NME Japanでは今年のフジロックフェスティバルでベスト・アクトの1〜20位を選んでみました。とはいっても、多くのアーティストが出演するフジロックです。すべてのアーティストを観ることはできません。なので、観られた範囲の中で、あくまで独断で、編集部で観たいと思ったアーティストのなかから、議論を重ねて、このランキングを作成してみました。みなさんのベスト・アクトとぜひ較べてみてください。
20位 アス(7/28 RED MARQUEE)
開演前、ステージ・バックのスクリーンには白地に円形の赤いロゴが配されたヴィジュアルが映し出されている。モチーフはもちろん日の丸だろう。はるばるフィンランドから極東の島国にいるロックンロール・ファンの心をつかもうとやってきた5人組がアスだ。今回のフジロックフェスティバルでは6度にも及ぶライヴを行ったが、RED MARQUEEのステージにバンドの紹介役として現れたのはフジロックの創始者である日高正博だった。「ファッキン・グレート・ロックンロール・バンド」という言葉を合図に始まったのは“Black Sheep”で、若さと勢いといなたさがないまぜになって聴衆の身体を動かしていく。続くのは“Citroen Blues”に季節外れの“Snowball Season”だが、いわゆる革新性だとか芸術性だとか、箱に入ったような目新しさはない。けれど、いつの時代もロックンロールの核心に触れようと新しい世代のバンドが現れる。その営みと連綿とした繋がりはやはり愛おしいと思わずにはいられない。
19位 ペギー・グー(7/26 WHITE STAGE)
ザ・キラーズと出演時間の多くが重なっていたため、観られたのは後半だけで、自分がステージに着いた時にはアハダドリーム&プリヤ・ラグー&スクリレックスによる“Taka”のリミックス音源がかけられている。コーチェラ・フェスティバルなどの海外フェスの映像を観た時にも感じていたのだけれど、実際に体験してみても、ペギー・グーのパフォーマンスはいわゆるダンスフロアならではの高揚感といったものとは少し違う。もっとファッション・ショーに近いものというか、選曲や間合いを通して言葉を介さずにコミュニケーションを交わしていくもので、それは彼女の出自とも関係があるのかもしれない。最後にやるだろうと勝手に思っていた、彼女のキャリアを切り拓いたキラーチューン“(It Goes Like) Nanana”が聴けず、代わりに最後にアンコール風にプレイされたのが“Starry Night”だったことも含め、無表情のままクールに翻弄されるようなコミュニケーションが印象的だった。
18位 ゴースト・ノート(7/26 FIELD OF HEAVEN)
キング・クルールことアーチー・マーシャルによるライヴならではのブルース感に後ろ髪を引かれながら向かったのがゴースト・ノートのステージだった。着いた瞬間から音像でメンバーのプレイヤビリティのすごさは存分に伝わってくる。しかし、それにとどまらない。コール&レスポンスあり、メンバー紹介に伴ったインプロヴィゼーションあり、曲はあくまで容れ物であって、ライヴではその場限りの体験へと姿を変える。スナーキー・パピーのロバート・“スパット”・シアライトとネイト・ワースを中心としたユニットということだが、目を惹かれたのはキーボーディストのドミニク・ザヴィエル・タプリンで、プリンスやTOTOとも共演経験がある彼が牽引して、楽曲の骨格を作っていく。最後はホーン隊が前に出るファンク全開の展開で、このグループのサービス精神というものが否が応にも滲み出る。パフォーマンスを通して徹底されていたオープンなスタンスが気持ちよかった。
17位 キム・ゴードン(7/28 WHITE STAGE)
まあ、その佇まいからして一発で目を奪われてしまう。今年のフジロックフェスティバルも猛暑の影響に漏れず、例年と較べても気温は高めだったのだが、キム・ゴードンは長袖のドレッシーな黒のシャツ姿だ。自然と「姐さん」という言葉が口をついて出てくる。「こんにちは、フジロック」という手短な挨拶から、ライヴは今年3月にリリースされたセカンド・ソロ・アルバム『ザ・コレクティヴ』と同じく“Bye Bye”で始まった。そのスタイルはアブストラクトなトラックに轟音と共にスポークン・ワードにも近いヴォーカルが乗るというものだが、サポート・メンバーを含めてバンドとして肉体化されているからだろうか、自然にすんなりと身体に入ってくる。一旦、ライドを観に行って戻ってきても、その印象は変わらない。終盤はシングルとしてリリースされた“Grass Jeans”や“Bye Bye”がもう一度演奏されたが、バンドとしてのライヴの魅力に満ちている。やっぱりキム・ゴードンという人は永遠のバンド・ガールなのだと思う。
16位 ガール・イン・レッド(7/27 WHITE STAGE)
ガール・イン・レッドのキャリアはインディ・アクトにとってある種のシンデレラ・ストーリーだった。サウンドクラウドから始まった彼女の歩みはそのソングライティングによって着実に支持者を増やしながら、プロダクションも洗練され、最新作ではコロムビアとの契約を勝ち取るまでになった。初来日を逃した身としては、そんな彼女がどんなライヴを見せてくれるか楽しみだったのだが、“Doing It Again Baby”から始まったライヴは一転ルーツに立ち返るもので、序盤から“Bad Idea!”や“Girls”といった初期の楽曲が披露されていく。中盤では“Body And Mind”や“Serotonin”といったファーストの曲も演奏されていくが、サウンドとしての力学はバンド・サウンドが前面に出たもので、それは“Too Much”といった最新作の曲でも変わらない。“Rue”ではマリー・ウルヴェンの掛け声でジャンプが広がり、最後はデビュー曲“i wanna be your girlfriend”だったが、初々しさが鮮烈に残るステージだった。
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