが、そこには生け花かのように花があしらわれており、下手側にはブランコがもうけられている。中央にあるマイクスタンドも当然ながら色とりどりの花で飾り付けられている。上手からさらりと登場して、「コンニチハ、ワタシはアルカです」という挨拶から始まったのは“Destrudo”で、その後は強力なビートが続いていく。“Piel”と“Anoche”というアルバム『アルカ』からの荘厳な流れの後に披露されたのは“Prada”と“Rakata”で、故郷ベネズエラの熱量を反映したビートに歓声が起きる。そこからステージは後半へと入っていくのだが、真鍋大度とのビデオも記憶に新しい“Incendio”なども披露されるのだけど、何よりも印象に残っているのは、アルカその人のパーソナリティとセクシャリティが音楽をも凌駕していることで、最後PA卓まで降りてきて観客と触れ合う姿はそれを象徴していた。

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